年間100本以上のお笑いライブに足を運び、週20本以上の芸人ラジオを聴く、20歳・タレントの奥森皐月。
今月は、10月12日放送『キングオブコント2024』決勝戦に出場するファイナリストと、決勝には進めなかったが奥森が熱烈に応援している芸人について熱く語る。
目次
「1年でひと組しか優勝できない」事実がつらい
『キングオブコント2024』のファイナリストが発表された。ファイナリスト10組のうち半分の5組は昨年から2大会連続決勝進出。cacao、ダンビラムーチョ、シティホテル3号室の3組以外は決勝経験者という強者ぞろいの顔ぶれだ。
「今年こそ優勝してほしい」と思う組ばかりで、1年でひと組しか優勝できないという当たり前の事実がつらい。それに梅田サイファーのリリックが尽きてしまわないか少し心配になる。
これまでの傾向としては初決勝で優勝するパターンが多かったが、決勝常連組がここまで増えると展開が予想できない。おもしろいコント師が大量に発生しているのに対し、ファイナリストの枠が狭すぎるのかもしれない。
芸歴制限がないため、数年後にはそれまでに優勝を逃した人たちだけで10組が埋まることになってしまうのではなかろうか。レベルが高いことは素晴らしいが、突如出てきた若い人が勢いそのままに優勝するような展開も賞レースの醍醐味だ。
しかし昨年のサルゴリラは初決勝かつ史上最年長優勝だったため、芸歴制限が設けられることが正解ではないと感じる。
ラブレターズは、13年前からずっと大好き
昨年7年ぶりに決勝の舞台へ返り咲いたラブレターズが今年も決勝に進出したのは、個人的にはとてもうれしい。
私が初めてラブレターズを見たのは、13年前の『キングオブコント2011』だ。『西岡中学校』のネタで心をつかまれて以来、ずっと大好き。
決勝進出発表後のコメントで「初めてファイナリストになってから干支1周も過ぎてしまったのでいいかげん優勝したい」と話していて笑ってしまった。
昨年大会では、9番手のサルゴリラが『ルールマジック』で大爆発した直後、ラストの出番順で結果は6位だった。5回目の決勝進出となる今年、ネタ順も含めて期待が高まる。
“今年こそ”のコンビ、ニッポンの社長
同じく5回目の決勝進出となったのがニッポンの社長だ。その上5年連続という史上初の記録。昨年はファイナルにも残ったため、まさに“今年こそ”のコンビだ。
東京に進出し、劇場にテレビにと活躍しているなかで決勝に残れるというのは、本当に凄まじい実力だと感じる。
先日放送された『水曜日のダウンタウン』での大会「インフォマ-1GP」で披露していたネタもおもしろかった。審査員の面々から「ニッポンの社長ワールド」「いつもどおりのネタ」などとコメントされていたのが印象的だった。
それぞれの人柄やネタの世界観が広く認知されるようになってきた今、どのような結果になるのか楽しみだ。
や団の決勝ネタは、1年経っても忘れられない
「3度目の正直」を目指す、や団も見逃せない。
や団のネタはどれも好きだが、昨年決勝で披露していた『演劇の稽古』のネタは特に感動した。1年経っても「タウマゼイン」の響きと、美しく完璧に回るガラスの灰皿は忘れられない。
あそこまで洗練されたネタを披露したすぐ翌年にまた決勝に進めるというのは、もはや恐怖すら感じる。
余談だが、ファイナリスト記者会見で(ロングサイズ)伊藤さんが本間(キッド)さんの腹部を殴って倒し、担ぎ上げながら「こいつ捨ててきますわ」と言い放つくだりがすごく好きだった。
それを受けたMCの小籔(千豊)さんが「望んでないねん」とツッコミを入れたところまでセットでツボにはまり、YouTubeで繰り返し再生してしまっている。「捨ててくる」という、見たことないお笑い。
SNSの優勝写真が待ち遠しい、ファイヤーサンダー
ファイヤーサンダーの決勝進出もうれしかった。『ABCお笑いグランプリ』の王者であり、さまざまな賞レースで活躍しているコンビだが、『キングオブコント』は昨年が悲願の初決勝だった。
2023年大会で披露した『日本代表メンバー発表』のネタは、ファイヤーサンダー特有の切り口とクセになるフレーズで最高のネタだった。「クプクドゥブフ」も「総合的判断」も、頭から離れないし言いたくなる。
いつどのライブでコントを観てもおもしろく、実力者であることに間違いはないため、ぜひ優勝してその名をより広く轟かせてほしい。
2019年ごろから﨑山(祐)さんが決勝前にお寿司の写真をSNSに投稿し“ファイナリスト匂わせ”をしていたのもお笑いファンの中ではおなじみ。
当日まで決勝メンバーがシークレットだった謎の時代を越えて、今年はファイナリストTシャツを身にまとってお寿司を持っている写真を堂々と載せていた。優勝したときに赤いジャケットとお寿司の写真が見られるのが待ち遠しい。
決勝経験組はもちろん、結成5年目のcacaoや、タイタン初のKOCファイナリストとなったシティホテル3号室、昨年の『M-1』ファイナリストであるダンビラムーチョと初決勝メンバーもバラエティ豊かだ。
