連載を引きのばしていたらコロナ禍に巻き込まれるところだった
インターネット上の議論では「持ち家のほうが得」という意見が多い。しかし持ち家は「隣人ガチャが怖い」という意見もよく見かける。
一軒家にせよ、集合住宅にせよ、快適な暮らしになるどうかは隣人にかかっている。そこでハズレを引けば、どんなに条件通りの物件だったとしてもつらい思いをする。
生活の利便性、季節の変化、朝と夜の違い、住民の雰囲気……。一度や二度の下見ではわからないことがたくさんある。
そんなこともあって、わたしは賃貸派だった。

『プリンセスメゾン』の第4話の「身の丈にあった物件」で沼ちゃんの居酒屋の同僚(若い男性)が「俺らみたいな収入でマンション買うとか無理っしょ」という場面がある。しかし沼ちゃんは「そんなことない」ときっぱり突っぱねる。
努力すればできるかもしれないこと、できないって想像だけで決めつけて、やってみもせずに勝手に卑屈になっちゃだめだよ
『プリンセスメゾン第1巻』池辺葵 著/小学館
本当にそうだなあ。努力もそうだけど、何かをしようと考えることによって、初めて道が見えてくる。それは家を買う買わないに限った話ではない。
26歳の沼ちゃんが家を買う話を読みながら、その倍近い年齢を生きているにもかかわらず、何かにつけ「無理っしょ」と考えがちな自分を反省する。沼ちゃん、名言が多いのだ。
この漫画は2019年1月に最終巻が出た。

2020年7月の今読むとちょっと印象が変わる。沼ちゃんの居酒屋の仕事は大丈夫なのだろうか。彼女の収入と希望の物件の価格のバランスも心配になる。
そういう意味でも『プリンセスメゾン』は連載の完結の時期も絶妙だった。ずるずると連載を引きのばしていたら、コロナ禍に巻き込まれるところだった。
名作にはそうした運もある。
先日、新型コロナの給付金が入った数日後、借りている部屋の更新の手続きがあった。あっという間に給付金が消えた。
言ってもしょうがないことだが、上京後に払ってきた家賃を足すと、今住んでいる町の2DKの中古マンションを買ってお釣りが出るくらいの金額になる。
30年前の自分は30年後の生活を想像できなかった。おそらくこの先のこともわからない。しかし「運命の物件」に出会えたら買うという選択肢もありか。
そう思えるようになったことは自分にとって大きな変化だ。
沼ちゃんのおかげである。
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