「好きな番組は、大きな声で好きだと言わないといけない」奥森皐月が“マヂクリゾンビ”になるまで|奥森皐月は傍若無人 #3

2021.7.4

文=奥森皐月 編集=田島太陽


お笑いマニアである17歳のタレント・女優の奥森皐月は、『勇者ああああ』(テレビ東京)の放送終了を受けて“勇者ああああゾンビ”と化していた。4月から、同じくテレビ東京でスタートした『マヂカルクリエイターズ』に救われたが、この番組も最終回を迎えてしまい、“マヂカルクリエイターズゾンビ”と化すまでを書き綴る。

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『勇者』終了の穴を埋めてくれた『マヂクリ』

『すイエんサー』(Eテレ)にレギュラー出演中の“勇者ああああゾンビ”奥森皐月

2021年3月、私が愛してやまなかった番組『勇者ああああ』が終了した。好きで好きで、初回から毎週欠かさず4年間観ていたため、突然のお別れに深いダメージを受けたのは記憶に新しい。しばらくは心にぽっかりと穴が空いたようで、過去の録画を観返す“勇者ああああゾンビ”と化した私。「女の子と楽しくゲームをしよう選手権」を何周したことか。ところが、その悲しみはほんの一瞬の出来事となった。

4月より同じくテレビ東京にて、『勇者ああああ』と同じスタッフ陣の制作でスタートした『マヂカルクリエイターズ』。この番組が、『勇者ああああ』終了で空けられた穴を見事に埋めてくれた。瞬く間に、隙間なく埋まった。

「マヂラブのふたりがさまざまな芸人や各界の有名人と力を合わせてエンタメコンテンツを粗製乱造する」がテーマの番組だが、実際はお笑いライブを拡大したかのような内容。悪ふざけの延長の、濃厚お笑い企画が毎週放送されている。

『勇者ああああ』では、ゲーム番組と言いつつ脱線してふざけてしまう空気が心地よかった。『マヂカルクリエイターズ』はその楽しかった部分も残りつつ、新たに大胆な要素がいくつも加わっている。自分で自分が信じられないくらい、あっという間に乗り換えてしまった。気がつけば、『マヂカルクリエイターズ』の虜。

今回私は「『マヂカルクリエイターズ』が好きだ」ということを大声で叫びたい。

胃もたれするほどのキャスティングで「お笑いとは何か?」を問う

『マヂカルクリエイターズ』最大の魅力は、地上波とは思えない企画とキャスティングだと思う。5月17日・24日に放送された「漫才のようなもの王」はその最高潮であった。

昨年末の『M-1グランプリ』で優勝したマヂカルラブリーが生んだ「漫才か、漫才じゃないか」論争。しかし、お笑い界にはもっと漫才じゃないネタをする芸人さんがいるということで開催された、この大会。

モダンタイムス/5GAP/シューマッハ/ガクヅケ/虹の黄昏/Groovy Rubbish/ランジャタイ/にゃんこスター

ひと目見ただけで、胃もたれするほど味の濃いこのメンバーが一度に集結する夢の企画。天空闘技場よりも、天下一武道会よりも興奮できる闘いだ。

放送前からとても楽しみにしていたが、本編を観ると想像を上回る壮大な展開が巻き起こっていた。この大会では「おもしろくない」「何を言ってるかわからない」「ネタ見せできる作家が事務所にいない」「イオンモールでウケそう」などの審査項目が設けられている。これらがきちんと点数に反映される制度が作られていることにまず感動した。漫才じゃない度合いを数値化できる画期的なシステム。

いざネタが始まると、小道具を出してきたり、音楽が流れたり、衣装を着たり、と恐ろしいほど漫才じゃない行動を見せつけられる。センターマイクの前に立つ、という当たり前の景色が壊されていく。浅草の劇場に漫才を観に行くお客さんがこの放送を観てしまったら、泡を吹いて倒れていたことであろう。

何より狂気を感じたのは、ランジャタイによる『ウッチャンナンチャン』のネタ。ウッチャンナンチャンの似顔絵のお面を被った国崎さんがメロディーに乗せて「ウッチャン」「ナンチャン」のふたつの単語を繰り返すだけのネタだ。相方の伊藤さんに至っては、ひと言も発さない。お笑いがボケとツッコミで形成されているなんて考えは、今すぐ可燃ゴミに出すべきだと思う。2021年最も話題になったライブ『マヂカルラブリーno寄席』が地上波で再演されているようで、興奮が止まらなかった。

しかし、いくら観ていてもネタが終わらない。20分ちょっとの番組なのに5分間ずっとこのネタの映像が流れた。途中からはただ怖いだけだった。後半は画面の向こう側が見えたが、最後まで観るとなぜだか達成感すら覚える。ランジャタイがしっかり出禁の措置を取られていたところまでセットで、ひとつの作品のようであった。

