能力を超えた職務を与えられた愚者を哀れむ。森喜朗さんは『あとは野となれ大和撫子』を読んで、女性の能力を知りなさい

2021.2.6
豊崎サムネ

文=豊崎由美 編集=アライユキコ


「女性がたくさん入っている理事会が時間がかかります」
(東京オリンピック・パラリンピック組織委員会森喜朗会長 2021年2月3日「JOC臨時評議会」にて)

「歩く問題発言」「トップ・オブ・ザ老害」と悪い評判しかついて回らない森会長ではありますが、発言のここだけを切り取って揶揄するばかりでは不公平という気もします。ちょうど毎日新聞が全発言を起こしてアップしてくれてますので、ちょっと長くなりますが紹介させてください。

(会議がオンラインで報道陣に公開されており)テレビがあるからやりにくいが、女性理事4割は、これは文科省がうるさくいうんでね(※スポーツ庁が示した競技団体が守るべき指針のガバナンスコードでは、女性理事40%以上が目標)。女性がたくさん入っている理事会が時間がかかります。(日本)ラグビー協会は(会議が)今までの倍、時間がかかる。女性が10人くらいいるのか、今は5人か。女性は優れており、競争意識が強い。誰か一人が手を挙げて言われると、自分も言わないといけないと思うんでしょうね。それでみんな発言される。

 あまり言うと新聞に漏れると大変だな。また悪口を言ったと言われる。女性を増やしていく場合は、「発言の時間をある程度、規制を促しておかないと、なかなか終わらないので困る」と言っておられた。誰が言ったかは言わないけど。私どもの組織委にも女性は何人いる? 7人くらいかな。みんなわきまえておられる。みんな競技団体からのご出身、また国際的に大きな場所を踏んでおられる方々ばかりです。お話もきちっと的を射ており、欠員があればすぐ女性を選ぼうとなる。

(デジタル毎日 2021年2月5日14時17分最終更新)

もはや怒りというよりは

「文科省がうるさくいう(から女性の比率を4割以上にしている)んで」と下げて、「女性は優れており」と上げて、「競争意識が強い」という生物学的にもジェンダー的にも意味不明な根拠から「それで(女性は)みんな発言される」と推測し、「誰が言ったかは言わないけど」と言い訳をした上で、女性を増やしていく場合は「発言の時間をある程度、規制を促しておかないと」とパワハラとも受けとられかねない意見を持ち出し、「私どもの組織委(の女性は)みんなわきまえておられる」と上げる。
上げたり下げたりレールから外れたりと、浅草花やしきのジェットコースターくらいリアルに危険度の高い発言をしたのち、毎日新聞による取材で「軽率だった。おわびしたい」と頭を下げながらも「一般論として、女性の数だけを増やすのは考えものだということが言いたかった」とさらなる燃料投下を行い、妻や娘や孫娘にも怒られちゃったーと無邪気に明かす83歳の悪気はないんですおじいさん。翌日14時から会見を行うというので、てっきり辞任を発表するのかと思いきや、言い訳にならないごたくを重ねただけで、ごく短時間で会見を打ち切った83歳の心臓に毛が生えているおじいさん。
もはや怒りというよりは、身の丈を超えた職務を与えられたせいで歴史に残る愚者として記憶に留められることになりそうな、この老人を哀れむ気持ちのほうが大きいトヨザキなのでした。

小娘たちがわきまえない小説をお勧めしたい


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豊崎由美

(とよざき・ゆみ) ライター、書評家。『週刊新潮』『中日(東京)新聞』『DIME』などで書評を多数掲載。主な著書に『勝てる読書』(河出書房新社)、『ニッポンの書評』(光文社新書)、『ガタスタ屋の矜持 場外乱闘篇』(本の雑誌社)、『文学賞メッタ斬り!』シリーズ&『村上春樹「騎士団長殺し」メッタ斬り!』..

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