志村けんと大林宣彦がまったく違う目的で使った同じ手法とは?(てれびのスキマ)

てれびのスキマ

テレビっ子のライター“てれびのスキマ“が、昨日観た番組を記録する連載「きのうのテレビ」。バラエティやドキュメントの中で起こった名場面、名言、貴重な会話の数々を書き留めます。2020年から毎日欠かさず更新中。


『私のバカせまい史』

さらば森田がプレゼンするのは「まぶたの目史」。「日本のテレビ史上初らしいです。まぶたの目だけで30分」と笑う森田。

世界で初めてメディアで「まぶたの目」が描かれたのは1921年のアメリカの無声コメディ映画。実は去年が誕生100年のメモリアルイヤーだったことが発覚。「仕事をさぼって寝る」というコメディシーン。1930年以降になると、フランスの名映画監督ジャン・コクトーが複数の映画で「人間ならざるもの」を表現するために「まぶたの目」を使っていた。アメリカはコメディ、フランスは芸術的にまぶたの目が使われていったというのが興味深い。実際、タイムマシーン3号が演じた「まぶたの目」コントを見せると、今の子供やアメリカ人が大笑いする一方で、フランス人はあまり笑わず「メタファー」を考え出す国民性の違いが実証されていた。

日本では1982年に初上陸したと番組では考察。志村けんが『ドリフ大爆笑』でやったのが最初だという。さらには高田純次が『元気が出るテレビ』で繰り返し使用した。

一方、志村と同じ1982年、大林宣彦による『火曜サスペンス劇場』の「可愛い悪魔」という作品では、女性が突き落とされるシリアスな殺人シーンで「まぶたの目」が使われる(大林が『火サス』を撮っていたというのも「へえ!」ってなった)。バカリズム「笑わす気はまったくないんでしょうけど、今のところ一番おもしろい(笑)」。

プレゼン後、バカリズムが「『バカせまい史』史上一番くだらない」と評すとおり、観覧客が実はみんな「まぶたの目」でこの収録を観ていたという意味不明のドッキリを挟んだり、終始ふざけているけど、やっぱり知的好奇心も刺激されておもしろい。

『不夜城はなぜ回る』

入社5年目の大前プジョルジョ健太が総合演出を務める、夜中明かりがついている建物=「不夜城」はいったい何をやっているのかを突撃取材する番組。番組になる前から不夜城探索が趣味という変わり者のプジョルジョ。カズレーザー「TBSの社員さんなんですよね? 社員史上最も靴が汚い(笑)」。

単発でも大変そうなロケだったが、レギュラー化。今回は北海道・羅臼に。が、敷地内に入ろうとすると「何しに来たの? ここ有料だよ、タダじゃないよ!」「ジャマっていうよりダメ!」「帰ってちょうだい」と不穏な雰囲気で、なんの話も聞くことができず門前払いされてしまう。

翌日、改めて取材交渉に。実はここは絶滅危惧種のシマフクロウを自然のまま観察する施設。徹夜で写真を撮影する人たちが集まっている。夜中になると撮影者15人が小屋の中から一瞬のシャッターチャンスも逃すまいと緊張感も漂わせているが、けっして嫌な雰囲気ではなく、「来た!来た!」など声をかけ合い、同好の仲間たちと協力し合っている感じがとてもいい。

特番時代もそうだが、プジョルジョは懐に入るのがうまいのか、かわいがられ気質なのか、時間が経つにつれて、取材対象者がみんな、息子を相手にするかのように親切にしてくれる。下世話な印象がする番組タイトルとは裏腹に、この番組全体を包む温かさのようなものはやはり彼の人柄からにじみ出るものだろう。VTRを観終えたカズレーザー「めちゃめちゃいいじゃないですか!」。


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てれびのスキマ

1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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