「テレビを観ると頭が悪くなる」という定説を覆す、私の実績
物心ついたころにはダウンタウンさんやさまぁ〜ずさんのバラエティ番組はすべて観ていたし、子供に見せたくない番組ランキング常連だった『ロンドンハーツ』も欠かさずチェックしていた。
今思えばどれも絶対に未就学児が観るべきではないのだが、私はバラエティや芸人さんを観ている時間がこのころから大好きだった。2009年に野性爆弾さんで笑う5歳が完成したのは、両親の素晴らしい教育の賜物である。
ちなみに、7歳のときの好きな男性のタイプはピース又吉直樹さんだった。小説を書く前の、コントでバケモノの格好をしていたころの又吉さんだ。これに関しては早熟過ぎる気もする。
家のテレビでお笑い以外が流れることはまずなかった。念のため記しておくが、ドラマを観ると殴られる、というようなシステムだったわけではない。蹴られていたわけでもないので安心してつづきを読んでほしい。
テレビを観ると頭が悪くなる、という考えがあるが私はそれを覆す実績を持っている。
バラエティ番組ではおもしろい発言がテロップに出るが、それらは当然子供向けではないので漢字にルビは振られない。漢字が読めない年齢でテレビを観ていると、芸人さんが発した言葉が漢字で表示されるので無意識のうちに漢字を覚える。
これが功を奏した。学校よりも先にテレビから漢字を学んでいたので言語の理解が早い。その結果、国語が大好きになった。今こうして文章を書く仕事ができているのも、テレビを観て漢字や国語が楽しくなったのが影響しているかもしれない。まったく関係ないかもしれない。
同級生が『アナ雪』ごっこをする横で、私は『アルピーANN』に思いを馳せた
小学校高学年からはハイピッチでお笑いにのめり込んでいった。
2015年、三四郎さんのネタを観たときに「この人たちはヤバイ」と、直感がいい働きをしてくれた。ANN0を担当していると知り、すぐに聴き始める。これが自分からラジオを聴いた初めての体験だ。今まで観てきたお笑いと深夜ラジオの世界が、まったくの別物だということはすぐに理解できた。
これほど自由な世界があるのか、言ってはいけなさそうな言葉を言いまくっているぞ、ハガキ職人はカッケェな……と触れるものすべてが新鮮で、感動を覚えた。そこからはラジオ漬け生活。『アルコ&ピースのオールナイトニッポン』、JUNK、『有吉弘行のSUNDAY NIGHT DREAMER』を順番に聴き始め、見事にすべての番組にハマった。
小学4年生というものは宇宙一時間が有り余っているので、平気で1日8時間くらいラジオを聴いていた。同級生が『アナ雪』ごっこをする横で、『アルピーANN』のサイコメールに思いを馳せていた。
一を知ってしまうと、十も百も千も知りたくなる。ラジオから派生して芸人さんを好きになったり、より若手のお笑いを観るようになったり、地下お笑い界に魅了されてしまったり。調べればなんでも出てくる時代なので、四六時中お笑いの情報収集をしていた。虹の黄昏さんのツイッターも見ていた。
好きな芸人さんは挙げ切れないほどいるが、特に熱中したのがメイプル超合金のカズレーザーさんとAマッソの加納さんだ。このおふたりへの愛は以前も記事に書いたが、私の考えや趣味に多大なる影響を与えてくれた。気を抜くと赤い服を着て、突飛なワードと鋭い関西弁でツッコミを入れてしまうくらいには、自分の中にふたりの考えは染みついている。
固定観念を捨て、自分の道を開拓していく姿はいつまでも憧れの存在だ。魅力に気づくと、その人の「お笑いが好き」、から「その人が好き」になっていることがしばしばある。
私は誰かを笑わせることはできないけれど
「お笑いに救われた瞬間はありますか?」という質問をたまに受けるが、これは本当に難しい。楽しい日もつらい日も、同じように毎日お笑いを観てきた。正直に答えると、救われた瞬間はない。常に救われている。
笑わされるという現象は不思議だ。自分の感情や意識とは関係なく、「おもしろい」と感じると無意識に口角が上がり笑い声が出る。これを作り出し、人を笑わせるというのはどれだけ力がいることなのだろう。
目に見えない力の素晴らしさと偉大さに、思わずため息が出る。常に新しいかたちで「おもしろい」を提供してくれるお笑いの仕事はかっこいいし、絶対に自分にはできないことだから心酔する。
しかも、お笑いは楽しいだけではない。数え切れぬほどお笑いから学んだことがある。その人が経験してきた、成功や失敗、楽しみも苦しみも「おもしろい」というフィルターを通った状態で知ることができる。くだらないの中に、さまざまな想いがあると気づいたとき、お笑いがもっと好きになった。
高校生の私には、目標がたくさんある。タレントとして売れること、ラジオパーソナリティになること、やりたい仕事をできるようになること、プリキュアになること、はもちろんだが、最近はもうひとつ目標ができた。
それは、お笑いの楽しさを人に伝えていくこと。
私は誰かを笑わせることはできないけれど、笑わせてくれる素敵な人たちならいくらでも知っている。最高におもしろいのに、知名度が伴っていない人たちが劇場には大勢いるのだ。お笑いライブでは、『アメリカズ・ゴット・タレント』でゴールデンブザーが押されたときくらい客席がウケて盛り上がる瞬間もある。阿佐ヶ谷ロフトの『ガクヅケのあつあつ新ネタやりやり配信ライブ』とか。
この楽しさを味わっているのが、劇場にいる数十人のお笑いファンだけだなんてもったいないと思ってしまう。「おもしろい」を共有したいという純粋な気持ち。価値観を押しつけるつもりはない。
おもしろい人は全員、世間に注目されてほしい。おもしろいことだけで生活できるようになってほしい。
今は蚊の鳴くような声しか出せていないけれど、私はこれが全国民に届くくらいの大きな声にしていきたい。
届けたい気持ちを、まずはこの連載にぶつけることにする。
誰になんと言われようが好きなことを書きたい、まだ未成年だし。 若くて、青くて、勝手なくらいが今の私にはちょうどいいかもしれない。奥森皐月は傍若無人。
「奥森皐月は傍若無人」は毎月1回の更新予定です。
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