“次にスカートがやらなきゃいけないこと” 澤部渡&「生きる伝説」牧村憲一対談

2020.2.2

文=松永良平
トップ画像=スカート「CALL」


“今聴くべきはスカートだ”。

音楽好きの間でそうウワサになったのは数年前の話。今やその存在感はすっかり浸透し、2020年で活動10周年を迎えた澤部渡。

アニバーサリーイヤーとして多くのライブやリリースを控えている今、2016年に恩師・牧村憲一と行った対談を掲載。学生時代のエピソードから、スカートの原点を振り返る。

※本記事は、2016年5月7日に発売された『クイック・ジャパン』vol.125掲載の記事を転載したものです。


ポップス師弟対談:学生時代の澤部渡

スカートは、日本の良質なポップスの水脈をしっかりと受け継いでいる。はっぴいえんど、シュガー・ベイブ、ムーンライダーズ、ピチカート・ファイヴ、フリッパーズ・ギターetc、の曲が好きなら、いま聴くべきはスカートだ―――という仮説を確かめるために、スカートが師と仰ぐ“日本ポップス史のゴッドファーザー”にご登場いただいた。

――おふたりの関係をひもとくと、澤部くんが昭和音楽大学の3年生だった2008年に牧村さんが<ポピュラー音楽概論>という講義を担当されることになって、その授業で受けた衝撃が大きかったと聞いてます。

牧村 後期の第1回目の授業で、ドビュッシー、ラヴェル、サティをポピュラー的な側面から見るという講義をやってみたんです。そしたら、次の週から出席してる生徒の数が増えていったんです。

――澤部くんも、すでにその授業の単位は取得済みなのに潜り込んだそうです(笑)。

牧村 覚えてますよ。椅子をひとりで何人かぶん占めそうな体型の青年がいるのが見えた(笑)。澤部くんは4年生になってもあの授業に来てたね。

澤部 授業になじめないし、友だちもなかなかできない、楽しくない日が続いてました。それでも3年になるころには友だちも増えてきてやっと大学が楽しくなりました。1年のときに必修で受けたポピュラー音楽概論は高田先生という方が講義されていて、今日は『サージェント・ペパーズ(・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド)』を全曲聴きますとか、楽しかったんです。その高田先生のあとを引き継いだのが牧村さんで、音楽にもっと興味を持てるようにきっかけを作ってくれたんです。その講義は1限目だったので遅刻者もいて、時間通り出席した学生にはスペシャル・サーヴィスがあって、ゴダールの短編映画を見せてもらったこととか、すごくよく覚えてます。

――牧村さんは澤部くんと当時交わした言葉は覚えてらっしゃいますか?

牧村 澤部くんとは、彼の1学年上で、今はプロのミュージシャンとして活動しているBabiの世代の卒業制作時に会ってました。あの世代からかわいがられていて、よくスタジオにいたんです。レコードマニアと聞いたので、「これは知らないだろ?」と思うような70年代や80年代の音楽について聞くと、困ったことによく知ってるわけですよ(笑)。それと音楽と同じくらいコミックの知識も豊富でした。

澤部 (笑)。

牧村 澤部くんが4年になって僕が卒業制作を担当することになってからは、「編成とか制作の裏方に回って仕事したほうが知識を活かせるんじゃないかな」って、ずっと言ってたんです。

澤部 そうでしたね(笑)。

牧村 勧めなかったのが、ミュージシャンになること(笑)。でも、本人はあのころすでに「世に出られるなら出てみたい」と思うようになってたんじゃないかな。彼が人の目を盗むようにして大学のスタジオでアルバムの作業を進めてるのを見てましたよ。

澤部 そうですね。大学時代に作った『エス・オー・エス』(2010年)というアルバムを自主で世に出して、世の中がどう反応するかで今後は決めようと考えてました。そしたら、松永さんが日記で書いてくれたり、いろんな反応があって。

スカート「エス・オー・エス」

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松永良平

(まつながりょうへい)1968年熊本県生まれ。ライター/編集。著書『ぼくの平成パンツ・ソックス・シューズ・ソングブック』『20世紀グレーテスト・ヒッツ』『コイズミシングル』(小泉今日子ベスト・アルバム『コイズミクロニクル』付属本)、編著『音楽マンガガイドブック』、翻訳書にテリー・サザーン『レッド・ダ..

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