迷惑な質問「無人島にCD1枚だけ持って行くとしたら」に対するホフディランからのアンサー(小宮山雄飛)

2022.8.30

文=小宮山雄飛 編集=森田真規


2022年9月14日、通算10枚目のアルバム『Island CD』をCDでリリースするホフディラン。そのメンバーである小宮山雄飛は、ミュージシャンだからこそよく聞かれるとある質問に憤っているという。

そう、それは……
「無人島にCD1枚だけ持って行くとしたら、どのアルバム?」
という問いだ。

この質問がなぜ「POPな感じでめちゃ土足で踏み込んできているようなもの」なのか。さらに、この質問から解放される究極のアンサーとは──。


「島」の意外な定義からわかったこと

ホフディランのニューアルバムのコンセプトは、ずばり「Island(アイランド)=島」です。日本人にとってアイランドって響きは、ハワイとか南国の楽園のような、とにかく楽しげな島のイメージですよね、チャゲさん的な。

ナツ・ナツ・ナツ・ナツ・ココナツ
アイ・アイ・アイ・アイ・アイランド

これ、冷静に活字にしてみると、ヒップホップのスクラッチ文化を先取りしてましたね。言葉の頭だけ、レコードをスクラッチしてるような歌詞です。

ファルコの「ロック・ミー・アマデウス」やファットボーイ・スリムの「ロッカフェラー・スカンク」にも近いですね。

レコードをこする文化も、サンプラーも普及していない時代に、人力で
ナツナツナツナツ
アイアイアイアイ
と、リフレインしていたのですね!

[MV] ふたりの愛ランド / 石川優子とチャゲ

日本のHIPHOPチャゲ元祖説。
えっと、いきなり話がそれてしまいました……。

島の話です。
そもそも島ってどういう定義なんでしょうか。明確に〇〇島と名乗っているのは、もちろん島だと思うのですが、たとえば四国そのものとか、九州や北海道とかは島なんでしょうか?

アメリカとかアフリカとかは、さすがに大陸と呼ばれているから陸なんでしょうが、どこからが陸で、どこまでが島なのか!?

ということでWikiってみたら、意外な事実がわかりました。

オーストラリアより面積が小さいやつは、全部島である。

おい! そうなのか! オーストラリアが基準だったのか。
(もちろん、四方を海に囲まれているという前提ですよ、念のため)

日本には伊豆大島とか小豆島とか佐渡島とか、いろいろな島があって、島旅とか島ガールみたいな言葉もあったり、ドラマなんかでは地元の人が「島のもんはよー……」なんて島民アピールしてますが、ちょっと違ったんですね。

日本人全員「島のもん」だったんです。

島旅とかって話じゃない、全員、島に住んでる島民だったのです。そう思うとちょっと不思議な連帯感が湧きませんか?

東京とか大阪とか名古屋とか、そんなの大した違いではない、世界から(少なくともオーストラリア以上の陸地から)見たら、日本なんてみんな同じ島の島民なのです。

『Island CD』とはつまり、日本人全員のCDなのです、めでたしめでたし!

「無人島にCD1枚だけ持って行くとしたら、どのアルバム?」という質問の残酷さ

と、まだ原稿の文字数的にここで終わるわけにはいきません。今回アルバムタイトルを『Island CD』にした理由のひとつは、世の中にはびこる、あの迷惑な質問に対する答えでもあるのです。

その質問とは「無人島にCD1枚だけ持って行くとしたら、どのアルバム?」というやつです。

ミュージシャンはこれ、ほんとによく聞かれるのです。雑誌取材とかラジオとかでね。まあ、聞きやすいというのはわかりますよ。

生涯ベストアルバムはなんですか?
とか
死ぬ前の最後の晩餐で食べたいものはなんですか?
とかね。

聞きたい気持ちはわかります。
聞きたい気持ちというか、制作サイドの気持ちはわかるんですよ。

すごい楽でしょ、<最高の1枚>とか<最後の晩餐>とか聞いておけば、まあなんか思い入れを語るだろうと。

しかし、ちょっと待ってほしいのです。そんな大事なことを、さくっと教えられますか? 聞く側はむしろライトな感覚で聞いてると思うんですよ、めっちゃシリアスな質問よりね。

