不穏さが目立つ大国(中国、ロシア)をネタに活動する研究者、ルポライターが今、アツい(マライ・メントライン)

2021.7.9
マライ・メントラインサムネ

7月14日、第165回芥川賞・直木賞作品が決定する。QJWebでは両賞について恒例の「杉江松恋とマライ・メントラインによる全候補作徹底討論&受賞予想」を同日掲載の予定。予想対談の準備をしながら、マライ・メントラインは、フィクションが容易に現実に追いつけない状況をつらいと感じている。そのなかで、不穏さが目立つ大国をネタに活動する研究者やルポライターが今、アツい。パワーとカオス度とネタ度が頼もしい!


ターミネーター具現化への第一歩か?

トランプ大統領の登場その他の劇的な展開により、「現実がフィクション以上にフィクションぽくなった」と言われて久しい。
ではその状況を見てエンタメ界が奮起し、高度カオス化してゆく現実を出し抜く、あるいは上回る文脈で、何かすごい作品をガシガシ生んで……となれば興味をそそるのだけど、残念ながらそうでもない。

特に国際謀略アクション系なんかは、冷戦期の東西対立ものから多極化テロリストもの(ただし秩序の中心は原則アメリカという設定)にシフトしてからは「これぞ!」とうならせるような新機軸を打ち出せていない感が強い。古き良き90年代以来の固定客向け商売になってしまった雰囲気もなくはない。でもってその手の刺激的な話題としては、むしろ現実の「リビア内戦でついに自律的な殺人ドローンが実戦投入されたことが判明! これはターミネーター具現化への第一歩か? しかもドローンがトルコ製なのがポイント。今トルコが何気に最新型ドローン輸出大国になってるって、みんな知ってた?」みたいな軍事系リポートのSF感に一般世間がザワついてしまう有様で、要するに、ネタ展開の威力&スピード感&生々しさにて、フィクションが容易に現実に追いつけない状況なわけです。杉江松恋さんと直木賞予想対談とかやってる身としてはなかなかツラい。

情報消化キャパの大きい研究者やルポライターの登場と台頭

とはいえこの手のリアル情報、ツイッターなどSNSだと単なるネタの箇条書きで終わってしまうし、研究書だと人間的なオモシロ味(あるいは怖さ)のキモがカットされがちで、読みもの的にまとめられた記事は往々にして安直さが目立つ……という感じで、なかなか直接には知的エンタメの脅威にはなり得ないモノではありました。

しかし最近、このあたりの状況に変化が。
端的に言えば、知性とオモシロ味のツボを心得た、情報消化キャパの大きい研究者やルポライターの登場と台頭です。ドイツ学界的にはたとえば伸井太一さんとかが挙げられますけど、特に今、不穏さが目立つ大国をネタに活動するこのタイプの言霊師がアツい!

『ニセドイツ』伸井太一/社会評論社
『ニセドイツ〈1〉』伸井太一/社会評論社

ということで先日、まさにそのタイプのルポライターで中国界隈の第一人者でもある安田峰俊さんからのお誘いで、現代ドイツ人(およびドイツ社会)から中国はどう見えるのかについてインタビュー対談を行ったら、それが『Voice』誌(2021年2月号/PHP研究所)掲載を経て新刊(5月刊行『中国vs.世界 呑まれる国、抗う国』安田峰俊/PHP研究所)に収録された! 万歳! じゃあいっちょ刊行記念WEB対談でもやりますか。でもやるなら、同時期に新刊を出したロシア軍事政治情勢スペシャリストの小泉悠(ユーリィ・イズムィコ)さんも呼んで、パワーとカオス度とネタ度を上げようぜ!

SNSが仕事の宣伝中心でない重要性


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マライ・メントライン

翻訳(日→独、独→日)・通訳・よろず物書き業。ドイツ最北部、Uボート基地の町キール出身。実家から半日で北欧ミステリの傑作『ヴァランダー警部』シリーズの舞台、イースタに行けるのに気づいたことをきっかけにミステリ業界に入る。ドイツミステリ案内人として紹介されたりするが、自国の身贔屓はしない主義。というか..

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