女子高生のラブレター、伊集院光に届く。『らじおと』出演で心の壁を壊してくれた言葉(奥森皐月)
自称“ラジオ変態”、奥森皐月。3歳のころから芸能活動を始めた、16歳の女優・タレントである。2020年9月、子供のころから親しんできたラジオと伊集院光への猛烈な愛をしたためたコラムをQJWebで公開すると、多くの反響を呼んだ。
記事は伊集院本人の目にも留まり、2021年1月6日(水)の『伊集院光とらじおと』(TBSラジオ)に出演することに。憧れの存在と邂逅した、その顛末を綴る。
「渡せなかったラブレター」だと思っていた
「口に出せば夢は叶う」とはよく言ったものだ。
QJWebで連載させていただくようになってから4カ月。最初の記事に綴った「いつか」の夢が、あっという間に叶ってしまった。
2020年9月、かねてからラジオが大好きで四六時中聴き漁っていた少女はあふれ出る愛を文字にした。中でも伊集院光さんの番組から強い影響を受け、数多のパーソナリティで最も好きな人が伊集院光さんであった。
記事の中に好きなところを書き連ねるその行為は、まるでラブレターを書くよう。小学生のころ、好きな子に手紙を書いて結局渡さなかったことを思い出す。ランドセルのポケットにずっと入れていたけれど、最終的には捨てちゃった記憶。この文章はまさか伊集院さんご本人には届かないのだから、と余すことなく想いを好き勝手書いた。
しかしながら私の目算は甘く、一週間も経たずに伊集院さんまで届いた。この手紙もポケットにしまったつもりだったけれど、穴が空いていたのかな。
さらには『JUNK 伊集院光 深夜の馬鹿力』(TBSラジオ)にて話題に上げていただける次第。この出来事をおかずに3カ月は白米だけで生活できたのだが、しばらく経ってから再びラジオ放送後のYouTube生配信反省会にて話してくださったので、とうとう白米すら要らなくなった。
ところが先月、事態は急変した。
TBSラジオで放送中の『伊集院光とらじおと』にゲスト出演させていただけるという連絡が届いた。それはつまり、伊集院さんにお会いできるということ。
どうしよう。興奮して当日までに大失態を晒さないだろうか。転んで全部の肋骨を骨折するとか、多額の脱税が明るみに出てしまうとか。身に覚えは一切ないのだけれど。
「奥森皐月と伊集院光と」をテーマに
この日からずっと、何をするにしても脳内で伊集院さんがチラついた。ソワソワはしていたものの、何も問題は起こらずに時間が過ぎる。遠足も修学旅行も『ラジフェス』(TBSラジオが主催していたイベント)の前日でさえ落ち着いていた私も、出演日の前日は落ち着かなかった。
何を着よう、髪型はどうするべきだろう、どんなメイクがいいだろう、ラッキーカラーは何色なのだろう、夜はパックをしておこう。デート前日の女性はこんなにもやることがあるのか、私にはわからない。
否、そもそもデートではない。あくまで、いちラジオ番組にゲストでお邪魔するだけなのだ。頭の中の私同士が激論を交わしているうちに当日を迎えた。
向かう道中、TBSラジオの電波に声が乗るのだと思うとうれしくて仕方がなかった。ラジオだけが友達だったころの私、元気にしているか? 私は今日TBSラジオに出て伊集院さんに会うんだぞ。と誇らしく思った。
ひとつだけ残念なのは、あのころの私が今の私とまったく変わらないことだろうか。
『伊集院光とらじおと』のゲストコーナーは、「伊集院光ととらじおと(ゲスト名)と○○と」というテーマに沿ってトークが進められる。そのときにハマっているものや、自分の好きなことが「〇〇と」に入るのだ。
「伊集院光とらじおと奥森皐月とラジオと」がいいのではないかと思ったが、スタッフさん曰くこれまでに「ラジオ」を選んだ方は何人かいたらしい。そこで私は思い切って「伊集院光とらじおと奥森皐月と伊集院光と」を提案してみた。すると、そのパターンは今までなかったとのこと。心の中でガッツポーズ。
伊集院さんの第一声は「どう?」
憧れのTBSラジオの中で自分の出番を黙々と待つ私は、奇妙なほどに緊張していなかった。私の前には歌手・女優の仁支川峰子さんがゲスト出演されており、そのトークを楽しく聴きながら笑えるくらいには通常運転。ただのリスナー。普段からどんなこともたいていは緊張しないのだが、まさかこの日も例外なく落ち着いていられるとは。逆にいざブースに入ったとたん、何もしゃべれなくなる可能性すら感じて不安を覚えた。
けれども、そこから一度も心情が変わることなくリスナー気分のままワクワクしてブースへ入る。わあ! ずっと見ていたスタジオだ! ドアだ! マイクだ!
その調子のまま伊集院光さんとアシスタントの安田美香さんを目の前にする。「すげえ! 本物だ」と言う素人さんを脳内で抹殺しご挨拶をする。そのときのおふたりの温かさで、なんの恐れもなく話し始めることができた。
夢に見ていた、モーツァルトの「フルート四重奏曲第1番:第1楽章」に乗せた経歴の紹介。「奥森皐月」ごときが優雅なこの音楽の上で紹介されることに違和感は覚えたが、兎にも角にもうれしかった。
開口一番、伊集院さんから放たれた「どう?」の2文字が、私の取り払い切れていない壁を貫いて崩壊してくれたように思えた。結局始まってからも緊張することはなく、ただただ楽しく椅子に座っているだけの感覚だった。ふと客観に戻るたび、伊集院さんと同じブースにいることの愉楽を噛み締める。
何より、ラジオの帝王と呼ばれるあの伊集院さんの前でラジオへの想いを語れたのは最上級に贅沢な時間だったと思う。ただの女子高生が伊集院さんに「これからのラジオについて」理想を語ることがあってよかろうか。でも、私のような若い世代が心の底からラジオが好きで、より多くの人に聴いてもらいたいと真剣に思っていることを伝えられたのは大きな功績なのかもしれない。
換気のために開いているドアのおかげで、外のスタッフさんの反応が聴こえて安心した。私が“ファッションラジオリスナー”も是認していることの意思表示をきちんとできたので、もう大満足だ。
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