昭和のインチキおじさんたち(ランジャタイ国崎)


インチキNo.2『おもちゃのバンビマン』

ミニ四駆が大ブームになったとき、各おもちゃ屋で休日になるとミニ四駆の大会が行われていた。

自分で作ったミニ四駆を持って、

友達と「おもちゃのバンビ」というおもちゃ屋で、ミニ四駆の大会に参加した。

大会優勝者は豪華商品というのがあり、

なんと『賞金』と『プレイステーション』が貰えるというのだ。

当時のプレイステーションは、大変高価で子供ではなかなか手がとどかない。

それが優勝するともらえる。

さらに賞金まで!

まさに子供の夢みたいな大会だった。

僕は一回戦でダメだったけれど、

友達は大健闘して、決勝にまで進んだ。

各地区の凄腕の少年たちが集う決勝は、最高に盛り上がろうとしていた。

そして、いよいよレースがはじまる瞬間!

「「「「「待て〜い!!」」」」

という声がした。

「そのレース、ちょっとまったああ!!」

覆面を被った、謎の男が店の奥から出てきた。

「私はバンビマン!!」

「よく決勝に進んだな!!!」

「今回は直々に、このワタシが、決勝レースに参加してやる!!!」

絶対に店員だった。

店員が、覆面マスクを被って、

「バンビマン」だと名乗り

飛び入りで参加してきた。

ただ現場は、バンビマンの登場に

『なんだお前ー!』

『バンビマンー!?』

『あ、ミニ四駆持ってる!!』

意外にも、盛り上がった。

そして、バンビマンから衝撃の発言が。

「私が優勝したら、賞金とプレイステーションは私のものだあ!!!」

『、、、ええーっ!?』

『なんだよそれー!』

『おかしいだろ〜!』

皆からブーイングが出る。


あんなにウェルカムだったバンビマンが、一気に嫌われだした。

そりゃそうだ。

覆面を被った店員が、

賞金とプレイステーションを没収しようとしている。

「さあ!私に勝てるかなあ!?この、バンビマンスペシャル(ミニ四駆)にぃ!!!」

バンビマンは当たり前のように、レースの位置についた。

『おい!こいつ!』

『ふざけるなよぉ』

『ダメだろー!』

みんなで叫ぼうにも、

他の店員もグルなので、

「たいへん!頑張ってね!」と

誰も止めようとしない。

『負けるなー!!」

『いけいけー!!』

『がんばれ〜!!』

レースはさらなる盛り上がりを見せる。

もうどの地区から来たとか、違う学校だからとか知らない子だからとか、関係ない。

少年たちvsバンビマン だった。

決勝レースは白熱した。

地域も学校も、すべての壁を越えて、

みんな一つになって、声をあげた。

『いっけー!!』

『負けるなー!!』

『いけいけいけー!!』

『ぶっ倒せー!!!』

全員を応援(バンビマン以外)して

全員のミニ四駆(バンビマン以外)に声援を送り

勝利を願った(バンビマン以外)。

そんな決勝レースは

バンビマンのミニ四駆がぶっちぎりだった。

信じられないくらい速いバンビマンのミニ四駆は、他のミニ四駆を大きく引き離して

ぶっちぎりで爆速した。

コースを爆速する「バンビマンスペシャル」は、ボディ全体が黒いのもあり、でかいゴキブリが走っているように見えた。

ものすごく速いゴキブリが、他のミニ四駆を大きく引き離していく。

よく考えたら、

モーターチェック(反則のモーターを使ってないか)をしていない。

マシンの電池確認(反則の電池を使ってないか)もしてない。

何もチェックされていない。

今爆速で走っている

「バンビマンスペシャル」は、

おそらくすべての反則をマシンにつぎこんだ

すべてのドーピングを許された、

最強のミニ四駆。

少年の夢を壊す、ゴキブリの怪物だった。

「ゴーーーーール!!!」

優勝は、ぶっちぎりで「ゴキブリの怪物」。

「残念だったなあ君たち!バンビマンの勝利だ!」

バンビマンは勝ち誇り、

「また君たちの挑戦を、バンビマンは心待ちにしているよ!!!」

皆があっけにとられる中、

「それじゃあ!また!!!」

バンビマンは、優勝賞金とプレイステーションを抱えて、店の奥に引っ込んでいった。

あまりの出来事に、

誰も止めることができなかった。

バンビマン。

いきなり現れる、謎の男。

理不尽に少年たちの夢を食い破る、

恐ろしい覆面の怪物。

次にバンビマンが現れるのは

君の街かもしれない、、!

インチキNo.3『ヨーヨー検定』

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