10月31日 中村憲剛(Jリーグ・川崎フロンターレ)
「等々力には神様がいるな、というのをまた感じています」
(ホームの等々力陸上競技場で40歳のバースデー弾を決めた試合後のコメント)
今年、J1を圧倒的な強さで制した川崎フロンターレ。その象徴である“川崎のバンディエラ”中村憲剛にとっては、2019年11月に負った左ひざ前十字じん帯損傷からの復活を掲げ、リハビリから始まったシーズンだった。
怪我から10カ月後の8月29日、ホーム・等々力競技場での一戦で復活を果たすと、その試合で見事な復帰戦ゴール。さらに、10月31日の40歳の誕生日には、チームの連勝記録を12に伸ばすバースデー決勝弾をまたしてもホーム・等々力で決め、千両役者ぶりを発揮。改めて、「自分の家であり庭」と語る等々力陸上競技場に向け、そして応援してくれるサポーターに向けて感謝と共に発したのが上述のコメントだった。
そしてこの翌日、まさかの引退発表。「40歳で引退すると決めていた」と語ったことで、よりこのバースデー弾に意味があったことがわかった。
もっとも、引退しても中村憲剛の活躍ぶりは衰えることなく、その後も等々力でJ1優勝を果たすと、天皇杯でも決勝に勝ち進み、元日までプレーすることがすでに決まっている。
先日、私自身もインタビューする機会があったが「街とクラブの発展とと共に人間的にも成長できた。本当にフロンターレに入ってよかった」と語る姿が印象的だった。
11月3日 森且行(オートレーサー)
SMAP脱退から24年。オートレース界の最上位である「S級」にランクインしてから20年。長年の悲願だった「日本選手権での優勝」を46歳にして成し遂げた森クンこと森且行。SMAPファンならずとも、史上最年長優勝での涙のコメントは思わずグッとくるものがあった。
「やっと約束が守れてよかったと思います……。二十数年間がんばってきて、日本選手権、一番獲りたいタイトルを今日獲れて本当にうれしいです」
(日本選手権オートレース優勝後のコメント)
なお、普段はオートレースを扱わない『報道ステーション』(テレビ朝日)でも、レース内容も含め、森の優勝コメントを紹介。「熱盛」ならぬ「あつ森」ならぬ「熱森」スタンプを押してくれたのは粋な演出だった。番組SNSでは今もレース展開と共に観ることができるので、こちらもオススメしたい。
11月29日 クリストフ・ルメール(騎手)
「すごくうれしいです。もう1回アーモンドアイでG1を勝つことができて安心しました。アーモンドアイが引退レースで無事に帰ってきてくれたことが一番うれしい。さすがアーモンドアイでした。今日はサヨナラパーティー。素晴らしい脚を使ってくれた。絶対に日本で一番強い馬です。それがうれしいです」
(ジャパンカップでアーモンドアイに騎乗し、勝利したあとのコメント)
新型コロナの影響でJリーグやプロ野球などが次々と中止や延期に追い込まれたなか、無観客ながらもずっと開催をつづけて、日本のスポーツの灯火を保ってきたのが競馬だった。
そんな今季の競馬の中でも特別なレースとなったのが、アーモンドアイ、コントレイル、デアリングタクトと、日本競馬史上初めて3頭の3冠馬が集結する奇跡的なレースとなった第40回ジャパンカップだ。実はコロナがなければ海外遠征などの影響で3頭が一堂に会することはなかったかもしれず、皮肉にも、コロナが生んだ競馬史100年に残る記念レースとなった。
結果はご存知のとおり、引退レースでもあったアーモンドアイが有終の美を飾るとともに、この3頭が1〜3着を独占するという、これまた奇跡的な内容に。騎乗したルメールが「うれしい」を連発しつつ、「サヨナラパーティ」と称したことが味わい深かった。
12月7日 新庄剛志(元プロ野球選手)
「今日のヒーローは僕じゃありません応援してくれた皆んなです!!」
(トライアウト出場後、自身のインスタグラムで)
今月7日に行われたプロ野球の12球団合同トライアウトに臨み、誰よりも話題を集めたのが新庄剛志、48歳だった。
引退から14年ぶりのユニフォーム姿を披露するだけでなく、3打席ノーヒットで迎えた最後の第4打席、ランナーがいる状況で打席に立つと「走者がいてくれてアドレナリンが出て、ボールがよく見えた」とレフト前にタイムリーヒット。“新庄劇場2020”を自らのバットで彩って見せたのはさすがのひと言だった。
結果的にプロ12球団からのオファーはなく、球界復帰は幻に終わったが、インスタグラムで発した上述のコメントでも新庄節は健在だった。
12月26日 羽生結弦(男子フィギュアスケート)
「世の中は今、暗いトンネルの中かもしれないですけど、絶対にいつかは光が差すと思うので、そういったものをちょっとでも自分の演技から、また言葉たちから感じていただければと思います」
(日本選手権を5年ぶりに制したフリープログラム後のインタビュー)
最後を締め括るのは、やはりこの男。世界を転戦するグランプリシリーズがいくつも中止となるなか、羽生もまた320日ぶりの実戦に。しかも、コーチ不在という難しい状況にもかかわらず、新プログラム「天と地と」はノーミス演技で、まさに格の違いを見せつけての優勝劇となった。
そして、演技後のコメントもまた切れ味抜群。今年だからこそ、羽生結弦だからこそ表現できる、未来への希望を感じさせるものだった。
なお、大会終了後のインタビューで、ほぼ1年後に迫る北京冬季五輪について質問された羽生は、「東京オリンピックができていないなかで、冬のことを考えている場合ではないというのが僕の意見」とコメント。この言葉からも羽生結弦の誠実さを感じることができた。
以上、個人的に印象深かったインタビューやコメントを10個選んでみた。もちろん、好きな競技によって、どの球団のファンかによって、選ぶ言葉も変わってくるだろう。いずれにせよ、コロナ禍にもかかわらず素晴らしいパフォーマンスと言葉で魅了してくれたアスリートたちに、改めて拍手を送りたい。