“おじさん沼”にハマった女子高生『東京ポッド許可局』の「未知」に胸が高鳴る(奥森皐月)

2021.2.22
奥森皐月

文=奥森皐月 編集=田島太陽


自称“ラジオ変態”、奥森皐月。3歳から芸能活動を始めた、16歳の女優・タレントである。週30時間もラジオを聴く彼女が、特に愛してやまないのが「JKには到底辿り着けない価値観」を得られる、“おじさん”による番組だ。

『東京ポッド許可局』の魅力を、本人がコラムとして綴る。

刺激的で胸が高鳴る「未知」のおもしろさ

人には少しばかり打ち明けづらい趣味がある。それは「おじさん」が好きで好きで仕方ないことだ。

芸能の活動を始めた3歳のころから私のまわりには大人しかいなかった。話し相手になってくれる大人は優しくておもしろい人ばかり。いつからか、同級生との会話よりも大人と話すことに楽しみを見出すようになっていた。

5歳のころの奥森皐月
5歳のころの奥森皐月

もともと、人との会話が好きであったが、ラジオを聴くようになってからは人の話を聞くことも好きなのだと気づく。ラジオパーソナリティはほとんどが自分より年上で、比較的年齢が近しい若い世代から、親の世代、さらには祖父母の世代までと幅広い。

はじめは20〜30代のいわゆる「若手芸人」と呼ばれる層のラジオばかり聴いていた。モテたい、遊びたい、もっと売れたい、といった考えは、私が持ち合わせていないものであったため新鮮さを感じた。一方で、流行のものやテレビ、ドラマ、映画の話は自分の考えと重ね合わせることができるのでおもしろい。

しかし、次第に興味が広がっていきさまざまなラジオ番組に手を伸ばすようになると、あるひとつの事実に辿り着いた。長く生きている人は、その分の情報を得ている。よって年齢が高ければ高い人ほど深い知識を持っていて、私が知らないおもしろいラジオ番組を作っているということだ。

「共感」のおもしろさは楽しいものだが、「未知」のおもしろさは実に刺激的で胸が高鳴る。つまり、年長者がパーソナリティのラジオ番組は、私の短い人生の何倍分もの知識が詰まっているのだと気づいた。さらに男性の話となると、より自分の知らないことにあふれている。

こうして私は10代も前半にして、完全なる「おじさん沼」へとハマってしまったのだ。

奥森皐月
奥森皐月

『北の国から』がどんな話か知らないけれど

私の中のベストオブおじさんラジオ番組が『東京ポッド許可局』である。

マキタスポーツさん、プチ鹿島さん、サンキュータツオさんの3人が「屁理屈をエンタテイメントに!」をモットーに語る番組。2008年にポッドキャスト番組としてスタートし、2013年よりTBSラジオでレギュラー化した異例の経歴を持ち、現在は毎週月曜24時から放送している。

パーソナリティは全員40歳オーバーで、マキタさんと鹿島さんは私の父と年齢が変わらない。3人共、自分自身を「おじさん」とはっきり言うところが素敵だ。理想的なおじさんパーソナリティである。

『東京ポッド許可局』のトークでは昔の話がどんどん出てくるため、聴いているとわからないことが多い。たとえば、番組で毎週のように『北の国から』の話題が上がるが、2004年生まれの私にはピンとこない。

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「純」「蛍」「子供がまだ食ってる途中でしょうが」の3ワードくらいは耳に入っているが、『北の国から』がどんな話なのかすら知らない。ホラーなのかSFなのかサスペンスなのかもわからない。ところが、東京ポッドを聴いていればなんとなく内容が掴めてくる。

『北の国から』に限らず、自分の知らない時代のテレビやラジオ、文化や生活までもが見えてくるのがこの番組の魅力だと思っている。当たり前だと思っていたことが覆されたり、考えてもみなかった思想に触れたり。ここ最近の放送だけでも、数多くの「ショック」があったので、いくつか紹介したい。

おじさんたちの「論」から気づかされること

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