拡大すると情報が増える路線図
「MTA Live Subway Map」は、PCもしくはスマホ上で見るための路線図。最大の特徴は、拡大縮小ができることだ。
最初はシンプルな見た目だが、拡大していくと駅や幹線道路が現れ、さらに拡大するとストリート名などの情報が増えていく。駅をタップすれば駅出口やインフォメーションが表示されるし、路線上には走行している車両がリアルタイムで映し出される。
地理情報だけでなく、特定の路線のみにフィルタリングしたり、夜間運転や週末運転の表示に切り替えることも可能。必要な情報を、必要な人に届けるよう意識して作られている。
つまり、俯瞰すればヴィネッリの、拡大すればハーツの路線図になるのだ。まさに情報の「いいとこどり」。
ひとつの路線図に複数のレイヤーを含ませるアイデアは、スマホアプリ『KickMap』などですでに実装されていたが、鉄道事業者の公式路線図として採用されるのは珍しい。
幾何学vs地理学の問題をずっと抱えてきたニューヨーク地下鉄だからこそ、この取り組みに意味がある。
「MTA Live Subway Map」は官民共同で開発され、製作を担当したのはWork&Coという会社。その裏側は短編ドキュメンタリー『The Map』としてネットに公開されている(全編英語だけど日本語字幕も用意されています)。
映像の終盤に、新型コロナウイルス感染拡大に触れている箇所がある。「新型コロナのパンデミックは、交通とニューヨークにとって真の危機です」と。
ニューヨーク市の新型コロナウイルス感染者は累計30万人。ニューヨーク地下鉄は消毒作業の時間を確保するため、5月から全路線で24時間運行を中止している(午前1時~午前5時まで運休)。
この先、感染状況がどうなるかわからない。もし地下鉄の運行に何かしら影響が出ることがあれば、リアルタイムで状況を伝える路線図は強力なインフォメーションとして機能するはずだ。
願わくば、そんな使い方をする事態になりませんように。
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