納言・薄幸が明かす 相方・安部紀克は“じゃない方”になんの不満も持たない真の“じゃない方”芸人
ヘビースモーカーで酒飲みという時代と逆行するキャラクターと“街ディス”を武器に、ブレイク中の納言・薄幸(すすきみゆき)。
薄に比べ「特徴がない」「じゃない方」と言われることの多い安部紀克(あべ・よしかつ)だが、先日出演した『内村さまぁ~ず SECOND』(#360)では「一発で嫌われる素質がある」「売れる可能性のあるイライラ感」とMC陣にイジられまくるなどブレイク直前の兆しを見せる。そんな安部はいったいどんな人物なのか。知り合って8年、コンビを結成して4年の相方・薄幸が明かす。
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相方は真の“じゃない方”芸人
隠していたわけじゃないんだけど、実は私には相方がいる。ちょっと下の名前は思い出せないけど、名字は、確か安部。
よくコンビの“じゃない方”というワードをバラエティ番組で耳にすることがあるけど、彼こそが真の“じゃない方”なんじゃないかと思う。「コンビで歩いていたら、じゃない方がマネージャーと間違えられた」なんていうエピソードはけっこうベタで、いろんなコンビ芸人が話している。この話ならまだわかる。
私は少し前、学生っぽい男子に「納言のおふたりですよね?」と、父と歩いていたときに声をかけられた。父、62だ。
おそらく、大人の背丈でさえあれば、私の隣が誰であろうと安部になれるのだろう。誰というか、もう物でもいいと思う。あのとき私が、父じゃなくて高めの脚立か何かを引っ張り歩いていたとしても、あの学生は私と脚立に「納言のおふたりですよね?」と、声を掛けてくれただろう。「そうです」って言うし、私も。
「眼鏡をかけてないから気づかれないだけ」
とにかく安部は、街中で気づかれ、声をかけられた経験というものが一度もない。このことに触れると必ず安部は「普段は眼鏡かけてないからです」と言ってくる。あのさ、眼鏡なんぞかけたとて、だ。
先日のロケ中のこと。安部が眼鏡をかけ忘れたまま、20分撮影が進んだ。大勢のスタッフさん、マネージャー、私がいる中、誰ひとりとして気づかず、それはそれは順調に撮影が進んだ。マネージャーに眼鏡のことを指摘された安部は、途中から何事もなかったかのように、突然眼鏡をかけ出した。テレビを観ている人たちは、コイツなんで急に視力悪くなっちゃったんだろ?と困惑したことだろう。
マネージャーが途中で気づかなかったら、100%エンディングまで眼鏡無しゴールできていた。そんな奴が、普段から眼鏡をかけたところで街中で気づかれるわけがない。忘れるような眼鏡を使って言い訳するな。
「安部がネタを8本送ってきた」納言・結成秘話
そんな安部とは、コンビとして4年目、知り合ってからだと、もう8年くらいが経つ。コンビを組む前の安部の印象は“何を考えているんだかわからない奴”だった。親交はあったものの、そこまで頻繁に遊びに行くわけでもなかったから、ちょっともみあげが長ぇなくらいにしか思っていなかった。
当時の安部は、もみあげを伸ばしていたのだ。どこ伸ばしてんだよ。それから4年が経ち、当時のコンビを解散した安部から、突然、僕とコンビを組んでくれとの誘いを受けた。
もみあげが長ぇからやだなって思い、当時ピン芸人をやっていた私は「ピンでがんばりたいかなあ」と、やんわり断ると、安部は私とコンビを組んだ体(てい)でのネタを8本ラインで送ってきやがった。断ってんの、全然伝わっちゃいなかった。
断った上で、勝手にネタを作ってきやがって、送ってきやがる奴だ。雑に扱うと何されるかわからない。もみあげ長ぇのがオシャレだなんて考えの奴だ。普通じゃない。恐怖を感じた私は「とりあえず、お試しで」という、いつでも逃げられる返事を返した。
まあ、もみあげのせいで恐怖が倍増されてしまっただけで、実際のところこれだけ熱を持って誘って来たんだから、たくさんネタは作ってくれるだろう。それで駄目だったらよきところで解散しよう、そう思っていた。
それから半年後には、安部はまったくネタを作らなくなっていた。
10対0で安部が作っていたのが、5対5のふたりで作るようになり、3対7で私の方が案を出すようになり、1対9で安部がネタ合わせ中ネット通販の話以外しなくなり、0対10で私から安部をネタ合わせに呼ばなくなった。
なぜなら呼んでも、ネット通販のお話をされるから。
安部がお笑いをサボるようになっていったのは、このころからだ。
ネタを書かなくなったまさにこの時、安部は真の“じゃない方”へのスタートラインに立ったのだ。結成1年目のM-1は2回戦で敗退してしまったものの、もしかしたらチャンスはあるかもという手応えだった。
その翌年のM-1は準々決勝で敗退、しかし、そのあたりから徐々にネタ番組のオーディションに受かるようになり、オーディション無しでも少しずつテレビに呼んでもらえるようになっていった。
ここからががんばりどころだ。