フランツが接戦を制し本選へ、第8回『AUN〜新呼吸〜』第二陣の熱戦レポート

2024.10.2

文=春風亭昇咲 撮影=晴知花


第8回『AUN~コンビ大喜利王決定戦~』の予選となる『AUN〜新呼吸~』第一陣の開催から、早1ヶ月。本選出場を決めた「十九人」の快進撃の興奮冷めやらぬなか、予選第二陣が9月20日、新宿・角筈区民ホールにて開催された。

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新呼吸優勝コンビも、実力者8組が勢ぞろい

今回もMCを務めるのは、前回予選に引き続き奥森皐月とストレッチーズ高木貫太。前回予選、第一陣は芸歴最年長がシモリュウのふたりで、その他は比較的フレッシュな面々がそろったのに対し、今回は芸歴20年の街裏ぴんく、今年45歳のルシファー吉岡をはじめ、芸歴10年前後のコンビが多く、11年目のMC高木も楽屋でも居づらさを感じることはなかったという。

MCを務めた奥森皐月とストレッチーズ高木貫太

冒頭で高木の「今回、AUN初めて観に来た方?」という質問に対し、観客の手がちらほら挙がる。中には、「今回が、人生初めてのお笑いライブ」という方もおり、「どうして、こんなところに迷い込んじゃったの~?」という高木の言葉とは裏腹に、この『AUN』というライブがお笑い界にとって、着実に大きな存在になってきていることを物語る。

本選へ出場するのは、『新呼吸』優勝経験もあるフランツか、ド桜、ガクヅケ、さすらいラビー、シンクロニシティの予選経験者コンビか、はたまた大先輩・街裏ぴんく&ルシファー吉岡か、はたまたカラタチ、今井らいぱち&kento fukayaが割って入るか、実力者8組の戦いに目が離せない。

“一般のカップル”が掻き乱すAブロック

今回の予選も、計8組でA・Bグループ各4組に分かれて行われるトーナメント方式。

Aグループは、ド桜、ガクヅケ、今井らいぱち&kento fukaya、カラタチの4組。登場シーンでは、すべてのコンビが被り物や衣装で姿を変えてきた。前回、登場から大喜利が始まっていると知らず生身の登場となってしまったド桜は今回、Netflixドラマ『地面師たち』の豊川悦司と、リリー・フランキーに変身。長尺で名シーンを完全再現するも、まだ『地面師たち』を観ていないMC高木に「本当に、そんなセリフあるの?」と一蹴されてしまう。

あのシーンを再現するド桜

第1対戦は、もはや AUNにおいて定番となった「コンビ大喜利」。ひとつのお題にコンビふたりで回答していくという形式の、この「コンビ大喜利」。「一般のカップル」として登場した、大喜利の概念も知らずに参加している「長谷川マモル」と「瀬古オトハ」扮する、今井らいぱち&kento fukayaの早すぎる第1答を皮切りに、どのコンビも回答ペースが落ちることなく、かなりのハイペースで戦いは進んでいく。序盤は、大きな声に活路を見出すド桜がリード、「一般のカップル」なのに高度な「かぶせ」を披露するとともに、0Pも連発する今井らいぱち&kento fukayaが遅れを取る。

ド桜にかぶせる、長谷川マモル(今井らいぱち)と瀬古オトハ(kento fukaya)

筆者的ベスト回答は、問「生まれ変わったら透明人間になりたい理由 1位と107位」の、カラタチの回答「(1位)マジックミラー号の中で覗きたい。(107位)あの時の矢口真里の修羅場をあの部屋で見たい」。

キャラクターを活かした回答が光るカラタチ

第2対戦は「しりとり大喜利」。事前インタビューで、「大喜利は、完全な不得意」と語ったカラタチのふたりが、着実にポイントを重ねる一方、「普段の村田」と「ボトルガム」に扮したガクヅケの、ド桜・村田大樹への前のコンビイジリによって、ド桜は徐々にペースを乱されていく。MCふたりの「近年稀に見る、接戦」という言葉のとおり、全コンビが1~2ポイント内で戦いは終盤に。ラストの回答ラッシュによって、ガクヅケが今井らいぱち&kento fukayaを2ポイント差で上回り、見事決勝進出を決めた。

筆者的ベスト回答は、問「ハラスメントフルコンプおじさんが言いそうなことしりとり」のガクヅケの回答「育休、反対」「育休、反対」。

「古くて、エロい回答はダメです」

Bブロック開始までの間、高木はいつものように水分補給に。舞台上にひとりになった奥森の、毎回恒例ともなった「奥森的おもしろかったポイント」の発表。今回は、コンビ大喜利において、カラタチのふたりが気持ち悪い回答をしたとき、客席下手(しもて)から「うわっ、最悪」という声がうっすら聞こえてきたとのこと。MCふたりは、観客のわずかな反応や、感情の変化も見逃さない。

