『ドラフトコント』マヂラブ野田が春日らに作った爆笑不可避の“問題作”(てれびのスキマ)

マヂカルラブリー

テレビっ子のライター“てれびのスキマ“が、昨日観た番組を記録する連載「きのうのテレビ」。バラエティやドキュメントの中で起こった名場面、名言、貴重な会話の数々を書き留めます。2020年から毎日欠かさず更新中。


『ドラフトコント』

(編集部補足:『ドラフトコント』は、2021年から不定期で放送されているコント番組。キャプテンを務める5名の芸人が「一緒にコントをやりたい」と思う芸人を20名の中から指名。約1カ月をかけて作り上げたコントを披露し、優勝を競い合う。第1回大会では、オードリー春日俊彰率いるチームが優勝に輝いた)

新キャプテンのひとりアンガールズ田中が「前のメンバー見たらもうちょっとバラエティだったのに、ジュニアさんとか小籔さんが入ると急にガチ感出る」と言うように、キャプテンは前年優勝の春日を除き一新。「勝つコツは自分でネタを書かない。優秀な人材を集めるってことに集中しております」という春日は前回同様、かたまりなどのブレーンを1位指名すると思いきや、意外にもジャンポケ斉藤を指名。去年一緒にやった際「お互いがどんどん高みに登っていく感じがあった。絶対に欲しかった。言ってもプレイヤーなんでネタ作る人たちは欲しがるんじゃないかなって」と先に指名した理由を語る。

ほかのメンバーも、ジュニアは中岡、小籔は和田まんじゅう、田中はう大、長田はKAƵMAと「クイズやったら当たらんと思う」と司会の今田が言う意外な指名で競合なし。

春日は2巡目にブレーンとなる野田クリスタルを指名。「春日くん、あなたマッチョそろえ出しましたね? あなたコントで脱ぐ気ですね?(笑)」と今田。対して田中が水川かたまりを獲り、田中、う大、かたまりという強力な頭脳が揃うワクワクするチームに。3巡目も競合なく、最後の4巡目でようやく小籔と田中が唯一の女性芸人・イワクラで競合。錦鯉・長谷川だけが最後に残る展開に。小籔がクジに勝つと田中「ヤバい! 急に最後、異分子(長谷川)が入ってくる!(笑)」。飲み友達を集めたジュニア、「超攻撃的で守備力ゼロ」という大砲をそろえた春日、ブレーンを多く獲った田中など、それぞれのチームがキャプテンの個性を色濃く反映していておもしろい。

『ドラフトコント2022』指名一覧(作表/てれびのスキマ)

トップバッターを引いたのはチーム・ジュニア。「ドラフトは100点、ビジュアルは0点」というメンバー。「ジュニアさんの世界で踊ってみたい」と稲田が希望するとおり、ジュニアが約4年ぶりに新作コントを書き下ろし。その台本を読んで稲田「ははーん、ペン、走ったな?(笑)」。小宮以外の4人が女装し、彼女たちの話に小宮がツッコんでいくコント。締め方がいかにもジュニアらしい凝ったもの。そのクオリティを見て「急にむちゃくちゃ緊張してきた」と小籔。

チーム長田はアートデザインをメンバーに見せ世界観を理解してもらうことから始め、美術セットまで長田がデザイン。「アジアのどっかにありそうなバラエティ番組」をそれらしい独自の言語をしゃべりながら演じるというもの。どうしても設定は『テレビ東京若手映像グランプリ2022』に輝いた『Raiken Nippon Hair』を思い出してしまうが、ちゃんと長田色の濃いものになっている。嶋佐がアイドル風になっていたり、大御所歌手風の岡野だったり、キャスティングも抜群。今田「とにかく時間を返してください(笑)」。

チーム春日は思ったとおり、野田にネタ作りを丸投げ。しかも別の仕事のため、稽古も欠席。野田「切るか?(笑)」。事実上、チーム野田となったコントの内容は松尾が「問題作。『コントなのか?』問題が起こる」というように、商店街ロケという設定で、AD野田のカンペに従って4人がひたすら「トゥース」「はーい」「どんだけー」「イっちゃってる」を繰り返すネタ。最後に『世にも奇妙な物語』風に「ギャグ。それは芸人を縛りつける呪いなのかもしれません」と野田が語るオチ。これには今田もトリンドルも泣きながら爆笑。無意味な繰り返しに、時間を追うごとに爆笑不可避。「4人見て、普段から思ってたんですよ。『こういうことだぞ』って」「説教です(笑)」と野田が振り返るように、ネタ作りを丸投げされたうっぷんを晴らすかのようなコントが強烈だった。

チーム田中は、大人数のコントを普段からやっているう大の台本をベースに、田中とかたまりでブラッシュアップしていく作戦(田中自身も『田中が考え中』というライブなどで大人数のコントを作っているから田中主導のネタも観たかった)。う大の初稿の表紙には「チーム・ストイック」の文字が。「信じられない、初稿でこのクオリティは!」と田中がいうコントは、う大らしいサスペンスホラー的な怖さを持ったネタ。課題ともいえた長谷川の存在が不可欠なものに仕上がっていて見事。1本の演劇作品を観た充実感があった。

全組それぞれ個性的で方向性も違っていておもしろかった。あと、かたまりの女装が美人なのはもとより、気品漂う女性に扮した稲田、番組アシスタント風の賀屋、妙に色気のある母を演じた西本と女性キャラが印象的。だからというべきか、逆にというべきか、今回イワクラだけだった女性芸人ももっと入れてほしいなと思う。

個人的には、チーム春日(というかチーム野田)かチーム・ストイックことチーム田中が頭ひとつ抜けている感じがしたが、優勝は5人全員がネタを書け、全員でネタを練ったチーム小籔。春日「ネタってみんなで考えなきゃいけないんだなって(笑)」。


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てれびのスキマ

1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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