「おぼん・こぼん THE FINAL」はドキュメンタリーの大傑作だった。解散を乗り越え19年ぶりの漫才を披露(てれびのスキマ)


テレビっ子のライター“てれびのスキマ”が、昨日観た番組を記録する連載「きのうのテレビ」。2020年から毎日欠かさず更新中。

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『水曜日のダウンタウン』

「おぼん・こぼん THE FINAL」。いやー、すごいものを観た。先週放送の映画館ロケから10日。こぼんの娘・いづみ夫婦の結婚式。まず第1関門は、いづみが「第2のお父さん」と慕うおぼんが出席するかどうか。そして、いづみを挟みおぼん・こぼんの3人で入場できるか。

まあ、これはさすがに来ないわけないと思っていたので安心はしていたけど、実際に3人が並んだ画は感動的だった。が、これがまだ序章でしかないのが凄まじい。

第2の作戦はいづみから父へのメッセージとしてふたりの父親へ「仲直りしていただけないでしょうか?」と訴え、ふたりの握手を求めること。「ごめんな。こいつが意思表示せんと握手はできんな」とおぼんが、「お前が先に折れろ」という悪い癖を“発動”させてしまう。

が、こぼんは事前に「仲直りじゃなくて普通でいいんじゃない?」と言っていたように、「普通に戻りましょうか」と歩み寄る。が、「普通ってなんや?」と頑ななおぼん。

よく歳を取ると丸くなるとかいうけど、実際はそういう部分はあるけど、頑固な部分はより頑固になってしまうもの。それが結婚式という場でも出てしまう。

「性格悪過ぎるわ」「お前がな」「ほら」と往年の漫才かのような、いいテンポで口ケンカするふたり。ついにこぼんが「もうやめましょうか」という決定的なひと言を口にすると、おぼんが「もういい。めんどくさい」と式場を出て行ってしまう。

必死になだめるナイツ。ここから普段温厚なマネージャーが「おぼんさん、ちょっと意地の張り過ぎや。もうちょっと近寄ってくださいよ」「こんな意地張ってどうするんですか!」などと、語気を強め説得に入っていくのに痺れた。

この後も二転三転、ヒリヒリする展開がつづく。普通の番組ならまぁなんだかんだ言ってハッピーエンドに収まるんだろうと思うけど、この番組の場合、これまでもバッドエンドはバッドエンドのまま放送してきたから、このまま「解散」ということになってもおかしくない。

実際、本当に紙一重のところまでいっていたと思う。ナイツも番組成立のことよりもとにかくふたりが漫才をつづけることを第一に、ベテラン芸人の心情の機微を熟知した丁寧な説得をつづけていた。

そして唐突とも思えるタイミングで「俺も入れ替えるからお前も入れ替えや。もういっぺんやり直そう」と手を差し出すおぼん。

それに応えこぼんが手を握る。抱き合うふたり。何が決定打になったのかはわからない。けれど、それが本人たちにしかわからない関係性があることが逆に浮き彫りになっていてリアル。

ついに仲直りし「ホントにオモロい漫才やるんやで! 塙、台本書いてくれ!」と言うおぼんに「ちょっと待ってくださいよ……」と困惑する塙。それに「『ヤホー』のネタちょうだい」とコンビネーションで笑いを生むこぼん。

『ダウンタウンDX』20年目突入&コンビ結成30周年記念を特集した『クイック・ジャパン vol.104』(太田出版/2012年)

スタジオの伊集院も涙を拭い、「同じ方向向いた」と川島が呟く。感極まりながらも「ベースは鬼越トマホークみたいなネタにしようかな」とボケる塙の強さ。塙は説得の際も「まぁ、松本さんとかも書いてくれるかもしれないし」などと、常に和ませることを忘れていなかった。そこで挨拶代わりに即興の漫才をするふたりのカッコよさ。

塙は、テンションが上がり饒舌になってよけいなことを言ってしまいそうなおぼんを「もうもうもうもうなんかこれ以上はまた……また、なりそうだから今のうちに止めとく。今日はこのへんで」と止めるファインプレーも。本当にここはヒヤヒヤしてしまった。

修復不可能と思えるほどこじれた仲をギリギリ保っていたのは漫才で、仲直りした最大の要因も漫才。そして仲直りして最初にしたのも漫才だった。本当に漫才とはいったいなんなのだろうか……。

最後は東洋館で身内や漫才協会の関係者を前に漫才をすることに。楽屋でネタ合わせするふたり。舞台にそろいの衣装で出ただけで、前週、衣装がそろわない「ルーレット」というふざけたフリが利きまくって泣けてくる。マネージャーが幸せそうに笑っているのが本当にいい。

その漫才は19年ぶりに披露するという『献血』。会話のやりとりが濃いネタ。だから「仲直りするときはこのネタって俺はもう決めてたわけよ」とおぼんは言う。そのひと言にずっと仲直りをしたかったんだという心情があふれていた。

「まぁがんばろう」とガッチリ握手し「まぁ、死ぬまでやな」「もう間もなくだ」と笑い合う。その姿はあまりにカッコよく色っぽかった。

喜怒哀楽はもちろん、説明し難い人間の複雑な感情全部が詰め込まれていた。バラエティ、いや『水曜日のダウンタウン』にしかできないであろうドキュメンタリーの大傑作だった。

明日観たい番組:『かりそめ天国』に、ハナコ岡部が復帰など

『かりそめ天国』(テレ朝)2時間SP。ハナコ岡部復帰。

『脱力タイムズ』(フジ)に、ケンドーコバヤシ&勝地涼。

『タモリ倶楽部』(テレ朝)「メモリースポーツで無駄な完全記憶に挑戦」。

『ジロジロ有吉』(TBS)に、マヂラブ&もう中「ワケあって封印したネタ」。

『言葉にできない、そんな夜。』(Eテレ)に、伊藤沙莉、小沢一敬、小森隼、ヒャダイン、吉澤嘉代子。

『ねほりんぱほりん』(Eテレ)シーズン6開始。「女子刑務所にいた人」前編。

『徹子の部屋』(テレ朝)に、鈴木京香。

『A-Stadio+』(TBS)に、小栗旬。

原田知世・主演『スナック キズツキ』『おしゃ家ソムリエおしゃ子!2』(ともにテレ東)開始。

総合演出・全体構成:上田誠『サマータイムマシン・ハズ・ゴーン』(フジ)「リマインド」「あいつのミラクルショット」「乙女、凛と。」。


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    毎夜ライフワークとしてテレビを観つづけ、テレビに関する著書やコラムを多数執筆する、てれびのスキマによる連載。昨日観た番組とそこで得た気づき、今日観たい番組などを毎日更新で綴る、2021年のテレビ鑑賞記録。

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てれびのスキマ

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てれびのスキマ

1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。