Bグループは、フランツ、さすらいラビー、シンクロニシティ、街裏ぴんく&ルシファー吉岡の4組。Aブロックに比べ、比較的落ち着いた登場にはなったものの、シンクロニシティ西野諒太郎のカラタチ大山和也に激似の姿に客席が大いにざわめく。「歳を取りすぎて、若手のノリがわからず怖かった」というルシファー吉岡だが、事前インタビューで話したとおり「芸歴にものを言わせて、圧をかける」戦いはできるのか。奥森による、フランツの「右乳首人気おじさん」への右乳首への投票とともに、戦いがスタートした。

右乳首へ投票する様子
カラタチに扮したシンクロニシティ

第1対戦は「コンビ大喜利」。カラタチのキャラそのままで答えた、シンクロニシティの2ポイント回答を皮切りに、どのコンビもポイントを落とすことなく、着実に回答を重ねていく。やはり、序盤から圧倒的な強さを見せたのは、優勝経験者のフランツ。「堺雅人」や「桑田佳祐」といった、固有名詞を使った2ポイントの回答連発に、ほかのコンビからも思わず「強ぇー」の声が飛び、会場が揺れる。12ポイントで、思わず高木も「強すぎるんだよ」と称賛したフランツがトップに、「古くて、エロい回答はダメです」と注意を受けた、街裏ぴんく&ルシファー吉岡が遅れを取った。

ワンデーアキュビューのCMに出演した際の姿で大喜利をするさすらいラビー

筆者的ベスト回答は、問「全員がうろ覚えでやってる人狼ゲーム」のフランツの回答「新しい役職:堺雅人」「その能力:目をつぶったふりをして、ちょっとだけ目を開けている」。

第2対戦は「一件落着大喜利」。不幸な出来事をその後のひと言でチャラにして、一件落着させる大喜利問題。比較的、それぞれの色が出やすいこのお題。変わらず2ポイントを出し続けるノリに乗ったフランツ、「文豪すぎた」という反省点とともに、文学的な表現でポイントを落としていく、さすらいラビー。よしおか曰く「量より質」のシンクロニシティと、「古くてエロい」街裏ぴんく&ルシファー吉岡の追い上げをかわし、最後まで勢いそのままに逃げ切ったフランツが、2位シンクロニシティと6ポイント差の大差で決勝進出を決めた。

判定に疑問を呈すルシファー吉岡

筆者的ベスト回答は、問「鉄棒で回転していたら止まらなくなったのだが」の街裏ぴんく&ルシファー吉岡の回答「大きな湯葉のような膜が出来上がったので」「羽織った」。

大接戦の先輩後輩対決

本選への出場権を賭けた決勝戦は、ガクヅケvsフランツ。結局、常連コンビが強いのか。

ボトルガムからガムを取り出すガクヅケ船引

ガクヅケは、AUNを支えるすべての人に感謝を忘れない。木田は登場するなり「お題を作ってくれるスタッフ」、「おもしろく動いた自分」への感謝を述べ、拍手をし、ひとり着席した。フランツは、「右乳首回る君」に姿を変えて登場。それに伴って、顔が老けてしまった理由は誰もわからない。

決勝の対決は2on2。お題に対して個人で回答、最終的にポイントの多かったコンビが勝ちとなるシンプルスタイルのストロング大喜利対決だ。「シンプルな大喜利なら勝てます」と言い放つガクヅケ。マセキ(芸能社)対決の結末はいかに。親交の深い2組だけに、「負けたくない」というお互いの強い思いが交錯する。高木からも「気持ち強すぎて、噛まないでください」「急いで書いてるから、画力が低すぎます!」と指導が入る。

画力が足りていないフランツ土岐真太郎

1問目を終えて、フランツの1ポイントリード。まだまだ、わからない。2問目のお題「違法っぽい料理名」で、2組の大喜利力が爆発。4人それぞれが2ポイントを連発し、お互いが「素晴らしい」「強いなー」と称え合う同事務所の先輩後輩コンビならではの、熱い戦いに。終了1分前の段階で、1ポイント差の大接戦。止まらない2組の連答。2ポイントラッシュ。ここで、終了のゴングが鳴る。

筆者的ベスト回答は、問「心配になる水族館」のガクヅケ船引(亮佑)の回答「15:00~ コンソメターイム!」。

最終的に2P差の接戦を制したのは、予選から圧倒的な勢いを最後まで持続させたフランツ。「大喜利で最も大事なのは『尊さ』」と語っていたふたりが、本選出場を決めた。その瞬間は、ぜひアーカイブ配信で。

優勝しポーズを決めるフランツ
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第8回『AUN~コンビ大喜利王決定戦~』本選は、10月26日(土)。実力者ぞろいの出場者たちに、予選を勝ち上がった十九人とフランツが真っ向からぶつかっていく。熱い戦いをぜひ、その目で見てほしい。

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春風亭昇咲

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春風亭昇咲

(しゅんぷんてい・しょうさく)1992年東京都出身。落語家。日本大学芸術学部放送学科を卒業後、師匠・春風亭昇太に入門。2020年「二ツ目」に昇進。落語家として活動する傍ら、モデルエージェンシー「FRIDAY」に所属、2023年から「神保町よしもと漫才劇場」に構成作家見習いとして入るなど、活動の幅を広..

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