ジュノンボーイ、仮面ライダーを経て「登竜門で止まっちゃった」押田岳の悩みを吹き飛ばした『グラぱらっ!』

2026.9.30

文=於 ありさ 撮影=野口花梨 編集=高橋千里


ジュノンボーイ、仮面ライダー、そして主演作──。華々しいキャリアの裏で、俳優・押田岳はずっと“自分の足りなさ”と向き合ってきた。

2016年、第29回『ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト』でグランプリを獲得。『仮面ライダージオウ』(テレビ朝日)の仮面ライダーゲイツ役で大きな注目を集め、その後も映像・舞台を問わず幅広く活躍してきた。2026年10月にはBLドラマ『お前のほうからキスしてくれよ』(FOD、フジテレビCX関東ローカル)で主演を務める。

今年でデビュー10周年を迎え、20代最後の1年を過ごす押田。“王道ルート”を歩んでいるようにも映るが、本人は「登竜門のところで止まってしまっている」と本音を口にする。

転機となった出演作を振り返る全4回のインタビューを通して、押田岳の胸の内に迫る。

王道に見られる経歴に悩み「いつ“役者”になれるんだろう」

──前回の舞台『巌流島』の話に続いて、ドラマ『グラぱらっ!』(ABCテレビ)についてお聞かせください。駆け出しのグラビアアイドルと同棲生活をスタートする、グラビアオタクの隅田忍役を演じました。

押田 地上波作品で久々にメインの役どころだったのと、自分が挑戦してみたいキャラクターだったので、オファーされた瞬間に「これ、やりたい!」と思ったのを覚えています。

──「やりたい」と思えたのは、どんな部分が印象的だったのでしょう?

押田 僕自身、実はへなちょこな部分が多いので、へなちょこな役はずっとやってみたかったんですよね。そういう役を見事にくださったので、すっごくワクワクしました。

それに、昭和のラブコメみたいな雰囲気もいいなって。この作品に至るまでいろんな舞台を経験して、ちょっと大げさな芝居も覚えたり、コメディの引き出しを増やしたりしたあとだったので、そういう意味ではタイミングもバッチリでした。

──ご自身としては、すべてがフィットしているなと思ったのですね。

押田 というよりも「フィットさせられたら強いよな、これは」という感覚が近かったです。

僕の経歴って、『ジュノンボーイ』出身で、『仮面ライダー』シリーズや『オオカミくんには騙されない』(ABEMA)に出て……経歴だけ見るとすごく王道だと思われがちなんです。でも、僕自身は王道な芸能人生を生きているとは思っていない。

ある意味“普通の役”──まわりのキラキラしたキャラクターを支えていく役どころをやってみたかったので、これができたら僕は役者としてもう一段階上がれるな、と思いました。

押田岳(おしだ・がく)1997年4月9日生まれ、神奈川県出身。『仮面ライダージオウ』明光院ゲイツ役、舞台『巌流島』捨吉役、『コスメティック・プレイラバー』(フジテレビ)佐橋天真役、『グラぱらっ!』(ABCテレビ)隅田忍役、『お前のほうからキスしてくれよ』神田瑛人役など

──王道に見られる経歴と、自分の現在地に葛藤したことはありますか?

押田 ありますね。やっぱり王道ルートを目指すなら、僕が芸能界に入ったばかりのころに書いた“未来ノート”のとおりに進まないといけないんですよ。朝ドラに出て、大河に出て、日曜劇場に出て、月9に出て……みたいな。それが僕の思う、本当の王道ルートです。

でも、現実はそうじゃなかった。僕は『仮面ライダー』という登竜門のところで止まっちゃっている部分はコンプレックスだったし、芝居をやっている人というより、“タレント”みたいな見られ方をすることも多かった。だからこそ、ちゃんと役者だと思ってもらえるようになりたくて……そこは葛藤していましたね。

──そんななかでオファーがあったのが、『グラぱらっ!』だったと。

押田 前の事務所を辞めて、今の事務所に所属させてもらってから、社長やマネージャーたちの話をいろいろ聞いて、「なんでもやってみよう」って思ったんですよね。

未来ノートもそうですけど、自分の理想にハマることだけじゃなくて、いろんなことをやってみたら、そこからまた得るものも失うものもあって、人間として表に出せるものも変わっていく。それで、いろんな仕事を受けるようになって、そしたら少しずつ変わってきて……という段階に今はいるのかなと思っています。

今でも「いつ“役者”になれるんだろう」とは思っています。未来ノートの目標を頑なに守り続けても、挫折することはあるので。これから夢を目指す子たちには、「考えすぎないで、今を楽しむことも重要だよ」って伝えたいなと思います。

誰が決めてるのか? “リアルな芝居”を考える

──『グラぱらっ!』の隅田忍役は、自分と近しいキャラクターだったとのことでしたが、役へのアプローチは今までと変えたのでしょうか?

押田 いったん、自分が一番ダサいと思う挙動をいろいろ探しました。「俺って、こんなクセがあるんだ」というところを観察するようにしましたね。

びっくりしたときの反応とか、こけちゃったあとの照れ隠しの仕方とか。そういう“ダサいんだけど、かわいく思えるような瞬間”を意識的に探しました。結果、すごく演じやすかったですね。

──芝居を通して学んだこと、気づいたことはありましたか?

押田 “リアルな芝居”について考え始めたのが、この作品からだった気がします。よく“リアルな芝居”っていいますけど、「誰がその“リアル”を決めているの?」と思うこともあって。作風によって変えなきゃいけないものだとは思いますが、うまく調律できるように模索しています。

──振り返ってみて、この作品はご自身のキャリアにとって、どのような存在でしょうか?

押田 久々に、役者としての人生が動き始めた印象です。この作品のおかげでお仕事が増えているところなので、ここから「おもしろいね」って評価されるお仕事をもっと増やしていけたらいいなと思っています。

次回は、今秋公開のドラマ『お前のほうからキスしてくれよ』について深掘ります。10月公開予定!

この記事の画像(全7枚)


この記事が掲載されているカテゴリ

Written by

於 ありさ

(おき・ありさ)ライター・インタビュアー。金融機関、編プロでの勤務を経て2018年よりフリーランスに。サンリオ・男性アイドル・テレビ・ラジオ・お笑い・サッカーが好き。マイメロディや推しに囲まれて暮らしている。