24年間売れない芸人・神宮寺しし丸が、世の中をうまく生き抜く方法を伝授する本連載。
今回は、しし丸と深い関係にある先輩、劇団ひとりが東京2020オリンピックの開会式に出演したことを受けたコラム。劇団ひとりの芸人、そして人としての素晴らしい生き方を語る。
愛弟子(?)が語る、劇団ひとり論
皆さん、オリンピックの開会式観ましたか? 出てましたねー! 劇団ひとりさん! 僕にも数人から連絡があり、「知ってたの?」と。知りませんでした。家族にも言ってなかったそうです。「水臭いぞ!」と言いたくなるところですが、それが劇団ひとりなんです。基本的には誰も信用してないんだと思います。特に僕なんて絶対誰かに喋るし、下手したら週刊誌に売るし(笑)。
ということで今月は、劇団ひとりさんとは「師弟関係」を超えて「肉体関係」が噂される間柄の、わたくし神宮寺しし丸による「オリンピック出演記念!劇団ひとり論」をお送りしたいと思います。
芸人としての美学と、ズルさのない生き方
「ズルさがない」
これはタレントをやる上で、「面白さ」や「華」や「清潔感」よりも重要です。今のネット時代、些細な嘘やズルがすぐにバレてしまいます。するとたちまち袋叩きに遭ってしまいます。隙あらば小ズルく生きようとする僕なんかにはなんとも過酷な時代となりました。その点、我らが劇団ひとりさんには全くズルさがないんです。
ある日、ひとりさんから「しし丸の家に荷物置いといても良いか?」と言われました。「いいですけど、荷物ってなんですか?」と訊くと、「ラブドール(大人のお人形)を買おうと思ってるんだ。凄い良い子を見付けてさ。本当にリアルで可愛いんだ」とキラキラした目でおっしゃいました。
僕は引きましたが、そんなことは顔に出さず、「なるほど! それは欲しいですね!」と答えました。ひとりさんはそれを家とは別に借りてる仕事部屋に置いておこうと思ったそうですが、「もし俺に事故とか万が一の事があって、家族が遺品整理に来て、そこでラブドールが出て来たらまずいだろ?」と。ラブドール買う時って死まで考えなきゃいけないのかぁと思いつつ、「確かにそれはまずいですねぇ」と。「だからしし丸ん家に置かせてくれよ。たまに使ってもいいからよ」と誇らしげに言うひとりさん。僕はさらに引きましたが、「ありがとうございます!」と答え、ラブドールが届くのを待つことに。
しかし、一向にラブドールは届きません。そのことをひとりさんに尋ねると、「あれさ、やっぱ買うのやめたんだぁ。さすがにラブドール買ったはテレビで話せないだろ」と。僕が「テレビで話さなきゃ良いじゃないですか」と言うと、「それはできねぇなぁ」とひとりさん。
ここです! ようやく来ましたズルさがないポイント!
ひとりさんはラブドールを買ったら、そのことをテレビで話すべきだと言うのです。超プライベートな買い物の話なんてする必要はないのですが、それを芸人として良しとしなかったのです。ラブドールの話はテレビにはそぐわないし、深夜の『ゴッドタン』で話せたとしても、さすがに嫁が聞いたらブチギレるだろうと。ということで、ラブドール購入を諦めたそうです。このラブドールの一件に、ひとりさんの芸人としての美学とズルさのない生き方を見たのでした。
【教訓】
ズルさのない生き方を目の当たりにしたとて、隙あらば小ズルく生きようとするのが人間という生き物です。そこで最低限気を付けておきたいことは、ズルや嘘がバレた時に誤魔化さないことではないかと思うのです。
一番恥ずかしいのは、ズルや嘘がバレることではなく、それを隠そうとしたり無かったことにしようとする姿です。
例えば、デートの食事中にオナラが出てしまったとします。それを「あれ? この椅子なんか変な音するなぁ」などと言って椅子をギコギコさせる。この姿こそが見てられないのです。オナラが出たら速攻で「今の音は私のオナラであります!」と立ち上がって大声で宣言しましょう。