コンビ大喜利王決定戦『AUN』、Aマッソが紺野ぶるまを挑発し、真空ジェシカとの決勝へ。カオスと化した一部始終

文=原 航平 撮影=時永大吾 編集=田島太陽


8月9日にテレビ朝日で番組化され好評だった『AUN』が、再び超カオス大喜利ライブとして劇場に帰ってきた! 3度目のイベント開催となる今回は、歴代最長の3時間を超える激闘に。

出演者は、2連覇中の真空ジェシカ、連続での出演となるAマッソカナメストーンママタルトランジャタイに加え、初出場のトム・ブラウンサスペンダーズ野田ぶるまちゃん(野田ちゃん・紺野ぶるま)。MCは第1回、第2回に引きつづきバイク川崎バイクが務めた。

観終わったあとには必ず激しい満足感と疲労感に包まれる、お笑い純度100%の芸人の競演をとくとご覧あれ。

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※9月11日(土)20時までの販売が延長されました。視聴は同日23時59分までとなります


「過剰平場」と「真剣大喜利」のせめぎ合い

イベント版としては4カ月ぶりの開催。第3回となる『AUN〜コンビ大喜利王決定戦〜』の趣旨そのものはというと、「ひとつのお題にコンビのふたりで答える」というシンプルなものだ。

MCを務めたバイク川崎バイク「何があっても驚かないでください。そういうライブです」

たとえば『バイトあるある。「1年目あるある」と「26年目あるある」を教えてください』というお題に、ひとりが「1年目あるある」を答え、もうひとりが「26年目あるある」を解答する。大喜利を通してコンビ間の「阿吽(あうん)の呼吸」が試されるというわけだが、ふたつの解答が噛み合っている必要もなく、とにかくおもしろければどんな解答でもいい。

この単純明快なフォーマットとそれによる華麗なる逸脱(※後述)が毎回SNSでも反響を呼び、8月9日にはオードリー司会のもとでテレビ番組化を果たした。華麗なる逸脱は鳴りを潜めて硬派な大喜利番組として生まれ変わり、圧倒的な強さを見せつけて優勝したマヂカルラブリーや、決勝で戦った蛙亭の底知れなさがハイレベルなお笑いバトルを牽引した。

イベント版に立ち返ったときに、やはり言及せざるを得ないのが混沌とした平場のおもしろさだ。シンプルな形式のライブであるがゆえに、芸人たちは逸脱を求める──。というのも、トーナメント形式で行われるバトルでは毎回コンビたちの入場場面があるのだが、そこで芸人たちは、これでもかというほど暴れるのだ。

のちほど詳しく書いていくが、そうした「過剰平場」とでも呼ぶべき逸脱と、時にど下ネタが飛び交いながらも一定の秩序が保たれた「真剣大喜利」とが絡み合うのが、本イベント『AUN』の最大の注目ポイントである。

それでは少し前置きが長くなったが、今大会の名場面をふたつ厳選してレポートする。

2連覇王者・真空ジェシカ「パニックは、これからだ」

第1試合は共に3度目の出場となる『AUN』の顔、真空ジェシカ(ガク、川北茂澄)vsカナメストーン(山口誠、東峰零士)という組み合わせに。一度でもこのイベントを観たことがある人ならば、この並びに悪寒すら感じるはずだ。両者共に、とにかく平場が過剰だからだ。

その予感は的中。2連覇王者の真空ジェシカは、川北が“インフィニッチェ”、ガクが“無ッチェ”の姿で登場。百聞は一見にしかず、画像をご覧いただきたい。

インフィニッチェになった川北
無ッチェになったガク

これは川北のネタ『逆ニッチェ』(ニッチェ江上の印象的な髪型と顔を反転したもの)を発展させたものである。

序盤からのカオス展開に対してMCのBKBは「初めてのお客さんもいるんでパニックになってると思います」とフォロー。それを受けてインフィニッチェは「パニックは、これからだ」と意味深に答えながら会場を沸かせる。まだまだ序章に過ぎないということか。

つづけて登場したカナメストーンとの相性も抜群であり、ある意味最悪。零士は事務所の先輩であるニッチェに怯えながらも、ツッコみ尽くすムーブで奮闘。相方の山口は、インフィニッチェの観念的な被り物を踏み潰してみせた。

