大学生のせいや「岡村に元気もらってる」。甘酸っぱい青春を感じた『霜降りバラエティ』(てれびのスキマ)


テレビっ子のライター“てれびのスキマ”が、昨日観た番組を記録する連載「きのうのテレビ」。2020年から毎日欠かさず更新中。

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『霜降りバラエティ』

初心を取り戻すためコンビ結成当時の20歳の石川(せいや)、19歳の佐々木(粗品)に戻り想い出のシーンを完全再現する企画「大阪リベンジャーズ」。それを見守るのは大阪時代からの盟友ミキ。

佐々木がピン芸人2年目、石川がまだ近畿大学2年生のころの2012年、元サッカー部で常にユニフォームを着ていた石川と、ボーダー好きで髪の毛はボサボサだった佐々木。

佐々木がコンビ結成を誘ったスシローに。絶妙につまらない大学生ノリの会話をするふたり。さらに「岡村に元気もらってる」と素人らしく呼び捨てで語る石川。佐々木は「お前、岡村になれる。俺、矢部になるし」と返し、コンビ結成を持ちかける。

その前年、正式にコンビを組む前にインディーズライブで漫才を披露していたが、石川は教師を目指しており、大学でも観光研究部の活動に熱中していたため、芸人になることには懐疑的。

ダウンタウンが大阪で天下取るまで実は6年かかっているという話に。「俺ら組んだら6年以内でいけるかな?」と石川。佐々木「いけるやろ」、石川「やってみる?」。

ここからさらに石川はしばらく迷った末に佐々木とコンビを結成したという。

舞台は2013年、結成して間もなくの佐々木の自宅へ。夏の大イベント前にオーディションで落選して落胆するふたり。霜降り明星もミキも客票では1位なのに作家票が低く「納得いかない」と愚痴る。

そんなふたりが当時のラテ欄を見ることに。「今日の『シャバダバ』おもしろそう!」「『ガキ使』大悟さんの七変化や!」などと言い合う。このとき、大悟は歴代5位(現在8位)になる好成績を収める。そのあと、2019年せいやが同企画に出演し4位(現5位)に。そういうことを思うとグッとくる。

「いつか『天才てれびくん』とか出てみたい」という佐々木に「出れるか!」とツッコむ石川。これにモニタリングしているミキは「出んねん! お前のせいで出れなくなんねん!」「急遽、あんたらの助っ人で俺らが出るようになんねん!」とツッコミ。

なんだか甘酸っぱい青春の感じが出ていてとてもいい企画だった。特に当時に戻ったテイでラテ欄を見るというのは、それだけ独立させて、もっと長い時間で、いろんな人でも観てみたい良企画だった。

『100分 de 名著』

ル・ボンの『群衆心理』を武田砂鉄と読み解く第1回。

「身につまされ過ぎて自分はカメラの前で何を白状しているのだろうって」と伊集院が最後に語ったように、『群衆心理』を読みながらかなり明け透けに芸能人としてのあり方を明かしていた。

テレビで求められるのは「おもしろい話」や「悲しい話」であるのに対し、ラジオでは「おもしろ悲しくて、ちょっと酸っぱくて臭えなあ」といったような複雑な感情が入り混じる話をするという伊集院。

けれど記事などになるのはその「おもしろい部分」か「悲しい部分」のどちらかだけになってしまったりする。そのことで「話してることと伊集院光像みたいなものが離れていくのはしんどくないですか?」と聞かれ、「しんどいですよ。ただ逆にそれで得た名声もポッケ入れてるだろ、お前って。それは自問自答の毎日。匿名で悪口言うのはよくねえじゃねえかってあんまりタレントが思い切り胸張って言ったときに、僕は匿名の善意にもものすごく支えられてるので、たとえばラジオにネタを送ってくれる人とか──。匿名が悪いではない」と語る。

フランス革命で指導的立場として活躍したロベスピエールが、最初は「正しいこと」を貫いていたはずが、いつしか「権力者を倒す人」になっていき、やがて暴走した結果、自らも処刑される末路を迎える。それに自分を重ねる伊集院。

「自分なんかは学生時代に孤独をこじらせていたから、ラジオで人気が出始めたときに『伊集院さんは毒舌を言う人だ』って評判になった。あれ、ちょっと待て。俺は『俺の思ったことを言う人』だったはずで『毒舌言う』って目標でラジオをやってた覚えはない。だけどもう止まらない。俺は新たな毒舌を言う人っていう“群衆からのフィードバック”にあってた」。

まわりの人と合わず孤独になっていった人が、その孤独な自分の考えをそのまま言ったら支持をされ、仲間ができる。だが、いつしかその“仲間”によって自分の理想像が形成され、それに自分が合わせていってしまう。それに抗うことは難しい。

「あんなに嫌いだった、そういう連中から弾かれて始まったはずの自分が、その居心地のよさから出れなくなる感じは、俺ゾッとするほどわかる」。


明日観たい番組:『ダウンタウンDX』「ウチの事務所のウラ側丸裸SP」など

『アメトーーク!』(テレ朝)今田耕司、土田晃之、古坂大魔王、アルコ&ピース平子、鬼越トマホーク坂井、神宮寺しし丸で「キックボクシング芸人」。

『かまいガチ』(テレ朝)「芸人界最強ラッパーを目指せ!!」。

『ダウンタウンDX』(日テレ)「ウチの事務所のウラ側丸裸SP」ウエストランド、ザ・マミィ、陣内智則、東京ホテイソン、ぺこぱ、マヂカルラブリー。

『アウト×デラックス』(フジ)ビッケブランカ。

大学お笑いMONSTERS』(テレ東)「漫才部門」「スゴ芸部門」。

『NEWニューヨーク』(テレ朝)「飯知らんグルメ」 。

『オドぜひ』(日テレ)「パワポカラオケ頂上決戦」。

『川島・山内のマンガ沼』(日テレ)花沢健吾。


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  • 【連載】きのうのテレビ(てれびのスキマ)

    毎夜ライフワークとしてテレビを観つづけ、テレビに関する著書やコラムを多数執筆する、てれびのスキマによる連載。昨日観た番組とそこで得た気づき、今日観たい番組などを毎日更新で綴る、2020年のテレビ鑑賞記録。

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てれびのスキマ

1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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