我々は「大喜利」から逃げられない。奥森皐月が勧める“大喜利ライフ”の心得|奥森皐月は傍若無人 #6

2021.9.30
奥森皐月

文=奥森皐月 編集=田島太陽


自身のレギュラー番組で「ひとり大喜利」に挑戦するほど、大喜利愛にあふれる17歳のタレント・女優の奥森皐月。大喜利系のバラエティ番組が乱立する今、彼女が伝えたい魅力とは?

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日本人は大喜利に完全に包囲されている

奥森皐月は傍若無人
お笑いマニアであり、“ラジオ変態”を自称するヘビーリスナーでもある奥森皐月

「お笑い」というと、やはり漫才やコントなど「ネタ」の印象が強いだろうか。第七世代という言葉ができてからお笑い番組が急増していると、ここ数年でよく聞くようになった。『M-1グランプリ』や『キングオブコント』の注目度が上がっていることからも、お笑い人気はひしひしと感じる。

ただ、もうひとつ忘れてはいけない大事なお笑いがあると思う。それが「大喜利」だ。わかりやすく、なじみ深く、昔も今も変わらず人々に愛されているお笑い。ここ最近ようやく大喜利の奥深さを理解してきた大喜利ビギナーファンの私なりに、今回は「大喜利」を考えたい。

大喜利が基盤となっているテレビ番組は数多く存在するが、やはり始祖となるものは『笑点』(日本テレビ)だろう。毎週観ていなくても日本人の大半は知っているし、観たこともある番組だ。正直私は「『笑点』を観よう!」と思って観たことはないのだが、それでも日曜夕方にテレビを点けたときに放送しているのをぼんやりと眺めたことは何度もある。日曜日のあのくらいの時間からは、ちょうど翌日が憂鬱に感じるので仕方がない。

放送開始から55年が経っており、日本・世界で最も長く放映されているテレビ演芸バラエティ番組としてギネス世界記録を保持している『笑点』。世界一長く観られているバラエティが大喜利の番組だというのは、なかなか素敵なことだ。大喜利とはどのようなものなのか、学校で習った記憶は一切ないが、おそらくだいたいの人は理解していると思う。人間の遺伝子に最初から大喜利の仕組みが記録されているとは考えにくい。「お題が出る→おもしろいことを言う」という単純な流れが体に染みついているのはやはり『笑点』の影響なのだろうか。

現在主流になっている大喜利スタイルを確立した人物こそが松本人志さんだ。『一人ごっつ』(フジテレビ)で披露されたフリップを用いた回答や、写真から言葉を連想する回答は今や定番となっており、大喜利といえばこの印象が強いと思う。17歳の私は、大喜利はフリップを使うのが当たり前である世界しか見たことがない。1996年に『一人ごっつ』が放送されて作られた新しい大喜利の形が、瞬く間に広まったことがよくわかる。

2021年になってから、『一人ごっつ』のDVDを観たが、「25年前にしては攻め過ぎではなかろうか?」というのが率直な感想。未だにその形式が継承されていることからも、大喜利好きが根強く支持していることが窺える。私も作務衣を目指して大喜利の回答を考える時代を生きてみたかった。

ハマっている大喜利系テレビ番組は『ラヴィット!』一択

2000年代に突入すると『内村プロデュース』(テレビ朝日)や『着信御礼!ケータイ大喜利』(NHK)など、テレビ史に残る大喜利が主体の番組が始まる。バラエティに欠かせないお笑い界のスターたちが大喜利の道を作っていったといえるだろう。同時期に『ダイナマイト関西』も始まり、そして2009年には『IPPONグランプリ』(フジテレビ)が放送開始。大喜利も一種の競技になった。

このあたりからテレビにおける大喜利が絶対的な存在に変化しているように思える。特に、『IPPONグランプリ』は、お笑いファンではない層にも幅広く人気がある印象。放送日の翌日、同級生の男の子数人が『IPPON』の話をしているのを聞いたことがある。「おもしろかったよねぇ!」と心の中の最大ボリュームで言っていたが、会話に入れたことはなかった。

今現在、「大喜利」の要素が含まれている番組は数え切れないほどある。大喜利に明確な形はないため、もはやすべてが大喜利だといっても間違いではない。クイズ番組だって少しズラした回答をすれば大喜利だし、VTRを観る番組でもコメントでボケれば大喜利。我々は大喜利に完全に包囲されている。知らぬ間に大喜利と生きているのだ。逃げられない。

テレビの大喜利企画もかなり多様性が高まってきているように思える。『千原ジュニアの座王』(関西テレビ)、『THE芸人プリズン』(日本テレビ)、『火曜は全力!華大さんと千鳥くん』(関西テレビ)など、番組によってさまざまなスタイルで新しい大喜利が形成されている。ちなみに私が最近ハマっている大喜利系テレビ番組は『ラヴィット!』(TBS)の一択だ。

お笑い好きからすれば、朝から芸人さんのガチ大喜利が観られる最強の番組である。野性爆弾くっきー!さんのお笑いを朝の8時から観られるなんて天国以外の何ものでもない。司会の麒麟・川島明さんの大喜利力も相まって、情報番組ではなくガチ大喜利番組と化している。

『ラヴィット!』のおかげで朝に活力が湧くようになってきた、ありがたい存在。私の父も大のお笑い好きだが、父は毎朝欠かさず『ラヴィット!』を観ている。見取り図の大喜利が一番好きらしい。もしまだ観たことがない人がいたら、騙されたと思って一度『ラヴィット!』を観てほしい。まず初めに、ニュースの要素が1ミリもないことに、笑ってしまうはずだ。

芸人さんの新たな一面を知ることができる大喜利

奥森皐月
奥森皐月インタビューより(写真=山口こすも)

最近は大喜利ライブもかなりアツい。昨年12月より開催されている『AUN~コンビ大喜利王決定戦~』はお笑い好きの間では毎回大盛り上がり。基本的には個人プレーとされている大喜利だが、コンビの大喜利力で戦うこの新しい大喜利は観ていてとてもワクワクする。出演者もお笑いライブシーンでは欠かせないメンバーで構成されており、今一番注目されているライブと言っても過言ではない。

普段のネタをする姿とは違う、芸人さんの新たな一面を知ることができるのも大喜利の魅力だろう。即興で出てくる言葉や言い回しから、人間性や考え方が垣間見えるのはおもしろい。バイク川崎バイクさんのMCも見どころ。8月には『AUN』がテレビ化したことも話題になった。ライブ界隈から大きな広がりを見せていることがよくわかる。このような面からも、今「大喜利」というコンテンツが盛り上がっていることがわかるだろう。

お題「こんな記事は嫌だ、どんな記事?」、奥森の答えは?

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