告白シーンは「男子校出身だからできた」

――告白のシチュエーションを作る上でおふたりの実体験は反映されていたりするんですか？

佐久間　僕の経験はまったく反映されてませんね！　実体験はゼロの、全力の妄想です。むしろ、実体験がないから、妄想力が醸成されていて書けたのかもしれません。

松本　佐久間さん男子校出身なんですか？

佐久間　そうですよ。福島で一番荒れてる男子校。入学して半年間でしゃべったのが母親と妹と購買のおばちゃんくらい。そのうえチャリ通で、このMVみたいに電車での出会いもなかったですし。最後の1年だけなぜかバス通学に切り替えたんですけど、駆け込みでそんなことしても急に青春が訪れるわけでもなく。まあ、共学でイケイケだった人に『キス我慢選手権』（※）は作れないでしょう。

※『キス我慢選手権』
テレビ東京『ゴッドタン』内の企画。あらゆる手段でキスを迫るセクシー女優たちのお色気攻撃を、挑戦者たちがひたすら耐えるという番組名物企画。

松本　僕も男子校出身で実体験はほぼないんですけど、高校のとき、毎朝同じ電車に乗る女の子を好きになったことがあったんです。ある日、その子に会える日に法則性があることに気づいて。僕が遅刻していつもの電車に乗れないと、次の日その子はいつもの定刻の電車にいないんです。で、2日遅れると、その後2日連続でいない。夢中になって毎日その法則を記録して友だちに報告しつづけているうちに、その子はどうやら先に卒業してしまったみたいで……告白できないまま終わりました。だから、『君のことをまだ何にも知らない』の歌詞には共感できて、撮っていて懐かしい気持ちになりました。

――では、おふたりとも青春時代に告白された経験はないと……。

佐久間　僕なんて、プロポーズすらしないまま結婚した男ですからね。

松本　え、そうなんですか？

佐久間　今の妻と付き合っているときに、「隣の部屋に空き巣が入ってひとりで暮らすのが怖い」って言われて、確かに危ないからってことで同棲を始めたんですよ。その報告をしに妻の実家へ行ったら、酔っ払ったお義父さんから「娘をよろしく頼む」って言われて。だから強いて言うなら、僕に告白してきたのは妻のお父さんですからね！　なんなら、おぎやはぎは「そもそも空き巣なんていまかったんじゃないか。一家で仕組まれた結婚だったんじゃないか」って言ってましたから。

――おふたりの、告白に縁遠い人生があったからこそのMVだったんですね。

松本　でも、佐久間さんが男子校出身だったと知って驚きましたよ。告白シチュエーション案の数が多かったので、共学で目撃したことや実体験があるのかと思ってましたから。

佐久間　バリバリの男子校ですね。高校2年の夏は、男友だちと一緒に、いわき市内飲食店の「まずい店マップ」作ってましたからね。いやあ、ほんとに意味のない夏だったな！

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佐久間宣行（さくま・のぶゆき）
1975年生まれ、福島県いわき市出身。テレビ東京プロデューサー。『ゴッドタン』『あちこちオードリー』『ソクラテスのため息～滝沢カレンのわかるまで教えてください～』『青春高校3年C組』などを手掛ける。

松本壮史（まつもと・そうし）
1988年生まれ、埼玉県出身。ドラマ、CM、MVなどの映像監督。THE DIRECTORS FARM所属。青春高校アイドル部 選抜『青春のスピード』や青春高校3年C組女子アイドル部『君のことをまだ何にも知らない』のMVを監督。
http://matsumotosoushi.com/