どれだけ華々しく売れても、苦しいことも心が折れることも多いはずのアイドルの仕事。それなのにどうして、人はアイドルに夢を見るのだろう。今、まさに“売れる“最中にいるアイドルの素直な声を聞いてみた。
山口県で生まれ育ち、子供のころからアイドルを夢見ていた橋本桃呼。レッスンを重ね、テレビ朝日『ラストアイドル』のオーディションに参加。自信に満ちあふれたパフォーマンスが評価され、シングル表題曲「愛しか武器がない」でラストアイドル2期生のセンターとして華々しくデビューした。
しかし夢半ばでグループの活動は終了。それから「高嶺のなでしこ」として再デビューを果たすも、「アイドル向いてない、って思います」と彼女は言う。
目次
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「キラキラしたアイドル」への憧れ
──アイドルに憧れたきっかけは?
橋本 もともとアイドルが好きとか目指していたわけじゃなくて、漠然と「芸能界に入りたいな」っていう思いは自分の中でありました。「芸能界に入るためにはどうしたらいいんだろう」って考えたときに、お姉ちゃんがすごくアイドルが好きで、「一緒に受けよう」って言って受けたのが始まりです。
──お姉ちゃんはどういうアイドルに憧れていたんですか?
橋本 お姉ちゃんがハロプロ(ハロー!プロジェクト)さんが好きだったので、ハロプロさんのオーディションとかをよく観てて。私も最初はいろんなオーディションを受けさせていただいたんですけど、ハロプロ研修生も経験させていただきました。
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──それは小学生のとき?
橋本 中学2年生ぐらいのときです。
──それまでも人前で歌ったり踊ったりするのは好きだったんですか?
橋本 好きでしたし、劇とかあったら絶対に立候補するぐらい目立ちたがり屋な女の子だったと思います。
──まわりの友達とか家族から見ても、オーディションに参加するのは自然だったというか。
橋本 「たぶんこの子はアイドルとかそういう系を目指してるんだろうな」みたいなのは、きっとまわりから思われてたと思いますね。
──アイドルという仕事のどういうところに惹かれたんですか?
橋本 本当に小さいころはすごくキラキラしてて、みんなから憧れられるような存在になれるのってすごいことだなと思ってて。単純に好奇心というか「キラキラしてるの、いいなあ」みたいな気持ちでした。
──そこからハロプロ研修生になって、東京と地元を行き来していた感じですか?
橋本 そうですね、行き来したりとか。あと大阪にもレッスン場があったので大阪にも行って。そのとき中学2年生だったんですけど、山口からひとりで行ったりとかしてました。
──その時期は楽しかったですか?
橋本 始めたばっかりでレッスンもきつかったですし、「こういう感じなのか」みたいなのは感じましたけど、すごく勉強になる時間だったなって思います
──そこで初めて歌やダンスのレッスンを受けたんですか?
橋本 社交ダンスは少しだけ習ってたことはあって、ほかのアイドル系のダンスとかは未経験でしたし、歌も未経験だったので。習わせていただくのはハロプロ研修生が初めてでした。
──まわりにも同じようにアイドルを目指す仲間もいた?
橋本 はい、いました。
──一緒にアイドルを目指す仲間と、将来の話をしたりしたんですか?
橋本 そのときはデビューがやっぱり一番だったので。研修生っていう立場だったので、「早くアイドルになりたいな」みたいな気持ちでした。
「私のせいで、幸せにならない方もいるんだな」
──そのあとの歩みもお聞きしたいです。
橋本 そのあとは、ハロプロ研修生には本当に3カ月ぐらいしかいなかったので全然、私はペーペーなんですけど、そこから一回芸能界はちょっとあきらめようかな、みたいな。山口からの距離が遠かったっていうのもあっていろいろ悩んだんですけど。せっかくなら、もう一回チャンスがあるなら受けてみたいなと思って『ラストアイドル』を受けました。
──あきらめようかなと思ったのは中学生のころ?
橋本 中学3年生の始まりぐらいで、ちょうど受験期だったので。私がバカだったのでお母さんが心配して、アイドルの道はいったんあきらめて受験勉強するかどうするか、みたいなときに『ラストアイドル』のオーディションを見つけて。チャンスかなと思って。ラストアイドル2期生のオーディションを受けました。
──「ラストアイドル」に入って、そこでの経験はどうでした?
