【第1回】窪塚洋介 「反戦」「平和」の真意(2003年12月収録)
25年を超える『クイック・ジャパン』の歴史の中でも衝撃を呼んだ記事のひとつに数えられる、2003年の師走に行われた窪塚洋介ロングインタビュー。彼がよく発していた「ポジティブ・チューニング」という言葉は話題になり、その思考は議論を呼び多くの若者に影響を与えた。第1回のインタビューでは、映画『GO』(2001年)の出演によって「社会的な視点」が加わったことを、「地球維新」や「ポジティブ・チューニング」というキーワードを交えて語っている。
【第2回】窪塚洋介 「環境=神様」なんです(2003年12月収録)
【第3回】窪塚洋介 世界が変わる仕組み(2003年12月収録)
【第4回】窪塚洋介 「真理」に触れた体験を語る(2003年12月収録)
窪塚洋介が面白い。
2003年はいろんな所から窪塚洋介の噂を聞いた。夏場のレイヴ・パーティの会場、ダライラマの来日スタッフ、環境イベントの主催者、精神世界系の人、平和運動家、ネット・サーファー、B-BOY。つまりそれだけ窪塚洋介は様々なフィールドで暗躍していたということになる。
そしてある日、僕の所へクイック・ジャパン編集部から電話がかかってきた。窪塚洋介の特集を進めていく中で、インタビュアーとして窪塚本人から僕の名前が挙がったという。窪塚洋介は、99年に僕が書いた小説『グラウンディングミュージック』(リトルモア刊)を読んでくれていて、気に入ってくれているという。僕は彼の映画の視聴者、彼は僕の小説の読者という関係である。好奇心が頭を擡げた。
取材前夜まで、窪塚洋介はあいかわらず芸能マスコミを賑わせていた。その報道と彼の本心の間にはギャップがあるであろうということは容易に想像できた。しばらく前からネット上では、窪塚の様々な発言がスレッドとして増殖していた。僕は、自分自身の目で、窪塚洋介の頭の中を見極めたいと思った。
結論から言うとインタビューは想像をはるかに超えた面白いものだった。窪塚洋介の世界は、知的な冒険心と探究心に満ちていた。無邪気な遊び心とクールな観察眼を持ち合わせていた。彼の発言は、連想ゲームのように次々とジャンプした。術語やニューエイジのキーワードを説明なしに、会話に挿入してくる。隠喩的表現を多用する。ヒップホップ的なスラングを織りまぜながら、主語を抜いて、なおかつ語尾の断定も避けてしまう。
それを活字に落とし込む作業は難儀だった。彼の発言を分かりやすく組み立て、また、すべてのキーワードに脚注をつけてみた。すると意味不明に聞こえていた言葉のジャンプが、メタフィジックに結びついていることが分かった。彼は自分の言葉で体験を正直に話しているだけなのだ。 前口上はこのぐらいにして、そろそろはじめよう。ではみなさん、窪塚洋介の世界にチューン・イン!
「自分自身でブレーキをかけてるところがあった」
――ロング・インタビューということですので、なるべく自由に話してもった方がいいと思うのです。どうせなら、他の雑誌でやらないところまでいきたいと思います。いったい今、窪塚洋介がどこに向かっているのか、みんなが知りたがっているからね。この1年、窪塚洋介はいろんなメッセージを発信している。たとえば、社会に対して「地球維新」(※1)を、個人に対しては「ポジティブ・チューニング」(※2)を。しかし一体、その真意は?とみんな、思っていると思うよ。
窪塚 1年位前までは、これを言ったらやばいなとか、これを言ったらこう思われるべなとかそういうところがあって。しゃべることに関して結構、自分自身でブレーキをかけてるところがあったんですよ。
たとえば円盤の話(※3)とかね。そんな話をしたら、どう思われるか分かるじゃん。でもずいぶん前から、もう全部ぶっちゃけていこうと思って。ぶっちゃけないと、言葉は曖昧になるし、伝わんないんですよ。自分に正直に言ってる方がはるかにシンプルにしゃべれる。だからそうしようと思った。
今、これまでバラバラ物や考えがひとつになってきて、様々なことがすごくつながってきたという感じがしている。自分がゼロポイント(※4)になって、全員同じテーブルに乗せるということをしたいんです。そこから総合的・包括的にみるというか。今までは科学なら科学のこの分野だけというところで、それぞれが細分化して単独で存在してたから、その向こうにある大きな流れがみえなかった。同じテーブルに全部乗せちゃえば、何かそこに、みんな同じものがあるはず。
山登りって、その登り方は無限にあるけれど頂上はひとつだよね。で、その無限の登り方を集めてみると、はじめて山の全体図がみえてくる。いま自分は、山の極まったところに来てると思えるから、そこからは今まで分かんなかったこともみえ出してくる。みんなに共通することがみえてくる。
――子供の頃からそんなことを考えていたの?
窪塚 それって、どっかでずっと探してたことって感じする。