「ゴミ捨て場から拾ってきたものがかっこよくなってる!」
石野 で、このアルバム(『Box Frenzy』)ね(笑)。出たときにこれの何がすごかったかっていうと、当時サンプラーとかが出てきて、ロックバンドとヒップホップの融合っていって、ランDMCがエアロスミスとやったり(「Walk This Way」、1986年)とかっていうのあったじゃない。それのイギリス的解釈というか、それにもっとDIY精神があるっていうか。
瀧 いいとこはいただきっていう(笑)。
石野 で、それがすごくて。当時のイギリスだと、ボム・ザ・ベース(※12)とかさ、エス・エクスプレス(※13)とかさ、シカゴハウスがイギリスに行って生まれたイギリス版のアシッドハウスのサンプリングにはアナーキーな感じがあって。(ポップ・ウィル・イート・イットセルフは)それをまさにバンドとしてやってて。ギタリストとかもいるんだけど、バンドのメンバーの中にDJがいたりとか。
瀧 編成がとにかく変わってるというかね。それこそ前回のデペッシュ・モードを見たときに、ボーカルとあと全員シンセでマルチトラックのテープが置いてある、みたいな編成にも衝撃を受けたんだけど。(ポップ・ウィル・イート・イットセルフは)ぱっと見たときに、ギター持ってるやつもいるし、DJブースもあるしっていうので、ちょっと持ってかれる感じがあったよね。
石野 その影響を受けて、「何も持たない」っていう。山崎方式で「何も足さない、何も持たない、何もしない」っていう(笑)。
瀧 「もう死体でよくね?」っていう。
石野 「生きてる死体」だ。ゾンビ的な(笑)。
瀧 「生きてる死体」いいな。
石野 腐らないっていう。
瀧 腐らないって時点でゾンビ超えだもんな(笑)。
石野 日持ちするぞっていう(笑)。長期の輸送でも持つから、ツアーとかにもちょうどいい。まあ、それはいいわ(笑)。(ポップ・ウィル・イート・イットセルフは)ビースティ・ボーイズ(※14)とかの影響もあるんだよね。明らかにアメリカのヒップホップのグループとかとは違ったのがサンプリングソースで、俺がびっくりしたのが、「Hit the Hi-Tech Groove」(1987年)って曲があるんだけど、そのアダム&ジ・アンツ(※15)のサンプリングを聴いたときにどえらい衝撃を受けて。「そこありなんだ!」っていう。アダム&ジ・アンツとか、俺は中学生のころに聴いてて、そういうのはもう卒業したと思ってたんだけど、「それが使える」ってなったときに、自分が今まで持ってたレコード棚のレコードが全部楽器になる──。
瀧 素材になるっていうね。
石野 パッカーンって開いた感じ。
瀧 だからサンプリングってさ、JB(ジェームス・ブラウン)のブレイクビーツを持ってくるとかさ、クラシックなところ、レアグルーヴから持ってきて再発見するわけじゃん。
石野 ファンクとかそういうのが多かったんだけど──。
瀧 そうじゃないっていう。
石野 ゴミから拾ってくる、みたいな感じ?
瀧 「去年の『ジャンプ』から」みたいなさ(笑)。
石野 しかもこれに入ってるシングルで、これなんだけど。「Love Missile F1-11」。これはジグ・ジグ・スパトニック(※16)のカバーなんだよね。ジグ・ジグのオリジナル(1986年)がそんな立ってないっていうかさ、あれはジョルジオ・モロダー(※17)なんだけど、大風呂敷を広げた徒花みたいな感じがあったから。その再評価があるなんて俺は全然考えてなかったから、それをさらにかっこよくカバーしてるっていう衝撃と、さっきのアダム&ジ・アンツハンズっていうさ、「ゴミ捨て場から拾ってきたものがかっこよくなってる!」っていうさ。
瀧 いじり半分みたいな感じもあるよね。
石野 まあ、酔っぱらいのバンドだから。それがやっぱすごい斬新だったっていう。
※12 ボム・ザ・ベース(Bomb the Bass):エレクトロニック・ミュージシャン、ティム・シムノンのステージネーム。「Beat Dis」(1987年)などのヒットで知られる。
※13 エス・エクスプレス(S’Express):1988〜1994年に活動した、アシッドハウスの代表的なグループ。代表曲は1988年の「Theme from S’Express」、「Superfly Guy」など。
※14 ビースティ・ボーイズ(Beastie Boys):1981年、ニューヨークシティで結成されたヒップホップグループ。前進はハードコアパンクバンド、ヤング・アボリジニーズ(The Young Aborigines)。
※15 アダム&ジ・アンツ(Adam & the Ants):1977年、ロンドンでアダム・アントを中心に結成されたニューウェーブバンド。シングル「Stand and Deliver」(1981年)などがヒット。ポップ・ウィル・イート・イットセルフは同曲を「Hit the Hi-Tech Groove」でサンプリング。
※16 ジグ・ジグ・スパトニック(Sigue Sigue Sputnik):1982年にロンドンで結成されたニューウェーブバンド。1986年のシングル「Love Missile F1-11」、「21st Century Boy」などのヒットで知られる。
※17 ジョルジオ・モロダー(Giorgio Moroder):1940年生まれ、イタリア出身の作曲家、プロデューサー。1970年代のディスコを代表するプロデューサーとして知られている。ジグ・ジグ・スパトニックの「Love Missile F1-11」はジョルジオ・モロダーがプロデュース。
関連記事
-
-
天才コント師、最強ツッコミ…芸人たちが“究極の問い”に答える「理想の相方とは?」<『最強新コンビ決定戦 THE ゴールデンコンビ』特集>
Amazon Original『最強新コンビ決定戦 THEゴールデンコンビ』:PR -
「みんなで歌うとは?」大西亜玖璃と林鼓子が考える『ニジガク』のテーマと、『完結編 第1章』を観て感じたこと
虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会『どこにいても君は君』:PR -
「まさか自分がその一員になるなんて」鬼頭明里と田中ちえ美が明かす『ラブライブ!シリーズ』への憧れと、ニジガク『完結編』への今の想い
虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会『どこにいても君は君』:PR -
歌い手・吉乃が“否定”したかった言葉、「主導権は私にある」と語る理由
吉乃「ODD NUMBER」「なに笑ろとんねん」:PR