橋本 本当にはっきり言うとけっこうつらかったというか。5年くらいラストアイドルで活動してたんですけど。バトル形式のアイドルだったので、そもそも私が入ったのも、バトルで勝ち上がって、センターを勝ち取って入った2期生なので。テレビで放送してましたし、たくさんの方からいろいろな意見をいただくことが多くて。
その意見が15歳の私には苦しかったというか。新幹線でけっこう泣いてました。
──SNSとかメディアで、自分の言葉や振る舞いがいろんな解釈をされるじゃないですか。
橋本 なかなか10代の子供にとっては普通の経験ではないですよね。アイドルを始めるときに「いろんな人を幸せにしたいな」とか「笑顔にしたいな」って思って入ったんですけど、実際自分がバトルに勝って2期生としてデビューしたときに「私が入ることによって幸せにならない方もいるんだな」っていうのを感じてしまって。
負けた子のファンの方だったりとか、私が勝ってしまったことによって嫌な気持ちになった方もいらっしゃるんだなっていうことに、ショックを覚えたというか。幸せにしたいと思って入ってきたけど、そうではなかったんだなっていう現実がちょっと自分には苦しかったな、って思う経験でしたね。
──どうやって消化しました?
橋本 今でも正直消化しきれてない部分はあるんですけど。でもよく「壁にぶち当たったときどうしますか?」みたいなことを聞かれるんですけど、ぶち当たったときに私はその壁を越えるんじゃなくて、その壁を受け入れられるようになるまで待つ、っていうのが自分のスタイルだなと思っていて。
私も、高嶺のなでしこに入って、過去のことに「あの経験があったから今の自分がいるな」っていうのをすごく感じてるし。「あってよかった経験だな」っていうのは思います。
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──ほかの人から自分がどう見られているかを気にする性格ですか?
橋本 もともとは全然で。本当にただただ目立ちたいとか、「山口県の中で自分が一番かわいいでしょ」って本当に思ってたんですけど(笑)。
実際いろいろな経験を重ねるうちに、やっぱりアイドルをするとまわりにすごくかわいい子たちがいっぱいいるし、特にバトルだけじゃなくて、ラストアイドルで本当にいろいろな企画をさせていただいて。選抜制とかもあったので、どんどん自分に自信がなくなることもけっこう多くて。それも経験しながら今の私が形成されていったなっていう感じですね。
──自信がなくなる、というのは具体的にどういう部分ですか?
橋本 選抜制度がラストアイドルのときは3回ぐらいあったんですけど、最後の「Break a leg!」しか私は受かってなくて。あとは選抜外のメンバーだったので、そのときはけっこうこたえてましたし、人生の中でもドン底だったなって思います。
──なかなか選ばれない、というときにパフォーマンスなのか自己表現の仕方なのか、自分で足りていないと感じた部分は?
橋本 「すべて足りてなかったのかな」って今になって思います。
あのときは一生懸命で、「なんで自分が受からなかったの?」とか「こんなにパフォーマンスもがんばってるのに」って思ってる部分も正直あったんです。でも今になったら「足りてなかっだろうな」って思います。
本当は誰よりもネガティブで繊細「何度も泣いてます」
──今は人から自分がどう思われるかも気にしますか?
橋本 めちゃくちゃ気にしますね。バカみたいに気にします(笑)。たぶんメンバーの中で一番の気にしいだと思います。
それぐらい取材とかでも、絶対スタッフさんのことを見ちゃったりとか。「今の発言、大丈夫だった?」とか、全部に目が行っちゃう人なので。人一倍感情に敏感というか繊細なタイプだと思います。自分で言うのはなんか恥ずかしいんですけど(笑)。
──それは仕事で関わるスタッフさんやメンバーにも?
橋本 けっこう、人の感情を読み取っちゃうタイプです。なんか超能力みたいに言っちゃった(笑)。
──メディアを通して見られる橋本さん自身の姿もけっこう気にしますか?
橋本 めっちゃ気にしますね。もう本当に人からの見られ方しか気にしてないんじゃないかっていうぐらい、本当に気にしいだし。だから、私けっこうエゴサするタイプなんですけど、エゴサしたときにちょっとチクチクな言葉があるときも、1カ月ぐらいずっとそのことを考えて落ち込むぐらい気にしいです。
──大変じゃないですか?
橋本 たぶんこの性格のせいで自分を出せてないなって思う面もあるので。でも、なんかこれも自分のよさなのかなって思いつつ、がんばってます、最近は。
──それはステージが上がるにつれて、ますます大変になりますよね。
橋本 今でもきついです。収録終わったあとに何度も泣いてます。ダメだったなって毎回反省して泣いて。で、また出て反省して泣いてみたいなのの繰り返しです、毎回。今まで自分が「いいな」と思ったこと、一回もないかもしれない。
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──けっこうネガティブですね。
橋本 バカネガティブですよね。めっちゃネガティブです、たぶん。でもポジティブに見えません?
