柴田理恵は何回号泣した? 初めてものまね番組で「ご本人登場」したのは? 「なんでそれ調べなあかん?」な歴史を徹底調査(てれびのスキマ)

てれびのスキマ

テレビっ子のライター“てれびのスキマ“が、昨日観た番組を記録する連載「きのうのテレビ」。バラエティやドキュメントの中で起こった名場面、名言、貴重な会話の数々を書き留めます。2020年から毎日欠かさず更新中。


『私のバカせまい史』

これまでの深夜版も最高だったが、ゴールデン特番の今回も輪をかけて最高で年間ベスト級の番組だった。今回はせいやが「32年の汗と涙の結晶! ものまね番組ご本人登場史」、阿佐ヶ谷姉妹(美穂は欠席)が「フジテレビ63年の歴史を逆流! クイズ番組第1問史」、バカリズムが「柴田理恵号泣史」、森田が「40年創意工夫し続けるお笑い芸人のあるあるネタパッケージ発明史」といずれも「なんでそれ調べなあかん?」(森田)というバカバカしくも興味深いものばかり。

「ご本人登場史」では、フジテレビだけで535回のご本人登場が行われたとのこと。その元祖は1989年(本当にこの年はいろんなもののターニングポイントになっている)。ものまね四天王の人気でものまねブーム真っただ中のころ、コロッケが美川憲一のものまねをしているときにご本人が登場。確かにこの場面は鮮明に覚えている。これをきっかけに美川憲一は再ブレイク。ふたりで『紅白』にも出場した。

その2年後、清水アキラのものまねで青江三奈が登場し、「ご本人登場」が恒例企画化。1996年には、ピンク・レディーが6年ぶりの再結成の舞台に選ぶほどビッグコンテンツに成長し、シンディ・ローパーのような「外タレ」も登場していく。行くところまで行ってしまった1997年には、38組中、実に27組でご本人登場。供給過多となり、リアクションも薄味に。「V6が出てくるかと思ってドキドキした」などと出演者がご本人登場待ちする事態に。

そこからマンネリとの戦いになっていき、もはや「誰へのドッキリ」かわからないような演出。やがて冬の時代に突入していく。そんななか、ご本人登場され回数25回の「ミスターご本人登場」清水アキラがサプライズ登場。かつて95年、97年、98年の3回にわたりご本人登場された橋幸夫「恋のメキシカン・ロック」を水着姿で軽快に歌うと、まさかの、いや、やっぱりご本人登場。いかにもフジテレビな華やかなステージが楽しい。来年、歌手としては引退するため「マジで最後」のご本人登場だと橋幸夫が言うとバカリズム「そもそも何回もやるもんじゃない(笑)」。

「クイズ番組第1問史」では『ネプリーグ』『ヘキサゴンII』『ミリオネア』に意外な共通点があったりとか、「柴田理恵号泣史」では柴田を「芸能界のウォーターフロント」と評し、その泣き方には「小泣き(素泣き)」「中泣き(拭い泣き)」「大泣き(メガネずらし→ハンカチ拭い)」「満点大泣き(メガネ外し→大拭い)」の4段階あると分析し、1年ごとの「テレビで泣いた回数」のグラフや「涙の傾向」「泣くテーマ」の表などを見せながらプレゼンする、これぞバカリズム節な研究発表で見応えがスゴい。

「お笑い芸人のあるあるネタパッケージ発明史」では、枕草子の時代から「あるある」を楽しんできた日本のお笑いにおける「あるある」の起源をツービートの漫才として、それをパッケージ化したあるあるの父・エジソンは1985年、当時25歳の嘉門タツオだという。

さらに1996年、「2大発明」が誕生する。それがあるあるにダンスを取り入れ、「嫌いな人にダメージを与える」という目線を加えたふかわりょうと、あるあるを1テーマでたたみかける漫談を開発したつぶやきシロー。そこからあるあるの黄金期が訪れる。「あるある×フリップ芸」を生んだいつもここから、「あるある×県民性」のはなわらが台頭するなか、「あるあるパッケージ工場」の『エンタの神様』が登場。「養成所でも『エンタ』に出たかったらあるあるをしろ」と言われたと森田が証言するようにあるあるネタが飽和状態に。

新しいあるあるパッケージが枯渇していくなか、それを救う「偉大な発明」として2004年、レギュラーを挙げる。彼らは「あるある探検隊」と「あるある」と謳いながら、「ないない」ネタを言うという逆転の発想。しかも黄金律「4-4-5」のリズムを使っていた。さらに2009年、俵万智も絶賛するRGが登場。番組では「しがち」という3文字のスゴさに焦点を当てていたが、「あるある」をなかなか言わないというのも発明だった。

番組の最後、「一人ひとりの芸人の負担がえげつない」とバカリズムは言うが、その表情は充実感にあふれてた。それぞれの発表のあとには「すべて独自の考察である」というテロップと共に「Special Thanks」として調査に協力した人の名前もしっかり明記されていたし、エンディングでは「研究発表への道」として打ち合わせの模様や分厚い資料、詳細な統計データなどが映され、エンドクレジットもゆっくり流れる。それは自信の表れだろう。

テレビはとかくそういう部分を見せるのは野暮だという価値観が強く、結果として責任の所在が曖昧になる(演者に集中する)ことが少なくなかったから、こういう姿勢はうれしい。番組冒頭「完全版は貴重映像多数につき地上波1回限定のみ」と言っていたとおり、今のところTVerで配信されているのは「柴田理恵号泣史」と「あるあるネタパッケージ史」のみなのが残念でもあり、配信前提になっている今の時代へのアンチテーゼになっていて痛快でもあった。


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  • 【連載】きのうのテレビ(てれびのスキマ)

    毎夜ライフワークとしてテレビを観つづけ、テレビに関する著書やコラムを多数執筆する、てれびのスキマによる連載。昨日観た番組とそこで得た気づき、今日観たい番組などを毎日更新で綴る、2021年のテレビ鑑賞記録。

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1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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