緊急考察「コロナ開国ニッポン!」そこに待ち受けるものとは?取るべき戦略とは?(マライ・メントライン)

2022.6.9
マライサムネ

明日10日、外国人観光客の受け入れが再開される。2年2カ月ぶりの「コロナ開国」で日本はどうなるのか。日本在住ドイツ人、マライ・メントラインが考える。


おもてなし大国ニッポンの素晴らしさを思い出せ?

2022年6月10日から、日本は外国人観光客の受け入れを再開します。コロナが滅んだわけでもないけど開国するんです。「だって仕方ないでしょ。世界もそうやってるし、ウチもやらないと観光立国的にヤバいし」という流れには、誰も完全否定はできない「一理」があります。しかし、理屈で割り切れない「開国すると何かあるんじゃないのか。パンドラの匣を開けちまっただよ!的な」という不安にも一理あるわけで。少なくとも我が国日本では。
ゆえに、コロナ開国を議論する各種報道やトーク番組では、
・コロナは不安だけど開国すべきよね。
・開国すべきだけどコロナは不安よね。
という堂々巡りな話の挙句、なるべく防疫対策でベストを尽くしましょうね、という落としどころを経てから「おもてなし大国ニッポンの素晴らしさを思い出せ!」みたいな方向に行っちゃうんですね。というか、そればっかです。要するに、議論するふりをしながら全体的にはコロナ開国を既成事実化し、市井の反発意欲をトーンダウンさせる意図が明確に見て取れます。

私自身、日本のインバウンド関連事業について取材したことも当事者として関わったこともあるので、なんとか観光事業を全力ダッシュに近いかたちでリスタートさせたい政府や事業者の焦慮はわかるのですが、

やっぱホントの予測図は提示しないよな

という印象が強い。で、ああいう既成事実化PRステマ番組みたいなのは、むしろ疑心暗鬼が増してしまう気がするのですよ。と、ネット民ぽい脳領域から言ってみたり。

自分のトコでルーレットの玉が止まらないように

開国して実際に何が起きるかといえば、それはコロナ初期の、クルーズ客船ダイヤモンド・プリンセス号の横浜寄港や東京湾の屋形船での「都内初感染」騒動を思い起こせばなんとなくわかります。つまり、最初に何か「悪目立ち」な事態が発生し、その火元となったお店とか業界がなぜか「ケガレ」扱いされながらソフトに忌避されまくり、でもそこから対応策がいろいろ生じてきて、その敷衍によって社会全体が納得したりしなかったりしながら、解決と無関係に「とりあえず落ち着く」状態に至るわけですね。しかしとにかく、屋形船の会社が立ち直るのは過度に大変だったらしい。だから事業者サイドの視点から率直なことを言ってしまうと、

初弾を食らっての悪目立ちだけは避けろ

という話になります。特に飲食・娯楽・風俗系が震源だったりすると、実際は個々の店や人の問題だったりするのに「業界としての体質やリスク管理」がどうのこうのという話になりがちで厄介です。なぜそうなるかといえば、マスコミもネット民もみんな含め、それが今どきの「ネタとしての情報消費」の正しく効率的な在り方に近いからです。残念ながら止めようがない。だから皆様、特に事業者の皆様、自分のトコでルーレットの玉が止まらないようにがんばるしかありません。うーん、我ながら何か根本的にダメなことを言ってしまっている気がしないでもないが、キレイ事を言うとウソになってしまうからな……悩ましい。



今の日本人はどれくらい耐えられるのか

そしてかく言う私自身、コロナ状況下ずっと日本に居たせいで実は感性が日本人化しており、たとえば青山あたりで六本木族っぽいガイジンさんがノーマスクで闊歩していたりするのを見ると、ヤバいなコイツと反射的に身構えてしまうのですよ。そして先日、規制緩和後のドイツへ2年半ぶりに行ってきました。するとあちらの「ニューノーマル」生活感覚のユルユルさというか、防疫の形骸化について「これはないわー」と感じる一方、システムとして押し通すならこれはこれで蓋然性アリなのだろうな、と感じたりもする。
ニューノーマル的な流儀の導入に、今の日本人はどれくらい耐えられるのか。
現状、政府や関係各庁が展開している「開国アピール」って、たとえばノーマスクの外国人観光客が山手線で自分の目の前に立ちながらしゃべってる的な状況に対してなんのケアも対策もないわけですよ。それはたぶんいろんな層を苛立たせてしまう。だからそういう日本市民の律義なマスク習慣を逆に活かして、マスクをしながら日本観光をすれば、あなたに対する市民の親切度が勝手に50%増しになりますよみたいなアピールを訪日観光客相手に展開するぐらいの戦略があっていいかもしれない。

「対応」から「哲学」へ

まあ、そんなふうに言ってしまうと「マスクはそもそも強制ではなく任意、もしくは組織ごとのルールのはず。それを強制の前提で語るようなのは(以下略)」みたいなツッコミが来るでしょう。でもそういうのを気にし過ぎるとたとえ話がいろいろ封じられてしまうので、このまま行きます。おそらく問題の真のコアは、国内の暗黙のルールを変えたくない政府(何かいじると反発が起きそうだから、無難路線を選んでいる)の作戦と、観光を再開せざるを得ない産業界の作戦が並行で進められて、肝心な部分の社会的な合意がなおざりにされている点なのだろうと思います。
外国人観光客はある程度日本の状況に合わせるだろうけど、論理的な納得感の低い「念のためこうしてください」的なルールは平気で破るでしょう。オリンピックでもそうでした。あれの恒常化を我々は耐えられるのか。そして結局のところ、そもそも私たちは自身は今後どのように振る舞いたいのか。

 そろそろ、コロナに対して「ウチの対応はコレです」じゃなく「ウチの哲学はコレです」とうまく主張できるかどうかで、大きな成否が分かれる時代が来つつあるような気がします。


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マライ・メントライン

翻訳(日→独、独→日)・通訳・よろず物書き業。ドイツ最北部、Uボート基地の町キール出身。実家から半日で北欧ミステリの傑作『ヴァランダー警部』シリーズの舞台、イースタに行けるのに気づいたことをきっかけにミステリ業界に入る。ドイツミステリ案内人として紹介されたりするが、自国の身贔屓はしない主義。というか..