おぎやはぎのいない『メガネびいき』に出た話(森本晋太郎)

2020.9.3
トンツカタン森本晋太郎とchelmico

文=森本晋太郎 編集=田島太陽


『JUNK おぎやはぎのメガネびいき』(TBSラジオ)で、前代未聞の緊急事態が起きた。

2020年8月27日(木)の放送。小木博明は療養中のため欠席し、トンツカタン森本晋太郎とchelmicoがゲスト出演することが発表されていた。しかし、矢作兼も体調不良により急遽お休みすることが当日に決定する。その結果、おぎやはぎの冠ラジオでありながら、おぎやはぎが不在のまま生放送が行われた。

学生時代から『メガネびいき』のヘビーリスナーでもあったトンツカタン森本が、その日の顛末を書き綴る。

トンツカタン 森本晋太郎
トンツカタン 森本晋太郎

人力舎に入り、すぐに懇願したこと

友達もほとんどおらず、ひと言もしゃべることなく講義だけ受けて家に帰る日もザラにあった大学時代。お昼ご飯を一緒に食べる人もいなかったので売店でコッペパンを買い、まるで次の予定があるかのようにいそいそと歩きながら食べていた暗黒の時代。そんな僕を支えてくれたのが深夜ラジオだった。

『おぎやはぎのメガネびいき』はほぼ毎週リアルタイムで聴いていた番組のひとつで、ラジオネーム「しまいにゃポコチン」としてネタを投稿したりもしていた。大好きな芸人さんが自分のメールで笑ってくれると、それだけで救われた気持ちになった。あまり満喫できていなかったキャンパスライフのことなんてどうでもよくなるほどに。

森本晋太郎
大学時代の森本晋太郎。当時から『メガネびいき』を愛聴していた

大学を卒業してそのまま人力舎の養成所に入学した。1年間いろんな挫折を経てなんとかトンツカタンとして事務所に所属することができ、さらにその1年後に担当のマネージャーがついた。待ってましたと言わんばかりに僕はすかさず「『メガネびいき』を見学させてほしい」と懇願し、ついにあのころ聴いていたラジオ番組を目の前で聴かせていただけることになった。

2時間かけて歩いて帰った夜

見学当日、喜びと緊張と恐れ多さが入り混じった未知の感情に支配されながら深夜のTBSへ向かった。ただでさえ行き慣れてないのに存在すら知らなかった夜間入口探しに苦戦しながらもなんとかラジオフロアに辿り着いた。そこで初めておぎやはぎさんにご挨拶をさせていただいた。見学させていただく旨を伝えると「見学すんの? 変わってんねー」と言われた。何気ないひと言だけど、とてもうれしかったのを覚えている。

そして迎えた本番。ブースの外から見る『メガネびいき』はあまりにも贅沢で、僕の背中は一瞬たりともイスの背もたれに触れることなく放送が終わった。いち“クソメン”が享受していいワクワクのキャパシティを遥かに超えていた。その幸せを噛み締めるように僕は2時間弱かけて歩いて家まで帰った。

それから6年の時が経ったある日、友人であるchelmicoの真海子から「今月末にうちら『メガネびいき』出るよ」という連絡が来た。てっきりchelmicoとしての告知かと思ったらどうやら「うちら」の中に森本も入っているらしい。その瞬間、大学時代からの思い出が一気にフラッシュバックして心臓がバックバクにフル稼働し始めた。

そこからの1カ月弱は常に頭の片隅に『メガネびいき』があった。楽しみであるのは間違いないのだが、とにかくヘマをしたくない、番組に迷惑をかけたくないという思いが強かった。なんならずっと黙ってればよけいなこと言わなくて済むから「答えは沈黙か……?」と、『HUNTER×HUNTER』のクラピカみたいなことを思ったりもした。

小木だけでなく、矢作も不在と知らされる

そんなソワソワを常に抱えた状態で迎えた8月27日。その日は午前中から夕方までお仕事をしたあと、仮眠を取るため一度家に帰った。部屋着に着替えてベッドで横になろうとしたくらいでマネージャーさんから「矢作さんが体調不良で『メガネびいき』をお休みします」というLINEが届いた。一度読んだだけではなかなか事実を受け入れてくれず、何回も読み返してようやく脳みそが観念してくれた。

「おぎやはぎさん不在の『メガネびいき』にchelmicoと僕が出演……?」

さっきまで眠りにつこうとしていたのがウソのように急上昇する心拍数。そりゃ眠れるわけなんかない。とにかく本番までにできることをしよう。全力で頭を回転させた結果、熱々のシャワーを浴びることしか思いつかなかった。これはもはや何も思いつかなかったと同義である。案の定どれだけお湯の温度を上げても不安と緊張は洗い流せなかった。刻一刻と過ぎていく時間。一向に治まらない緊張。さっぱりとした体。いてもたってもいられなくなった僕は早めにTBSへ向かうことにした。

少しでも『メガネびいき』への恩返しができただろうか

この記事の画像(全4枚)


関連記事

この記事が掲載されているカテゴリ

関連記事

『空気階段の踊り場』

“クズ芸人”鈴木もぐらは「幸せな家庭」を築けるか?『空気階段の踊り場』に滲む愛と喜び

さらば青春の光

『さらば青春の光がTaダ、Baカ、Saワギ』で「誰も傷つけない笑い」に背を向け「自分が傷つく笑い」を選んだ東ブクロ

トンツカタン・森本『Mステ』を見て新垣結衣に会いに走る

ケビンス×そいつどいつ

ケビンス×そいつどいつが考える「チョキピース」の最適ツッコミ? 東京はお笑いの全部の要素が混ざる

EXILE NAOTOが語る、「勝負する身体」がステージと水面で魅せる“攻めの0.1秒”。大きな影響を与えるオーディエンスのパワーとは【『SG第40回グランプリ』特別企画】

「VTuberのママになりたい」現代美術家兼イラストレーターとして廣瀬祥子が目指すアートの外に開かれた表現

「VTuberのママになりたい」現代美術家兼イラストレーターの廣瀬祥子が目指すアートの外に開かれた表現

パンプキンポテトフライが初の冠ロケ番組で警察からの逃避行!?谷「AVみたいな設定やん」【『容疑者☆パンプキンポテトフライ』収録密着レポート】

フースーヤ×天才ピアニスト【よしもと漫才劇場10周年企画】

フースーヤ×天才ピアニスト、それぞれのライブの作り方「もうお笑いはええ」「権力誇示」【よしもと漫才劇場10周年企画】

『FNS歌謡祭』で示した“ライブアイドル”としての証明。実力の限界へ挑み続けた先にある、Devil ANTHEM.の現在地

『Quick Japan』vol.180

粗品が「今おもろいことのすべて」を語る『Quick Japan』vol.180表紙ビジュアル解禁!50Pの徹底特集

『Quick Japan』vol.181(2025年12月10日発売)表紙/撮影=ティム・ギャロ

STARGLOW、65ページ総力特集!バックカバー特集はフースーヤ×天才ピアニスト&SPカバーはニジガク【Quick Japan vol.181コンテンツ紹介】