ジェニーハイ「イロモノではなく、普通に目立つために」さらなる魅力を込めた2ndアルバム
川谷絵音、中嶋イッキュウ、新垣隆とそれぞれのフィールドで活躍する音楽家と、お笑い芸人小籔千豊、くっきー!で結成された異色のバンド、ジェニーハイ。2017年にテレビ番組『BAZOOKA!!!』(BSスカパー!)から生まれ、番組なきあともリリースにライブにと精力的に活動している。こんな説明が不必要なほど、バンドとしての魅力が詰まった2ndアルバム『ジェニースター』が9月1日に発売された。9月25日にはぴあアリーナMM公演も控える彼らに、アルバム制作とライブへの本音について聞いた。
全員のやれることが増えた今作
──ジェニーハイのレコーディングはメンバーそれぞれの多忙なスケジュールの合間を縫って行われていると思うのですが、今回の制作はいかがでしたか?
川谷 制作の過程は前回からそんなに変わってないんですけど、でも1枚作ったことによって、それぞれの得意不得意もわかったので、前よりもスムーズに進んだというか。前まではなるべく一緒にレコーディングを組もうとしてスケジュールがグチャグチャになってたんですけど、それは最初からあきらめて、ひとりずつレコーディングすることにして、そのほうが精神的にも楽だったし、曲自体は前より難しいんですけど、みんなのレベルが上がって、やれることも増えたので、アルバムの全体像もちゃんと考えながら作れました。
──できあがったアルバムに対して、それぞれの感想を教えてください。
小籔 最初は「ルービックラブ」が一番好きだったんですけど、今は「バイトリーダー典子」が好きですね。難しい曲のほうが好きになる傾向があって、最初は嫌いなんですけど、何回も聴いて、叩けるようになると、めっちゃ愛着が湧いて好きになる。でも今はまた「夏嵐」がいいなと思ったり、そのときによって好きな順位が変わります。
くっきー! ベースに関しては、課長がV(※ゲスの極み乙女。でベースを担当する休日課長がくっきー!の練習をサポートするために撮っている運指の映像)を送ってくれるんですけど、最初のころは演奏してるだけだったのが、最近は曲の解説も送ってくれて、より感情を入れられるようになりました。
川谷 課長そのためにいいマイク買ってましたからね。
くっきー! ただマイクがようなったぶん、ちょっと引きの位置になって、手元が見えにくくて。
──本末転倒(笑)。演奏で言うと、スラップが目立ちます。
くっきー! 大変でしたね。食い下がるしかないというか。でもベースのことを女性だと思うと、いいタッチで叩けるんですよ。乳頭やと思って、バンッ!って。
小籔 痛なるやろ!
くっきー! って、課長が言うてたんで。「そういう気持ちで弾いてください」って。
川谷 そんなこといいマイクで言ってんの?(笑)
──真偽はさておき(笑)、新垣さんはいかがでしょうか?
新垣 「卓球モンキー」にはイッキュウさんの独白シーンがあって、そのバックにピアノを入れてるんですけど、自分は普段サイレント映画に音楽をつけたりしているので、そのニュアンスが生かせたというか。自分のフィールドがジェニーハイに生かせたし、ユーモアもあって、すごくお気に入りです。
──逆に、自分のフィールド外のラップに関してはどうでしたか?
新垣 そこを言われると黙ってしまうんですけど……今回準主役的な曲もありますので、ぜひ期待してくださいと言うしかないです。
──イッキュウさんはいかがでしょうか?
中嶋 今回は準備期間があまりなかったので、レコーディングのときは毎回帰りながら「全部出せたのかな?」と思ったりもしたけど、ミックスが終わったのを聴くと毎回感動して、それを自分が歌ってることがうれしかったです。前はもっと必死だったけど、曲により感情移入できるようになって、中でも一番思い出深いのは「華奢なリップ」ですね。
(フィーチャリングで参加している)ちゃんみなちゃんはすごくエネルギッシュなので、それに引っ張られて自分も元気になる感じがあって、MVを撮ったときも魅了されました。存在感があるし、パフォーマンスも素晴らしいし、会ってすぐファンになって、影響もされましたね。数珠買っちゃうっていうのもすっごいわかります。
音楽的で、なおかつ目立った楽曲を
──小籔さんからすると、もともと『BAZOOKA!!!』の「高校生RAP選手権」でちゃんみなさんと共演して、その後も交流が続いていたので、思い入れも強いだろうなと。
小籔 東京の娘みたいな女の子が何人かおるんですけど、ちゃんみなちゃんもそのひとりで、P(川谷)がちゃんみなちゃんのことをいいと言うのは、親戚の子が褒められてるような感じで、よかったなあって。『BAZOOKA!!!』のスタッフとは今もYouTubeで一緒に仕事をしてるんですけど、ジェニーハイ自体がもともと『BAZOOKA!!!』ではじまったバンドなので、スタッフもすごい喜んでくれて、いいストーリーというか。まさかあのとき審査員席から見ていた女の子と将来一緒に『Mステ』に出るとは思ってもなかったですからね。
──「華奢なリップ」に関しては、川谷さんも手応えがあったんじゃないかと。
川谷 ありました。一番最初に「片目で異常に恋してる」を出したときは、イロモノ的な注目のされ方だったと思うんですけど、だんだん普通のバンドとして認知されるようになると、その後が難しいというか、ちゃんと音楽的で、なおかつ目立ったことをしないといけない。で、アイナちゃんとやった「不便な可愛げ」に関しては、正直僕のほうでもっとできたと思ってて。
曲自体もアイナちゃんもめちゃくちゃよかったけど、見せ方的な戦略がもうちょっとあったかなと思ったんですよね。なので、今回は「片目~」のときくらい初動で注目されるような曲を出せたらと思って、実際満足いく曲ができたし、反応もよかったので、やっぱりちゃんと自分が満足すれば、反応もついてくるんだなって、そういう意味でもよかったと思います。
──では最後に、9月25日に行われる初のぴあアリーナMM単独公演に向けてひと言いただけますか?
中嶋 私はバンドというものをやり始めて15年くらい経つんですけど、自分のバンドでアリーナでワンマンをするのは初めてで、広さに負けないようにその場に立ちたいです。だいぶ遠いところまで届けないといけないと思うので、今までのマインドやとダメだと思うから、精神的にも鍛えたいと思います。
新垣 こういうことを言うとおかしいと思われるかもしれないですけど、ジェニーハイというバンドに対して、自分も一ファンみたいな感じになってるんです。ジェニーハイはすごく面白くて、いいバンドだなって、自分でやりながらそう思っているので、今回はなるべく譜面を飛ばしたりせず、ちゃんと演奏したいですね。
川谷 まだライブでやったことがない曲をいきなりアリーナでやらないといけないので、「練習しないと」ってことばっかり先立っちゃうんですけど、でもちゃんとしたリハーサルはあんまり入れないと思うので……。
──去年無観客ライブをやったときは5人で何回くらいリハーサルに入ったんですか?
中嶋 全員揃ったのは1回とかですね。
新垣 今回はさすがにスタジオ1回は無理なので、5~6回くらい合わせたいんですけど。
川谷 みんなの予定合うんですかね(笑)。
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