Netflixに次ぐ躍進を見せたAmazon Prime Video
さて、今年のアカデミー賞で健闘している動画配信サービスはNetflixだけではない。以下のとおり、各社が頭角を現している。Netflixに次ぐ躍進を見せたのは、Amazon Prime Videoで、計12のノミネーションを得ている。実は第89回、主演男優賞と脚本賞の2部門を受賞した『マンチェスター・バイ・ザ・シー』は劇場公開されたが、Amazonの子会社アマゾン・スタジオがほかの映画会社に競り勝って配給権を獲得したもの。動画配信サービスの会社としてNetflixより早く、アカデミー賞の主要部門を初受賞した。
今年は、聴力を失うかもしれないドラマーを主人公にした『サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~』が6部門でノミネート。主演男優賞では、主人公役のリズ・アーメッドが前出のチャドウィック・ボーズマンと共に注目の的だ。
そして『あの夜、マイアミで』が3部門、『続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画』が2部門のノミネート。長編ドキュメンタリー賞にノミネートされた『タイム』もアマゾン・スタジオの作品だ。
ディズニープラス『ソウルフル・ワールド』ほか、HBO Maxにも注目作あり
そしてディズニープラス。サービス開始から1年強ながら、今年初めてノミネートされた。『カールじいさんの空飛ぶ家』などで知られるピート・ドクター監督の最新作『ソウルフル・ワールド』は本来、劇場公開予定だったが、ディズニープラスの配信で初公開。先立って発表された第78回ゴールデン・グローブ賞と同様、長編アニメ映画賞も作曲賞も獲れるという期待は大きい。ディズニープラス関連は、同じく劇場公開の予定がありながら配信で初公開された『ムーラン』『ゴリラのアイヴァン』『夢追いウサギ』もあり、計7つのノミネーションとなった。
ほかにも、Apple TV+が2本、音響賞候補の『グレイハウンド』と長編アニメ映画賞候補の『ウルフウォーカー』でアカデミー賞初ノミネートを受け、米国ではHulu(ただし日本と異なる別会社)が配信した『ジ・ユナイテッド・ステイツ vs. ビリー・ホリデイ(原題)』のアンドラ・デイが主演女優賞にノミネート。
また今年、第2位タイとなる計6ノミネーションを獲得した『ジューダス・アンド・ザ・ブラック・メサイア(原題)』は2月12日、全米では劇場公開と同時にHBO Maxで配信。HBO Maxの作品は日本では、まだ一部がソフト発売や配信リリースされたりテレビ放送されたりしているだけで、本作はぜひ劇場公開してほしい。
来年のアカデミー賞は劇場公開の大作との競い合いに期待
こうして『この茫漠たる荒野で』『ジューダス・アンド・ザ・ブラック・メサイア(原題)』も動画配信サービスで初公開された作品と見なすなら、動画配信サービス発の新作映画は計66ものノミネーションを獲得したのだ。
しかし、もしもコロナ渦がなかったら、今年の映画賞レースは大きく変わっただろう。アカデミー賞だと、技術方面の各部門でノミネートされた作品群が例年と比べて地味な印象だ。というのもこれらの部門、世界中の劇場でかかることを前提にした大作がやはり有利だから。『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』『ブラック・ウィドウ』『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』『トップガン マーヴェリック』が予定どおり2020年に公開されていたら、特に音響賞と視覚効果賞の候補作はがらりと変わったかもしれない。やはり大作映画が持つパワーやエネルギーは、劇場で体感してジャッジしたいものだ。
コロナ渦だからこそ動画配信サービスを大いに楽しんだ2020年だが、来年のアカデミー賞はそれらと劇場、それぞれで初公開された新作が競い合うことを期待したい。
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