世界の上位10位のうち7人が日本のVTuber。YouTube「スパチャ」で今、起こっていること

2020.9.2


プロレスやアイドルのように虚構と現実の狭間で楽しむ娯楽

しかし、やはり今回のランキングの上位を占めたのが、生身の人間よりもVTuberのほうが多いというのは、おもしろい事実です。彼らは結局のところゲーム配信したりしてて、生身の配信者がやってることとそんなに変わりないとも言えます。なのに、人々はVTuberのほうにお金を払っているということになる。なぜでしょうか。

【Muse Dash】35万人まで!!噂の音ゲー初挑戦★音ゲーの達人になるしあ!!!!!【ホロライブ/潤羽るしあ】

とか言うと、もしかすると「存在しないアイドル(みたいなもん)にカネを払ってるってことだろ? やはりオタクはキモい」みたいなことを言う人がいるかもしれません。まあ、今どきそんなバカみたいな批判をする人はいないかもしれませんけど、もしそういう考え方をする人がいるなら、もうちょい深く考えてみてもいいんじゃないの、と僕は思います。

なぜなら、むしろ、生身の人間じゃないからこそ、「作られたコンテンツ」として、視聴者はそのデキに対して、積極的にお金を払う気持ちになれるのではないか、と僕は思うからです。

というのも、VTuberの視聴者だって、そのキャラクターがガチリアルに存在していると思って狂喜してカネを払ってるわけじゃありません。ちゃんと「中の人」がいることをわかりながら、そういうコンテンツに積極的にノッて、キャラを楽しんでいるわけです。

あれですよね、マンガ『ジャイアント台風』に描いてあることを全部本気にするわけじゃないけど、でもジャイアント馬場が強いということは認めようとする姿勢みたいなもんですよ。

『ジャイアント台風1』梶原一騎 原作/辻なおき 作画/グループ・ゼロ/Kindle版

つまりVTuberの視聴者も、やっぱり、(いわゆる)プロレスとか、(いわゆる)アイドルみたく、虚構と現実の狭間で娯楽を提供してくれるのを楽しんでいるわけです。同じゲーム配信でも、その配信をやってくれる人がどんなキャラ性を見せてくれるかも含めて楽しんでいると言ってもいい。

VTuberは意外とオーソドックスな存在

ちなみに今回のランキングに登場しているVTuberたちは、VTuberの大手事務所ホロライブやら、同様にVTuber事業で知られるいちから株式会社に所属している人たちばかりです。生身の芸能人と同じように、VTuberにも芸能事務所みたいなもんがあって、経済活動しているということです。

ディスコミュ星人/兎田ぺこら(cover)/ランキング4位の兎田ぺこらはホロライブプロダクション所属

きょうびの芸能界だって注意深くファンに与えるイメージをコントロールしてキャラ勝負しているわけですから、やっていることは近いのではないかな、と思います。まあ、双方のファンは、あんなのと同じにすんじゃねえよと思うかもしれませんけど。しかし表面的にはともかく、構造的には一緒ですよね。

ライブ配信者について注目しておきたい事実としては、彼らは(VTuberに限らず)、YouTubeのチャンネル登録者数自体は、動画をアップロードする通常の人気YouTuberに比べてそんなに多くありません。たとえば今年1月末に始まった江頭2:50氏のチャンネル登録者数は216万人ですけど、桐生ココ氏は58万人ですからね(2020年8月末現在)。

今後、ライバー勢がもっと支持層を拡大するかどうかは、わかりません。だけど、虚構と現実のあわいにあるものをおもしろがるコンテンツとして、VTuberが意外とオーソドックスな存在であり、表面的に「2次元」を採用したモノが増えるかどうかはともかく、ネットを活用したライブエンタテインメントは、基本的にそういう構造を持つものが増えていくんじゃないでしょうか。

しかしまあ、プロレスやアイドルの例を挙げましたが、過去の例を見ると、そこで虚構と現実の垣根が不用意に壊されてしまったりすると、ものすごい禍根を残したり、深刻な問題を招いたりします。すでにVTuber界隈でもそういうギスギスは生まれていますが、そういうエンタメがやりたい運営サイドには、エンタメなんですから、視聴者を楽しませるだけの、じゅうぶんな慎重さが求められるところです。


この記事の画像(全1枚)


関連記事

この記事が掲載されているカテゴリ

Written by

さやわか

ライター、物語評論家、マンガ原作者。著書に『僕たちのゲーム史』『一〇年代文化論』『僕たちとアイドルの時代』『文学の読み方』(いずれも星海社新書)、『キャラの思考法』(青土社)、『文学としてのドラゴンクエスト』『名探偵コナンと平成』(コア新書)、『ゲーム雑誌ガイドブック』(三才ブックス)など。ほか共著..

QJWeb今月の執筆陣

酔いどれ燻し銀コラムが話題

お笑い芸人

薄幸(納言)

「金借り」哲学を説くピン芸人

お笑い芸人

岡野陽一

“ラジオ変態”の女子高生

タレント・女優

奥森皐月

ドイツ公共テレビプロデューサー

翻訳・通訳・よろず物書き業

マライ・メントライン

毎日更新「きのうのテレビ」

テレビっ子ライター

てれびのスキマ

7ORDER/FLATLAND

アーティスト・モデル

森⽥美勇⼈

ケモノバカ一代

ライター・書評家

豊崎由美

VTuber記事を連載中

道民ライター

たまごまご

ホフディランのボーカルであり、カレーマニア

ミュージシャン

小宮山雄飛

俳優の魅力に迫る「告白的男優論」

ライター、ノベライザー、映画批評家

相田冬二

お笑い・音楽・ドラマの「感想」連載

ブロガー

かんそう

若手コント職人

お笑い芸人

加賀 翔(かが屋)

『キングオブコント2021』ファイナリスト

お笑い芸人

林田洋平(ザ・マミィ)

2023年に解散予定

"楽器を持たないパンクバンド"

セントチヒロ・チッチ(BiSH)

ドラマやバラエティでも活躍する“げんじぶ”メンバー

ボーカルダンスグループ

長野凌大(原因は自分にある。)

「お笑いクイズランド」連載中

お笑い芸人

仲嶺 巧(三日月マンハッタン)

“永遠に中学生”エビ中メンバー

アイドル

中山莉子(私立恵比寿中学)
ふっとう茶☆そそぐ子ちゃん(ランジャタイ国崎和也)
竹中夏海
でか美ちゃん
藤津亮太