編集者、校閲者なしで書くことの恐怖。ライターとしてメディアの無個性化に抗う

2021.3.8
近藤正高サムネ

文=近藤正高 編集=アライユキコ


毎日どこかで炎上している。編集や校閲なしでSNSで発言することの怖さを、サーキットと公道を運転することの違いでたとえるのはライターの近藤正高。危険がいっぱいのメディアの中で「ライター志望者が世に出るための手立て」はどこにあるのだろうか。


些細なミスが命取り

車やバイクのレーサーには「サーキットより公道を走るほうが怖い」と感じている人が少なくないらしい。

これを書いている私は、書籍やWEB・雑誌の記事を書くことを生業とするライターで、そもそも運転免許すら持っていないが、最近になって、レーサーたちがそう感じる理由がわかるような気がしてきた。

レーサーたちはサーキットにおいてハイスピードで競い合う。そこでは些細なミスが命取りになるため、日頃より大勢の人たちの手で車両や場内設備の整備・点検が行われ、何重もの安全対策が取られている。

これに対して公道では、運転者はたったひとりで安全に気を配らねばならない。しかも、そこでは技術レベルのまちまちな運転者たちが車両を走らせ、歩行者も行き交うだけに、突発的な事態に遭遇する確率も高い。いくら高い運転技術を持つプロのレーサーが制限速度を守って運転していても、ヒヤリとさせられることは日常的にあるだろう。そう考えると、公道は確かにサーキットより怖い。

私がレーサーたちの言い分に共感するのは、SNS、とくにツイッターが今や公道と似たような状態になっている気がするからだ。そこではさまざまな立場の、表現やコミュニケーションの能力もまちまちなユーザーが日々つぶやいており、考え方の違いや誤解、失言、誹謗中傷等々からユーザー同士の衝突も繰り返されている。ちなみに10年前の2011年3月、日本国内で1カ月間にツイッターにログインした月間アクティブユーザー数は670万人だったのが、2017年10月には4500万人と約6.7倍も増えたという。“事故”が多発するのもうなずける。

私も10年ぐらい前はかなり頻繁にツイートしていたし、そこで知り合った人も少なくない。しかし、ある時期から、その頻度がガクッと落ちた。それはユーザーの増加に伴い、ツイッターで炎上がやたら目につくようになり、リプライで頓珍漢なことを言って絡んでくる、いわゆる「クソリプ」も増えたころだ。私はそれらを回避すべく、投稿のたびに、こう書けばどんな反応があるのか、自分の中でいちいちシミュレーションしては何度も書き直しをしていたのだが、そのうちになんだか億劫になってしまった。結果、あまりツイートしなくなったのである。

「cakes」はなぜ社名を「note」に


この記事の画像(全3枚)


関連記事

この記事が掲載されているカテゴリ

近藤正高

Written by

近藤正高

(こんどう・まさたか)1976年、愛知県生まれ。ライター。高校卒業後の1995年から2年間、創刊間もない『QJ』で編集アシスタントを務める。1997年よりフリー。現在は雑誌のほか『cakes』『エキレビ!』『文春オンライン』などWEB媒体で多数執筆している。著書に『タモリと戦後ニッポン』『ビートたけ..

QJWeb今月の執筆陣

酔いどれ燻し銀コラムが話題

お笑い芸人

薄幸(納言)

「金借り」哲学を説くピン芸人

お笑い芸人

岡野陽一

“ラジオ変態”の女子高生

タレント・女優

奥森皐月

ドイツ公共テレビプロデューサー

翻訳・通訳・よろず物書き業

マライ・メントライン

毎日更新「きのうのテレビ」

テレビっ子ライター

てれびのスキマ

7ORDER/FLATLAND

アーティスト・モデル

森⽥美勇⼈

ケモノバカ一代

ライター・書評家

豊崎由美

VTuber記事を連載中

道民ライター

たまごまご

ホフディランのボーカルであり、カレーマニア

ミュージシャン

小宮山雄飛

俳優の魅力に迫る「告白的男優論」

ライター、ノベライザー、映画批評家

相田冬二

お笑い・音楽・ドラマの「感想」連載

ブロガー

かんそう

若手コント職人

お笑い芸人

加賀 翔(かが屋)

『キングオブコント2021』ファイナリスト

お笑い芸人

林田洋平(ザ・マミィ)

2023年に解散予定

"楽器を持たないパンクバンド"

セントチヒロ・チッチ(BiSH)

ドラマやバラエティでも活躍する“げんじぶ”メンバー

ボーカルダンスグループ

長野凌大(原因は自分にある。)

「お笑いクイズランド」連載中

お笑い芸人

仲嶺 巧(三日月マンハッタン)

“永遠に中学生”エビ中メンバー

アイドル

中山莉子(私立恵比寿中学)
ふっとう茶☆そそぐ子ちゃん(ランジャタイ国崎和也)
竹中夏海
でか美ちゃん
藤津亮太