若者のメンズメイクがトレンドになってきている背景(SHIBUYA109 lab. 所長 長田麻衣)

2021.1.27

「共感」はできなくても、「共存」をする姿勢を持つ

では実際、今後メイクをする男子って本当に増えていくのでしょうか。

ふぶ「増えてほしいっていう気持ちもあるけど、なんだかんだ全員がするようになるとは思わない。メイクしたい子はするし、別にしてもおかしくない、ひとつの当たり前にはなるんじゃないかな。今も教室で女の子とメイクについて情報交換をしてても、その会話に男子が交じってくることはないけど、周りも別に違和感は感じてなさそう」

実際にほかのインタビューでも、メイクを取り入れている男子は、学年に2〜3人くらいと少数派ではあるものの、メイクをしていることに対して否定的な声をかけられている姿はあまり見られていません。

逆にメイクを取り入れている男の子たちからも、メイクをしない男子に対しての批判はもちろん出てこない。これは彼らの対人関係に対する意識とコミュニティの形成方法が影響しているように思います。

当然ですが、ひとつのクラスには実際いろいろなタイプの子がいます。スポーツが好きで、EXILEのような風貌のTHEオトコらしい!みたいな子もいれば、ふぶ君のように大人しくやわらかい自分でいたい男の子もいる。

彼らはさまざまな価値観が存在する、とわかっているだけでなく、それぞれの価値観に対して正解不正解を一方的にジャッジしないという感覚を持っているのでしょう。そのため、それぞれのコミュニティに上下関係やカースト的な考えは薄くなっていて、異なるコミュニティが横並びに“共存”しているのです。

ふぶ「クラスにはタイプが全然違う子たちもいるけど、自分とは目指す理想像が違い過ぎるから、あまり一緒にいることはないですね。僕たちの世代は、みんな“人は人、自分は自分”っていう考え方があるから、タイプが違う子たちとは良くも悪くも干渉し過ぎない関係性です。下手に干渉されてもわかってないのになんなの?ってなっちゃうし」

周りの目を気にしながら生きているんだけど、みんな違うことをわかっているから、わかってくれる人とわかり合えればそれでいい。そして異なる価値観を持つ人に対して、お互いのことを「理解」まではしていないけれど、「把握」はしていて、それぞれが生きやすい環境を実現するための態度をとり、自分が共感できないことを否定するのではなく、共存していく姿勢を持っている。

人種差別や性的指向への批判など、誰かが誰かを否定したり、認めないことで生きづらい世界になってしまっていますが、未来を担う若者の考え方が、“みんなが生きやすい世界”を実現するヒントになるのかもしれません。

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