プロセスとディティールにこだわるのが基本
K 確かに、ストーリーを聞いてもよくわからないなぁ。要するに映画オタクが思い入れしてたスターに失望する話か。それにしちゃあ、デヴォン・サワは大スターのオーラはないんじゃない?
T そういうフツーの映画の見方じゃ、この作品はわからないよ。もっとマニアックなんだ。デヴォン・サワって、ハリウッド映画の俳優としては「大スター」じゃないとしても、エミネムの「スタン」のミュージックビデオのスタン役じゃあ「大スター」だった。ここが鍵です。
K へえー、そこまでいくか。たしかにエミネムとスタンをダブらして自己愛とスター願望とを破滅的にからめていてすごいけど、そういうところをマニアックに突っ込むならフツーの批評でもいいんじゃないの?
T いや、それもディティールのおもしろさでしょう。ポストコロナ映画批評はプロセスとディティールにこだわるのが基本です。まず、オープニングでロスの俯瞰が映り、女性のナレーションが被りながらハリウッド・ブルバードのほうにカメラが移動し、スクーターに乗ったジョン・トラボルタが映る。出演してるって知っているからすぐにわかったけど、いきなり見せられたらトラボルタだとはわからない雰囲気なんだ。頭はマレットヘアーだし、スクーターを運転しながら、まるで幼児が三輪車を運転して喜んでいるみたいなんだよ。
で、ポストコロナ映画批評だと、ここで、画面を観ながら「トラボルタ 幼児 スクーター」とかなんとか検索をかける。すると、「『ファナティック』 自閉症 ファンオブセッション」なんて出てくる。もちろん、まだそうはなってないけど、そういうAIがらみのリンケージ(連鎖)ができて、話がたとえば「自閉症」に入っていくとか……。

K 今、調べたら、この映画が「自閉症」のキャラクターを描いていることに関しては賛否両論らしいね。
T 両論なんてもんじゃない。この映画のアメリカでの反響はほとんど私怨と呪詛ですよ。『IMDb』では10点中4.2、『Rotten Tomatoes』に至っては、66人のレビュワーのうち17%しか支持していない。僕はその66本のレビューの全部を通読してみたけど、反対評のほとんどはとにかく「不愉快」だ、「エンタテインメントじゃない」という。いったいいつから映画は「不愉快」なことを描けなくなったのかね。低予算の作品にブロックバスターの娯楽を求めても無理でしょう。それに、この映画が「自閉症」の男を描いている面があるとしても、トランプが身障者の記者をからかったような悪辣なことはしていませんよ。
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