誰が優勝するかまったく見当がつかない、今年の大会は絶対に見逃せない。
歴代王者同士が褒め合う貴重なPodcastも必聴
そして今年の『キングオブコント』を盛り上げるため、TBS Podcastでは『カーネクストpresentsキングオブコント2024 王者特番 サルゴリラとコントの怪物たち』が期間限定で配信されている。昨年王者のサルゴリラのおふたりが、コントについてじっくり話す特別番組。
初回ゲストの空気階段とサルゴリラのトークがとてもよかった。#1は高円寺芸人の集いとなって、高円寺トーク多めで温かい雰囲気がPodcastらしく楽しい。先輩後輩という関係性と、ラジオに慣れているふた組ということで、4人から漂う温度感が心地よかった。
寄席と賞レースでのネタの違い、優勝ネタの裏話など、この番組だからこそ聴けるディープでマニアックな話題がおもしろい。互いに対する質問や意見もコント師ならではの視点で、タイトルどおり「コント」に特化した番組だ。
歴代ファイナリストの好きなネタを話すパートでは、それぞれが好きなネタや大会を熱く語って共鳴しているところがたまらない。空気階段の(水川)かたまりさんが芸歴1年目で目の当たりにした、決勝舞台のバイきんぐについての話がおもしろかった。
ここのパートはチャンピオンとしての言葉ではなく、純粋なお笑い好きとしての愛と熱量を持ったトークだったのがグッときた。「あのネタすごいよね」「あの年、最高だよね」というやりとりは聴いているだけで元気になれる。
サルゴリラの優勝ネタに対する空気階段の感想も聴き応えがあった。特にマジックのネタについて、もぐらさんが「マジックをディレクターに見せる、という設定がすごい。なかなかその設定にはたどり着けない」というようなことを言っていて、素人目線では気づけないところを深掘りしていておもしろい。
かたまりさんも「シンプルに見えてめちゃくちゃ難しいネタ」と評していて、芸人さんから見てもすごいネタなのだということが伝わった。
チャンピオン同士が褒め合うのは、ほかの番組では聴くことができない貴重な時間。期間限定ということでいつまで配信されるのかはわからないのだが、お笑い好き・コント好きは必聴のPodcast番組だ。
惜しくも敗れたダウ90000
鉄壁の『キングオブコント』ファイナリスト10組に対し、今年のエントリー総数は過去最多の3139組。勢いのある芸人さんからベテランや過去のファイナリストまで、惜しくも敗れてしまった組も当然数多くいる。
今年の準決勝メンバーの中で、特にダウ90000は決勝に進出すると思っていたので、結果に正直驚いてしまった。たった数年前までは「若くて人数の多い劇団のような集団」というぼんやりとした認識であったが、日に日にパワーアップしていて、今や現代のお笑い界を牽引するグループとなっている。
蓮見(翔)さんの快進撃は言わずもがな、最近は各メンバーのメディア出演に園田(祥太)さんの『座王』優勝など目まぐるしい活躍だ。個人事務所設立もあり、唯一無二の存在でありながら最先端でもある。
ここ最近で私が一番好きなYouTubeチャンネルは『蓮見水族館』の一択だ。蓮見さんがのびのびしていて楽しそうな上に、メンバーの特性やおもしろさがよく伝わってくる。「スンスン」とのトーク動画や、エチュード企画を観れば観るほど、お笑いグループとしての強さを思い知らされるのだ。
YouTubeで公開されているダウ90000のラジオ『ダウ90000900000000』もおもしろい。準決勝の結果報告をする回も、より応援したくなる気持ちを掻き立てられるいいラジオだった。
10月からはダウ90000がパーソナリティのラジオがJ-WAVEで始まるのでそちらも注目しよう。そろそろ『キングオブコント』決勝の舞台でもダウ90000が観たいと思う。
惜しかった好きな芸人さんを挙げ出したら本当の本当にキリがないが、サスペンダーズも来年こそは決勝に進出してほしいと強く思う。今年の決勝もまだなので気が早すぎるが、好きがゆえにすごく残念だった。
あとひとつの願いとしては、ななまがりの優勝をいつか観たい。
自分が後悔しないくらいには応援したい
応援することと「おもしろかった」と声を上げることは、やらないよりはやったほうがいいと思う。
お笑いが好きなだけの人間に特別な力はないが、いざ本当におもしろい芸人さんが引退したり解散したりする場面で「もっとライブに行っていれば」「もっとおもしろいと言っておけば」とよぎることがある。
その自分の声がなんの足しにならなかったとしても、少なくとも自分が後悔しないくらいには応援したいと思う。独りよがりだし、自己満足でしかない。でも、それが趣味だし。
多くの芸人さんが悔しさを味わい、それだけしのぎを削った闘いの決勝戦が「テレビで」「無料で」観られるというのは、ありがたすぎるくらいの恵みだと思っている。
観ないという選択肢はない。みんなで“最高到達点”を見届けよう。
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