<アウト>な“お笑いマニアJK女優”。狂気の宿る「トラウマネタ」が忘れられない(奥森皐月)

2020.11.12


おもしろさの中に狂気を宿す「トラウマネタ」

「おもしろい」は正義だと思っている。

人を笑わせることができる、この能力は本当に偉大なものだ。それだけでなく「おもしろい」にはさまざまなかたちがある。どんなかたちであろうと、「おもしろい」を作り出せる人は全員、もっともっと偉いと認められてほしい。私が真剣に願っていることだ。

5歳のころの奥森皐月
アンパンマンより、深夜のお笑い番組の録画を楽しんでいた5歳のころの奥森皐月

そんな私が今一番もどかしいのは、“おもしろいのにあまり知られていない人”が多過ぎること。

テレビで芸人さんが「上が詰まっている」とよく言うが、私は「下も詰まっている」と考えている。第七世代というパワーワードの発生により、若手芸人さんの門も狭まる時代が来ているのではないか。

当然、メディアで活躍される方は実力者で、人気もあっておもしろい。しかし、そこから偶然あふれてしまっただけの素敵な芸人さんが大勢いることを広めるべきだ。

漫才・コント・ピン芸・歌ネタなどお笑いにもいろいろな種類があるが、私が特に好きなジャンルがある。

それは「トラウマネタ」だ。

このようなジャンルが正式に確立されているとは聞いたことがないが、私はこの「トラウマネタ」を推奨したい。おもしろさの中に狂気性を見出したお笑いは、時として破壊的な威力を持っていると思う。

たとえば、キングオブコント優勝者のバイきんぐ、かもめんたる、ロバート。

どの組も、「日常に潜んでいると恐ろしい」が強く印象に残るキャラクターが出てくるネタが多いように感じる。また、漫才でいえばメイプル超合金のような「視覚的なインパクト」と「聞きなじみのない言葉の連続によるインパクト」。千鳥では、同じ内容の漫才やコントを何度も何度も繰り返すことで深く記憶に刻まれる感覚。

一度見ただけで忘れられなくなる、そのようなお笑いがたまらなく好きだ。

ジャンルは問わず、このように大きな衝撃と長く頭にこびりつく強さのあるネタは多く存在する。ここ1年くらいで見たコントの中で、特に印象的だった芸人さんを僭越ながら2組紹介したい。

おすすめ「トラウマネタ」フランスピアノ&ガクヅケ

まずは、フランスピアノ(グレープカンパニー所属)の『浮気』というネタ。

お笑い好きの間で「衝撃的なネタ」だと話題になっていたので、ワクワクして観ると私も心を奪われた。ネタバレは野暮なので、とにかく一度観ていただきたい。YouTubeを開いたついでに『クレーマー』というネタも観よう、こちらも気味の悪さが素敵だ。

もう一方は、ガクヅケ(マセキ芸能社所属)の『街のパン屋さん』というネタだ。

このネタを、初めてライブで目の前で観たときに泣きそうになった。笑い過ぎたせいか、怖かったせいか、自分ではわからない。とにかく感情がかき乱される。ガクヅケはどのネタも私の中の「トラウマネタ」に当てはまっているので本当に好きだ。

知らないお笑いを見たときの感動とショックの大きさはたまらない。もしも、これを味わいたい人がいれば、ぜひいろいろなネタを観てもらいたいものだ。

来世はお笑いで活躍する人に

お笑いの世界に本格的にハマった小学5年生のころの奥森皐月
お笑いの世界に本格的にハマった小学5年生のころの奥森皐月

お笑いは大好きだが、けっして自分が芸人さんになりたいとは思わない。自分が到底及ばない世界だからこそ、憧れを抱きながらひっそりと応援できる。

根拠も何もないが、お笑いを好きでいられる生活は心なしか明るくて、楽しくて、豊かだ。ちょっとの嫌なことが、芸人さんのネタのシチュエーションと重なって笑えてきたことがある。落ち込んだ日に、なんとなく再生したお笑いでつい笑ってしまったこともある。だから私はお笑いが好きだ。

来世はお笑いの世界で活躍する人になりたいので、今世は徳を積む人生にしようと決めている。

16歳の唱える人生の道筋なぞ、戯言に過ぎないのでしょうが。わかったような口を利いてしまって、まーごめ。

奥森皐月の「クイックジャーナル」は毎月1回の更新予定です。


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