<不仲コンビ>コウテイ「本気さが感じられへん」激情のラップ対決(てれびのスキマ)


昨日観た番組とそこで得た気づき、今日観たい番組などを毎日更新で綴る、てれびのスキマによる2020年のテレビ鑑賞記録。


『有田ジェネレーション』

「ファンキージェネレーション」企画に「不仲」コンビといわれるコウテイ。「ここまで来たのは誰のおかげやと。僕が全部ネタ書いてるんですよ」と九条が言えば、下田も「ほな、ピン芸人で売れてみろや」と返すなど、冒頭からバチバチのふたり。

だが、いざバトルが始まると感情を込めて不満をぶつけていく九条に対し、下田はしっかりとフロウに乗って「カスボケ死ねアホ お前にこの4文字お似合いです」「お前とおったらおもんない 正直何にも懸けたくない お前にそこまで愛がない」とちゃんとしたラップで返す。

これに九条は「ラップすんなや!」「そんな安っぽいライムだけで入って来ぇへんねん!」と叫ぶ。企画の根底を崩す、けど観る者の心に響くひと言。「もっとたぎるもん全部出せ!」「それで寄り添ってM-1一緒に獲るねん!」「ラップに逃げんなや!」と。

それでも「人をナメてることですかね 下に見てることですかね なんかちゃんと対等に見てない そういう潜在意識が抜けてないんです あなたから漂うオーラまるでオーガ お前とおったら俺が死ぬわ」とラップ調で返す下田に「韻踏むなや!」と九条。有田らは「この状況でちゃんと(ラップ)できるのスゴい」と感嘆。この攻防、同企画屈指の名勝負だったダイアンに匹敵するおもしろさ。

「うまさを見せに来たわけじゃない。本気のやつくれよ」となおも言う九条に、「じゃあ、今言おうか?」と普通に話し始める下田。

「ホンマにええ相方やと思うで。でもお前から本気さが感じられへん。まだワシを道具やと思ってる。『コイツとやったらM-1で負けても悔しくない』と思ってほしい。『コイツのせいで負けた』って若干思ってるのが伝わってくる。だから優勝しなくてもいい。ふたりでこれからずっとやっていこう、それだけでいい。あんま重圧だけかけんといてくれ。それさえなければ最高の相方や」。

九条はこれを遮るように「ちょっと音もらっていいですか?」とバトルを再開、自分も以前とは違って対等に見ていると訴える。だったら、なぜネタ合わせのときに遅れるんだと問う下田に、九条は走り幅跳びでも助走が必要だと言い、最後に「俺が跳ぶ お前はそのドリンクを出せ!」と締める。

これを聞くと、「出たな、最後に本音が。『ドリンクを出せ』」「ザ・補助要員の感じ」と下田。これは失言だったことを認めた九条は「最強のコンビだ 代わりもいない 納言安部みたいな奴らじゃないだろ!?」と矛先を変えると、下田も「確かにそれはそうやな」と“共通の敵”ができたことで結束。安部vsコウテイの展開に。

ふたりの息の合った口撃を浴びて「ちょっと……強いですね」と安部。その後、“覚醒”する安部含め、最高におもしろい回だった。

『たりないふたり2020~春夏秋冬~秋』(後編)

引きつづき「私、山里亮太はいかにして若林正恭より“下に”成り下がったのか?」を山里が若林にプレゼン。前編では基本聞き役に徹していた若林だが、後編では反撃を始める。

「山ちゃんのクセだけど、自分のツッコミの才能で数多いるツッコミ芸人を傷つけてることは自分で気づかないじゃない? 気づかないフリしてるじゃない?」「山ちゃんのツッコミって本当に芸能界一だと思ってるんだよね、今も。おもしろいことを言いそうなままで終わっちゃうタレントを拾わせたら一番。ただ、ボケは大したことない」「常識があるぶん、ボケの振り(幅)は小さいよね。『コイツ、頭おかしいじゃん』とか『コイツ、狂ってんなあ』って思ったことは一度もない」とクリティカルにエグる山里評をしていく。

さらに「人間ってみんなそうで、得意なことと不得意なことを持ち合わせてる。全部が完璧な人間っていないじゃない?ってことを未だに知らないってことは、人生経験が足りてない」とキツい一言。

2014年ごろから若林が飲み会を否定しなくなり、キューバや北欧に行き、それまで嫌っていたことをやり始めて戸惑ったと山里。そのころからラジオなどでは「山里」と呼び捨てにしたり、「あいつ」と呼んだりすることが多くなったと指摘。若林は「自分が下なのよって下を取るくせに、上に乗ると『上には乗るなよ!』ってわけわからないよ!」と山里の狡猾さを笑いにまぶせてツッコむ。

「『たりないふたり』の漫才の時間って、どっかにある劣等感が聞こえなくなる瞬間があるのよ。劣等感がなくなってる漫才の相手に、劣等感を持ってる自分が気持ち悪いの」と訴える山里。対して「小学校低学年の子たちを集めた野球チームの監督」をやったほうがいいと提案する若林。

「なぜ?」と問われると、「ホントに、ごめんね。そのまま言うけど」と前置きし「自分の話が多過ぎる! もうチームとか共演者とかスタッフ全体とか背負っていく立場じゃない?」と若林。自分の置かれた立場に向き合いながら物の見方を「現実」に合わせて変えていった若林と、頑なにその目線を変えないことで「幻想」を守る山里。どちらも魅力的だが、そこにシュートを仕かけていく若林に痺れる。 


今日観たい番組:『あちこちオードリー』(テレ東)に日向坂46

『ロンドンハーツ』(テレ朝)は「実は相方が答えてました!芸人お悩み相談」。

『霜降りバラエティ』(テレ朝)は「せいやの親友と遊びたいねん!!」。

『イグナッツ!!』(テレ朝)は「Creepy Nuts武道館ワンマンライブ記念スペシャル」。

『あちこちオードリー』(テレ東)に日向坂46。

『チマタの噺』(テレ東)にピーコ。



  • 【連載】きのうのテレビ(てれびのスキマ)

    毎夜ライフワークとしてテレビを観つづけ、テレビに関する著書やコラムを多数執筆する、てれびのスキマによる連載。昨日観た番組とそこで得た気づき、今日観たい番組などを毎日更新で綴る、2020年のテレビ鑑賞記録。

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てれびのスキマ

1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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