台車に乗って登場したカナメストーン

大喜利になると目の色が変わり良解答を連発する真空ジェシカと、大喜利になっても彼ら特有のゆるさが支配するカナメストーンとの切り替えの差が勝敗を分けたか。「内容が気になる『昔話の題名』しりとり」というお題では、ガク「金の国」川北「虹の黄昏」と答えてこの日最初の爆笑をかっさらい、そのまま真空ジェシカがポイントを重ねながら順当に準決勝へ駒を進めた。


Aマッソが紺野ぶるまから掴んだ「決勝に行けるコツ」

トム・ブラウンみちおのお面で登場したみちおと、納言・安部紀克の写真集をPRする布川ひろき

第4試合に登場したのは、今年度のキングオブコントに野田ちゃんと紺野ぶるまのユニットコンビでエントリーするも、1回戦で敗退してしまったという野田ぶるまちゃん。入場時からコンビ間の意思疎通が取れていないような悪い予感が漂うが、その不安な立ち上がりにさらに追い討ちをかけるようにAマッソ(加納、村上)が紺野ぶるまに挑発を仕かける。

「決勝に照準を合わせました」と加納が言うように、これまでの大会であれば平場からAマッソ節全開の大暴れを見せるものの、今回は礼儀正しい様子。そしてすぐに大喜利が始まるかと思いきや、「優勝できるコツだけ見つけてきたんで、発表していいですか」と村上。懐に忍ばせていた紺野ぶるま著のエッセイ集『「中退女子」の生き方』を取り出すのだった。

村上「63ページに決勝に進出するコツ(が書いてある)。それは、『自分は決勝に行けると信じること』」

「ダサーーー!」そう叫び倒す加納と、たまらず舞台からはけていく紺野ぶるま。「2年かけて書いたんですよ、私!」と怒りをあらわにし、白熱する戦いの火蓋は切って落とされた。

紺野ぶるま著『「中退女子」の生き方』を音読するAマッソ、うつむく紺野

大喜利勝負はAマッソが終始リードするかたちで進行。しかし「架空『超有名ハガキ職人のラジオネーム』しりとり」というお題でコツを掴んだ野田ぶるまちゃんが終盤に追い上げを図る。野田ちゃん「松本人見知り」ぶるま「りんか気づいたら54才」、野田ちゃん「なんばらひよったか」ぶるま「かめいしずかすぎない?」など、すかさずBKBが「なんか、全員キサラで働いてるような」と指摘するのもうなずける、ものまね芸人的な方向性で連続ポイント。

「架空『超有名ハガキ職人のラジオネーム』しりとり」の答えを練る野田ぶるまちゃん

一時は7対3まで点差が離れたのが一点差まで詰め寄るも、加納「茶しぶテイクアウト」村上「トータス浜田」で再び点差を広げてバトル終了の鐘。大量得点試合となった接戦をAマッソが制した。

真空ジェシカが3連覇!!

決勝はテレビ版にも出演した真空ジェシカとAマッソが争い、「2on2」という形式の個人戦大喜利に挑戦。一般的な大喜利と同じく、一人ひとりの解答によってポイントが加算される。

川北にぶら下がるイルカは、対戦相手のAマッソ加納愛子著『イルカも泳ぐわい。』に由来する飾り

すべての解答がおもしろい高次元の戦いの末、22対18のスコアで優勝をかっさらったのは真空ジェシカ! 驚きの3連覇! 惜しくも負けてしまったAマッソ村上は「決勝に行くコツは掴んでたんですけど、優勝するコツは(『「中退女子」の生き方』に)書いてなかった……」と悔しさを滲ませた。

優勝した真空ジェシカには賞品として、『クイック・ジャパン』本誌にて8ページ特集&『クイック・ジャパン ウェブ』での連載企画の実施が告げられた。さらに、高級ステーキ肉&国産高級ウニが贈られた。

3連覇を果たし商品を手にする真空ジェシカ。3度目となる『クイック・ジャパン』掲載決定に「もう話すことねぇよ!」

『クイック・ジャパン』の特典は3度目のため、川北は「ざまぁ見ろ、もう話すことねぇよ!」と複雑な心持ち。ガクは「3連覇はうれしいんですけど、この大会の箔は下がってないかなって心配」と本音を漏らした。真空ジェシカは安定感と爆発力が段違いで、やはり王者は強かった。

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原 航平

(はら・こうへい)ライター/編集者。1995年生まれ、兵庫県出身。映画好き。『リアルサウンド』『クイック・ジャパン』『キネマ旬報』『芸人雑誌』『メンズノンノ』などで、映画やドラマ、お笑いの記事を執筆。 縞馬は青い

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