ニヤニヤするモキュメンタリーホラー! 思わず爆笑&まさかの共感…パニックに陥った配信者の結末を目撃せよ(石野理子『デッドストリーム』レビュー)

文=石野理子 編集=菅原史稀


2023年よりソロ活動を開始し、同年8月にバンド・Aooo(アウー)を結成した石野理子。連載「石野理子のシネマ基地」では、かねてより大の映画好きを明かしている彼女が、新旧問わずあらゆる作品について綴る。

第20回は、ジョゼフ・ウィンター&ヴァネッサ・ウィンター監督による『デッドストリーム』。失踪した配信者が残した映像──そんな不穏な始まりから、一気に騒がしくて楽しい恐怖の世界へとなだれ込む、進化系ファウンド・フッテージホラーだ。

主演も務めたジョゼフとヴァネッサが、監督・脚本・制作・編集までを二人三脚で手がけた本作。複数のGoProやライブ配信画面、視聴者コメントまでを駆使し、リアルタイムで惨劇をのぞき見しているような臨場感を生み出した。クラシックホラーへの愛と手作り感満載のアイデアが詰まった一作は、SXSW映画祭で観客賞を受賞。怖い、笑える、忙しい! 夏の夜にぴったりな絶叫アトラクションを、石野はどう楽しんだのか。

※本稿には、作品の内容および結末・物語の核心が含まれています。未鑑賞の方はご注意ください。

炎上系配信者の悪ふざけから始まる

連日、厳しい夏の暑さが続いていますね。ここまで暑いと、映画館の涼しい暗闇でヒヤッとするような刺激を求めたくなるのは、きっと私だけではないはずです。この時期になると新作のホラー映画が続々と公開され、「夏=ホラー・怪談」という文化が体に染みついていることを実感します。こうした季節の風物詩的な楽しみ方は日本固有の感覚かと思いきや、海外でも夏場にポップな恐怖映画で盛り上がる習慣があるようで興味深いです。

さて、今回はひとりでも複数人でも楽しめる、アトラクション感満載のホラー映画を取り上げます。映画『デッドストリーム』です。

本作は、お馬鹿でお調子者の主人公ショーンの主観視点(POV)で展開するモキュメンタリーホラー。まるで自分自身が彼の配信チャンネルにアクセスし、リアルタイムで視聴者として参加しているかのような感覚から物語は始まります。オープニングで描かれるのは、過激なパフォーマンスで炎上を繰り返してきた配信者ショーンの、「本当に反省したのか?」と呆れるほど誇らしげな自己紹介です。

「俺はゴミ野郎だ。自虐的ででしゃばりで、バカな挑戦で恐怖と戦ってきた」

以前、行きすぎた企画で不祥事を起こし、スポンサー撤退とアカウント停止処分を食らった彼が、名誉挽回をかけて挑むのが「呪われた幽霊屋敷でひと晩過ごす」という生配信。自身の存在は霊を怒らすだろうと自覚し、出発前には母親から聖水、十字架、塩、ニンニク、銀の短剣を渡されます。

さらに彼は、企画を盛り上げるための絶対ルールを宣言します。それが「奇妙な現象が起きたら、何があっても必ず確認しに行く」というもの。あぁ、自ら首を絞めているな……と呆れつつも、視聴者としては嫌でも期待が高まります。「イースターに次ぐ復活祭だ!」と大口を叩いて笑っていられるのも今のうちだろうな、とニヤリとしながら見守るしかありません。

コメント欄の解説も楽しい!

そして迎えた生配信当日。画面上に「人気配信者がライブ中に屋敷で失踪。1年後、映像だけが発見された」という衝撃的なテロップが映し出されたかと思いきや、なんとそれはショーンが自作したオリジナルTシャツの宣伝文句。呆れ返る演出を挟みつつ、彼は真っ暗な森を進みます。

山登りのような重装備に、お決まりのGoProを装着したショーン。逃げ出せない状況を作るため、自らの乗ってきた車のエンジンがかからないよう細工を施し、「俺は自分の性格をよく知っている」と点火プラグを森の茂みに投げ捨ててしまいます。屋敷に入る前からショーンに対して嫌な予感しかありません。

封鎖される前に11人もの人間が消えたというその廃屋は、壁一面の落書きや血痕、散乱した家具など、どこを切り取っても“マジもん”の雰囲気が漂っています。ショーンは各部屋に定点カメラを設置しながら間取りを確認。資料によれば、この家に最初に住んでいた詩人の女性・ミルドレッドがすべての呪いの元凶のようです。

配信が始まると、ショーンと気ままな視聴者たちによるコメント欄でのかけ合いがテンポよく展開します。

そこへ突然、彼の居場所を特定したという熱狂的なファンを名乗る女性・クリッシーが現れます。彼女にもGoProを装着させ、ふたりで探検を再開。背中を預け合い、怯えながら恐る恐る進むふたりの姿には、お化け屋敷が苦手な私も思わず共感してしまいました。

やがて主寝室の地下で隠し部屋を見つけた彼らは、ルーレットを使った本格的な降霊術を試みます。しかし、ここから事態は一気にパニックへと突入。屋敷に潜む霊の暴走に、コメント欄の識者たちがショーンのしでかした失策を次々と解説していく流れがおかしくてたまりません。

いよいよ状況の危険さに気づいた視聴者たちが「早く逃げろ!」と促し、ショーンは窓から飛び降りて脱出を試みます。しかしあいにく、彼は途中でくじけないよう、大事な鍵や車の部品を自ら捨ててしまっていました……。

追い詰められたショーンの恐怖心は、やがて闘争心と復讐心へと変貌します。そして、彼は武器を手に、自らあの恐ろしい屋敷へと戻っていくのです。過去の過ちを必死に懺悔しながら力技で除霊を試みる彼の姿は、恐怖を通り越してもはや喜劇!!!

序盤に「母親が持たせたニンニクなんて何に使うんだ?」と思っていたら、後半に使い道が用意されていたり、絶対に触れたくないような汚濁したバスタブでの攻防が繰り広げられたりと、霊が2回もショーンの鼻に爪を突っ込んでグリグリと攻めるのが意味がわからなくて滑稽だったり、後半は笑いと悲鳴の連続。定点カメラに「サラミ」などの愛称をつけるコミカルさの一方で、視聴者とともに過激化していく彼の不憫さにも愛着が湧いてきます。

ショーンが迎える結末は、ぜひご自身の目で確かめてみてください。ノンストップで駆け抜けるテンポ感抜群の作品ですので、手軽に爽快な恐怖と笑いを味わいたい夏の夜にぴったりです。

それから、勢いで肝試しに出かけるのだけは絶対にやめましょうね……!

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石野理子

(いしの・りこ)2000年10月29日生まれ。広島県出身。2014年、アイドルグループ・アイドルネッサンスのメンバーとして活動スタート。2018年、同グループ解散後、バンド・赤い公園のボーカリストに就任。2021年に解散。2023年よりソロ活動を開始し、8月に、バンド・Aooo(アウー)を結成。また..