失格となった出場者も多数いたなか、ガクヅケのネタに対して野田クリスタルさんが「漫才でもないしコントでもないしお笑いじゃない」と言い放った場面は印象的だ。

漫才か、漫才じゃないかの企画から「お笑いとは何か?」という深いテーマまで進んでいく。最後に披露されたマヂカルラブリーの『つり革』からは、王者の貫禄と漫才の真髄が見えたのではないだろうか。お笑いってすごい。


『マヂクリ』に意味を求めてはいけない

『りぼん』(集英社)の「りぼんガール」としても活躍する

4月19日放送「擬人化アイドルをプロデュースしたいよ~!」の回はもはやただの新宿バティオス。ママタルト、真空ジェシカ、ダイヤモンドという最高以外の言葉が見つからない面々が集結した。ほぼ「お笑い大喜利」である。おもしろい。それぞれがテーマに沿った擬人化アイドルとなり、オズワルド伊藤さんMCの架空アイドル番組に出演するという企画が進められたこの回。文字にしてしまうとまったく意味がわからない。

現に、番組を観ていても内容は頭に入ってこなかったが、ライブのようなお笑いが許される空間がとても素敵だった。真空ジェシカ川北さんが00年代のネット用語を出すたびに「懐かしいなぁ」という空気が流れる。視聴者のターゲットがかなり絞られる内容だ。残念ながら世代はまったく違う私だが、楽しいことに変わりはない。

ちなみにこの回で野田さんは「擬人化の擬人化」「擬人化の始祖」ゴール様というキャラに扮しており、顔面すべてを布で覆っていたため一度も顔が出なかった。始祖なのにゴール様という名前。夢に出てきてしまいそうな、気味の悪いビジュアル。
わからない。意図も理由もわかるわけがない。『マヂカルクリエイターズ』に意味を求めてはいけない。

時代に逆行したゲーム「問題発言ひょっこりはん」

『マヂカルクリエイターズ』のトレンドといえば「問題発言ひょっこりはん」だ。

忙しくて「野田ゲー」が作れない野田さんに変わり、企画を考えてくれる人を探す「家来オーディション」をした際に、ZAZYさんが発表したこのゲーム。ルールは至って簡単。壁からひょっこりして、何かひと言を発するZAZYさん。その内容が問題発言だったときだけ銃で撃つというものである。

このゲームが、とにかくおもしろい。フェイントが挟まりながら、問題発言が出てくるというハラハラ感がクセになる。楽し過ぎて永遠に観ていられるし、自分も銃をテレビ画面に向けながら遊ぶことができた。「TVerになかったからYouTubeで観たよ」というフレーズが地上波で流れるという、嘘のようで本当のお話。

5月31日の放送では「問題発言ひょっこりはん」が、ZAZYさん、野田さん、サツマカワRPGさん、令和ロマン・松井ケムリさんの4人に増えた。世間がこれだけ炎上に対して敏感になっているのに、時代に逆行して問題発言をするという潔さ。カッコいい。

『問題発言ひょっこりはんライブ』があれば絶対に観に行く、最先端のキラーコンテンツだ。この回の最後には村上さんもひょっこりするのだが、ほかと毛色の違う問題発言が止まらなくなる。結局一番ヤバいのはこの人なんだな、と痛感させられた。優しいピンクのカーディガンに騙されてはいけない。

低予算でコンテンツを量産しようという番組の根本の考え方が、いわゆる「テレ東っぽさ」全開でとても魅力的だ。そこにM-1王者マヂカルラブリーのおもしろさがぴったりと合っているように思える。ほかの番組ではなかなか観られない野田さんの暴れっぷりと、村上さんの静かなサイコを存分に味わえる唯一の番組であろう。

お笑いブームと言われる昨今、さまざまなお笑い系番組が増えているが、ここまで地下お笑いやライブに寄り添っているのは『マヂカルクリエイターズ』だけかもしれない。

クイズ作家さんがクイズを出題している間に特技のモノマネを披露する、というジャンル分けができない新しいお笑いが次々と出てくる。お笑いが好きな人であれば、今観るべき番組。毎週何かしらの衝撃を受けることができると思う。

私の愛の叫びが届いて、番組を観る人が増えたらいいな


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奥森皐月

(おくもり・さつき)女優・タレント。2004年生まれ、東京都出身。3歳で芸能界入りし、現在は『にほんごであそぼ』『すイエんサー』(共にEテレ)にレギュラー出演中。『りぼん』(集英社)の「りぼんガール」としても活動している。『おはスタ』(テレビ東京)に「おはガール」としても出演していた。多彩な趣味の中..

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