「無人島に持って行くCDを教えてください~!」
「はい、それではそのアルバムから1曲お送りします~!」
くらいのノリでね。

でも、よくよく考えてください。
それって遺言みたいなもんでしょ。
無人島ですよ。

今後もう、人に誰も会わないんですよ。
遠回しに言ってますが、つまりは死ですよ。

無人島と言われると、それこそちょっとトロピカルアイランドっぽく感じますけど、実際は死ですよ、行ったら終わりですよ。

お婆さんに「姥捨山(うばすてやま)に持って行くレコードを1枚教えてください!」と、ディスクジョッキーが聞いてるようなものですよ。

そんな残酷な質問しますか? これから死に向かおうという人に、好きなアルバムを教えてくれって。ぶん殴られますよ、実際だったら。アルバムなんかいいから、おらを捨てないでくれって泣かれますよね。

あるいはですよ、病院で今にも死にそうなお爺ちゃんに対して
「お爺ちゃん! 最後に聞きたいCDなに?」
「お爺ちゃん、しっかりして!」
「あの世に持って行きたいCD1枚なに?」
「お爺ちゃん、しっかりして! 死なないで!」
と、お爺ちゃんの身体を思いっきり揺さぶってるようなものです。

孫よ、お願いだからほっておいてくれ……と思いますよね。

つまり「無人島に1枚だけ持って行くとしたら、どのCD?」という質問は、こちらが元気なのをいいことに、生涯で一番重要でパーソナルな瞬間に、POPな感じでめちゃ土足で踏み込んできているようなものなのです。

そんなこと軽々しく聞くなよと。僕はずっとそう思っていたのです。ということで、『Island CD』です。アルバムタイトル自体を、無人島に持って行くCDとしているわけですから、これからはもうどこで「無人島に……」の質問をされても『Island CD』と答えておけばいいのです。

皆さんもついにあの質問から解放されるのです!
『Island CD』、便利でしょ!

ホフディラン『Island CD』
ホフディラン『Island CD』は9月14日発売!

はい、これでやっと、めでたしめでたし……。

ホフディラン(左から:ワタナベイビー、小宮山雄飛)
ホフディラン(左から:ワタナベイビー、小宮山雄飛)

ホフディラン、アルバムリード曲「生まれ変わり続ける僕たち」MV公開!
監督:ALi(anttkc)、タイポグラフィ:かねこあみ、によるミュージックビデオを9月3日(土)正午に公開!

ホフディラン「生まれ変わり続ける僕たち」【MUSIC VIDEO】

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  • ホフディラン『Island CD』

    ホフディラン通算10枚目のニューアルバム『Island CD』

    デビュー26周年を迎えたホフディラン、通算10枚目となるニューアルバム『Island CD』をリリース。
    アニメ 『コジコジ』とのコラボレーションCMが話題になった先行配信第1弾「ココカラ銀座」(作詞・作曲:ワタナベイビー)、先行配信第2弾「生まれ変わり続ける僕たち」(作詞・作曲:小宮山雄飛)、先行シングル曲2曲を含む全12曲収録、渾身の新作!

    発売日:2022年9月14日(水)
    ■初回生産限定盤(CD+DVD)
    収録曲:CD全12曲、DVD全16曲
    価格:4,400円(税込)
    ■通常盤(CD)
    収録曲:CD全12曲
    価格:3,000円(税込)
    <購入者特典>
    ※初回プレスに限定盤と通常盤でデザインが異なるステッカーを封入
    ※タワーレコードとライブ会場購入者は、先着でアルバムのインスト音源CD付き
    (初回生産限定盤:M-1~M-6インスト音源、通常盤:M-7~M-12インスト音源)
    <CD収録楽曲>
    01.Island SE
    02.生まれ変わり続ける僕たち
    (アルバムリード曲/ミュージックビデオ9/3公開)
    03.デジャデジャブーブー
    (日テレ系『ぶらり途中下車の旅』イメージソング)
    04.病に臥して 
    05.スレンダーGF
    06.花
    (アルバムリード曲)
    07.Island SE2
    08.風の誘いで
    (日テレ系『ぶらり途中下車の旅』イメージソング)
    09.ココカラ銀座
    (アルバムリード曲/アサヒグループ食品カルピス健康通販「ココカラケア」CM曲)
    10.ガンバレ小中学生
    11.STEP BACK
    12.キミが生まれたから feat.かもめ児童合唱団
    (アルバムリード曲/NHK Eテレ『シャキーン』書き下ろし楽曲)

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