「お笑い第七世代」をはじめとする若い世代が席巻しているのは、「大学お笑い/学生芸人」の存在があるからだ……そう断言するのはいささか乱暴だが、要因のひとつであることは間違いないだろう。
霜降り明星が高校生のお笑い大会『ハイスクール漫才』で出会い、コンビを結成したのは有名な話。大学に目を向ければ、昨年『M-1グランプリ』優勝を果たしたミルクボーイは、大阪芸術大学の落語研究会出身。直属の後輩にはななまがりや空気階段の鈴木もぐらがいる。
『キングオブコント』王者のハナコ岡部は、早稲田大学のお笑いサークル「お笑い工房LUDO」出身。「LUDO」は、「虹のかけ橋」やGパンパンダ、にゃんこスターのアンゴラ村長ら数多くの芸人を輩出していることでも話題になった。
ほかにも慶應大学「お笑い道場O-keis」出身の令和ロマン、上智大学「SCS」のラランドなど、挙げ出したらキリがないほど、プロで活躍している学生芸人出身は多い。YouTuberとして『オールナイトニッポン』のパーソナリティも務める水溜りボンドも青山大学「ナショグル」出身だ。
ひと昔前までは、大学でお笑いをやりたいと思っても落語研究会か演劇系のサークルしか選択肢がなかったイメージだが、現在では各大学にお笑いサークルがあり、学内で行われるライブはもちろん、『NOROSHI』をはじめとする学生芸人を対象にした全国規模の大会も開催され、大きな盛り上がりを見せている。そうした中で鍛えられた学生芸人たちが“即戦力”としてプロの世界に入ってきているのだ。
今、大学お笑いの世界に何かが起きている――。
そう確信したてれびのスキマによる、大学お笑いサークルの取材レポート。まずは、自身もお笑いサークル出身で現在は北海道のテレビ局に務めるかたわら、noteやツイッターで大学お笑いの魅力を発信しつづけているふたつぎさんにコンタクトを取り、大学お笑いの現状や魅力を伺った。
【記事後編】お笑いブームの最先端、“大学お笑いサークル”の魅力を聞く
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ふたつぎ
1996年生まれ。青山学院大学のお笑いサークル「ナショグル」に所属し、『M-1』などにもエントリー。卒業論文は『ゴッドタン』(テレビ東京)などを題材にした「お笑い番組から考えるテレビ番組のデザイン」で、佐久間宣行がツイッターで「嬉しかったし、何より面白かったです!」とコメントするなど話題となった。現在は札幌のテレビ局で情報番組のディレクターをしている。
てれびのスキマ
1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。
大学は「お笑い好き」が初めて解放できる場所だった
まず、ふたつぎさんの経歴を教えて下さい。
私は2015年に青山学院大学に入学して「ナショグル」というお笑いサークルに入りました。直の先輩では2個上に水溜りボンドさん、1個上に元ペコリーノの植木おでんさん(たまゆら学園)がいます。在籍期間は被っていない先輩でいうと、真空ジェシカ・ガクさんやさすらいラビーの宇野さんたちがいます。
ほかのサークルだと、上智大「SCS」のラランドさんが1年上です。
ふたつぎさんが入ったころのナショグルは、どれくらい会員がいたんですか?
私の代のときに50人くらい新入生が入ったので、最初は100人近くいました。でもお笑いサークル“あるある”なんですけど、途中で辞めちゃう子も多くて、最終的に同期で残ったのは20人くらいでした。
男女比は、最初は女子が多いんですけど、だいたい半々くらいに落ち着きます。私たちの代のとき、新歓ライブのMCをYouTuberとして有名になる前の水溜りボンドさんがやっていたんです。MCも上手で華がありました。お笑いに興味がない人でも、彼らの後輩になりたいと入ってくる子も多かったんです。
お笑いサークルは演者と、ライブのパンフレットを作ったり音響をやったりするスタッフに分かれます。スタッフは女の子が多く、演者はほとんどが男の子です。
ふたつぎさんは演者側ですよね?
最初はスタッフをやろうと思って入ったんです。高校時代にK-PROとか『バカ爆走』っていうライブ(※人力舎の事務所ライブ)をひとりで観に行くくらい異常にお笑いが好きで、オタク過ぎて演者のスゴさがわかっていたので、私なんかおもしろくないから演者はできないと思っていて。
でもその熱量で植木おでんさんなどの先輩とお笑いの話をしていたら、そんなに好きなら演者をやったほうがいいと言われて、演者になりました。
そういう転向をする人は多いんですか?
はい。有名なところでは元ペコリーノの(クロコダイル)ミユさん。私の1個上で、もともとはスタッフだったんですけど、植木さんがミユさんの才能を買ってコンビを組んだんです。
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