──見えます、見えます。
橋本 ですよね、言われますよく。
──しゃべり方とかオーラですかね?
橋本 「明るいタイプだね」ってよく言われるんですけど、根はたぶんめっちゃネガティブです。
──昔からそうでした?
橋本 アイドルになってからかもしれない、ネガティブになったのは。
──もともとは根がポジティブだったけど、アイドルになってからは、振る舞いがアイドルになったけど、中身がネガティブになった。
橋本 そうですね。
──それはなんでだと思いますか?
橋本 いろいろな経験をしたからだと思いますね。でもこれが別に悪いこととかじゃなくて、きっとこの性格のおかげでいろいろ見えることもあるし、この性格が活かされてることもあると思うので。それに関しては全然悪いことだとは思ってないんですけど。
いろんな経験をしてきたし、昔の自分が憧れてたようなキラキラしてるアイドルの一面もだし、そうではなくつらかったり自信をなくすような出来事があったから今の自分ができてるなって思います。
ひとりでも、応援してくれる人がいるなら
──そのあとアイドルを続けるのか別の仕事をするのかって、どれくらい考えていました?
橋本 本当に私の中でラストアイドルが青春だったし人生だったので。中学生から始めて、高校の3年間もですし、すべてラストアイドルに捧げてきたし。学校も通信制に変えたりとかして、山口県から毎日ホテル暮らしして通ってたので。
終わるってなったときは「え、どうしたらいいんだろう」みたいな。本当に次のことを考えるっていうより、一緒に活動してきたメンバーと離れるのも悲しいし「本当にどうしたらいいんだろう」みたいな感情しかなくて。
でも次のことを考えたときに「向いてないんじゃないかな」とは思ってて、アイドルが。自分の中ですごく自信がなくなる出来事もたくさんあったので、向いてないんじゃないかなって思って、アイドルを一回あきらめようとは思ってました。
──一回アイドルが終わって、高校を卒業して、何者でもない19歳になって、ほかの仕事をしようとは思いました?
橋本 考えてましたし、そのときから美容には興味あったので、なんか(化粧品売り場の)美容部員の求人サイトとかを見て「働けないかな」みたいな。「未経験歓迎って書いてる!」みたいなのとか、けっこう見てました。
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──そこからなぜ、もう一度アイドルに?
橋本 高嶺のなでしこの加入のお誘いをいただいたのもそうですし、「アイドルしてる桃呼ちゃんをもう一度見たい」とか、「待ってるね」って言ってくださる声も大きくて。
実際、本当にラストアイドル時代も何度も「あきらめよう、辞めよう」って思ったんです。けどそういうときに救ってくださったのは本当にファンの方々だったので、そのファンの方々のためにもアイドルをしたいなと思いましたし。
ひとりでも私のことを好きで「まだ応援してたいよ」って言ってくださる方がいるなら、もう一度やってみたいなって思いました。
橋本が選んだ、「高嶺のなでしこ」としてのアイドル再挑戦への道。そこで初めて得たものとは? 第2回の動画&インタビュー記事は近日公開予定
高嶺のなでしこ
『JDOL AUDITION supported by TIF』の最終合格者7名と、2022年5月31日に活動を終了した「ラストアイドル」の元メンバー3名(橋本桃呼・松本ももな・籾山ひめり)、計10名によって2022年8月に結成。サウンドプロデュースはクリエイターユニットHoneyWorksが担当。高嶺の花のように多くの人から憧れられ手に入れることのできない、そして大和撫子のように日本女性の清楚な美しさとかわいらしさを持った、誇り高きアイドルグループを目指す。2022年11月には、HoneyWorks「可愛くてごめん」の公式カバーMVをYouTubeに公開し、2,000万回再生を突破(※)。数多くのオリジナル曲もリリースし、TikTokの総再生回数は2億回を超える(※)。2024年2⽉21⽇(⽔)ビクターエンタテインメントより『美しく⽣きろ/恋を知った世界』にてメジャーデビュー。2024年12月11日(水)に2ndシングル『I’M YOUR IDOL/アドレナリンゲーム』をリリース。ツインプラネット所属。
※2025年1月現在
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『高嶺のなでしこ ワンマンライブ 2025 〜Cute for life〜』supported by KOJI
2025年2月14日(金)
会場:国立代々木競技場第二体育館
OPEN/START:16:30/18:00関連リンク