Aマッソ加納が掴みつつあるエンタメの“真髄”「この仕事の本当のゴールは誰かに喜んでもらうこと」

2022.12.27
Aマッソ加納「この仕事の本当のゴールは誰かに喜んでもらうこと」

文=西澤千央 撮影=村上


Aマッソに関するコンテンツは、すべて彼女の頭の中から生み出される。加納愛子。そして今、TVバラエティにも違和感なく溶け込み、小説家としての加納にも世間は熱い視線を向ける。だからこそ知りたい。

なんでもできることを証明しつつある彼女が、本当にやりたいことはなんなのか。ゼロからイチを生み出すことに取り憑かれた人間が、芸能界でもがきながら掴みつつあるエンタメの“真髄”。

Aマッソが表紙を飾る『クイック・ジャパン』vol.164(2022年12月27日から順次発売)より、Aマッソ加納のインタビューを特別に先行公開。


ゼロイチがなくなったら終わりかなと思ってる

Aマッソ加納「この仕事の本当のゴールは誰かに喜んでもらうこと」
Aマッソ加納/『クイック・ジャパン』vol.164より

──加納さんの目にはAマッソの「今」がどのように映っていますか?

加納 うーん……思い返せばいろいろやってるんですよね。3、4年目くらいから動画も作ったりしてるし、漫才もやってコントもやってて。それがようやく、やったらやっただけ観てもらえるようになったから、今はそのクオリティを全部上げようっていう時期。逆に言うともう失敗できないというか(笑)。今までは勝手にやって、全然違ったら「全然違いましたー」って人知れず下げるようなことが、できなくなってきたっていうのもあるし。ある意味いろんなことに責任感は出てきてます。漫才は今年ちょっと楽しくなってきたし、コントはもう一個打破しなきゃあかんなと思ってる。YouTubeはチームが新しくなってまたイチから構成しはじめてます。

──今年は漫才が楽しくなってきた年。

加納 去年、一昨年くらいは1本のネタをブラッシュアップするみたいなことができづらかったんですけど、初めて今年それがやれて「1本のネタがこんなに変わっていく面白さがあんねや」と思いました。ほんま吉本の人が4、5年目で感じる楽しさを(笑)、ウチら13年目にして感じてます。

──たくさんの仕事を同時に走らせている加納さんが最終的に目指している方向ってどこなのか、今日のインタビューで明らかにしたいです。

加納 私個人でいえば、なんか作れりゃいいっていう感じなので。ゼロイチがなくなったら終わりかなっていう感じですかね。本当に演者だけになってしまうと、たぶん止まってしまうので。

──ゼロから常に生み出していくのって、すごいエネルギーが必要になるじゃないですか。

加納 本当、運動部でよかったって感じですね。体力、気合いと根性論なんかもしれないですね、一個貫いてるのが(笑)。

全部やってるからケガもできる

──加納さんはどんなTV番組を観て育ちましたか?

加納 新喜劇とか、漫才のネタ番組とか。結局は劇場というか、お客さんがおる状態でネタをやってるっていうものを積極的に観てた気がする。やっぱライブ感なのかな、私が無意識に観てたのは。人がいて、生で笑かしてることに惹かれた。だからこう、いわゆる芸能界憧れみたいなのは本当にまったくなくて。

──芸能界に対する思い入れがない状態で芸人になり、だけど今はAマッソがTVにいるのが通常になっています。バラエティ番組に対する取り組み方も変わってきましたか?

加納 まだTVに出だして1、2年目なんで(笑)、変化もなにもないんですけど。劇場に一緒におった仲良いやつがTVにおるっていう状態になったので、のびのびやれるようにはなりましたけど、まだAマッソとしてやり方を見つけられてるわけじゃない。

──先ほど「演者だけになっちゃうと止まっちゃう」というお話がありましたが、TVだとどうしても「演者」にならざるを得ないですよね。

加納 「ボケどうしようかな」って考える余地があるほうがありがたいですよね。しんどいですけど。あとスタッフさんの熱量高い番組は一緒に頑張ろうと思いますけど、出てるほうも作ってるほうもなんのためにやってるのかわからんような番組は、なかなか気持ちを立ち上がらせるのが難しいというか。

──いわゆる芸能界にいるときのAマッソと、芸人の中でのAマッソは違うものっていう感覚ですか?

加納 まあ劇場ではネタをやってるんで。ネタってもうこっちが投げてマルかバツかやけど、TVは投げたらあかんときあるし(笑)。投げたらあかん球なんかないじゃないですか、劇場は。

──TVって「できないことを笑う」文化があるんじゃないかなって思うことがあって。ポンコツが愛される文化というか。できてしまうがゆえにそういうTV文化に苦しむことはないですか?

加納 うーん、そこはそんな欲張ってないかもしれないです。そっちにいけないのはいけないんで。別にここで泣かれへんからといって、オファーなくなっても、泣ける人を呼んでくださいっていう(笑)。得意なことを伸ばしてるぶんの時間しかない気がするんですよ。苦手なことやってる暇ないっていうか。

──だからこそ今はいろんなメディアがありますもんね。加納さんはTVも総取りしようとしてるんじゃないかと思ってました(笑)。

加納 ははは。やっぱ「やれる」と「やりたい」があるので。「やりたい」はできるだけケガせずにやりたい(笑)。

──ケガすることもありますか?

加納 めちゃめちゃあります。売れてる人が「5年ぶりに単独ライブやります」って言ったらめっちゃハードル上がっちゃうけど、でも年2回やってれば、しんどいけど「今回はそんなやったな」で大ケガせずに済む。うちらは全部やってるから、どれかケガしても「いや、こっちがありますねん」でいけるっていうメリットもあるんですよね。ある意味、ビビりというか。

──ケガできる余地もたくさんあるということでしょうか。

加納 できる余地っていうかもう……傷だらけ。生傷がすごい(笑)。

──生傷の対処法は?

加納 ほかのところで「この生傷、見てー」って言ってる気がするんですけどね(笑)。ほんま「こんな努力してんねん」とか言う以外は、ホルモンじゃないけど捨てるところないですよね。芸人って感情が商売になるから。ムカついたのも言ったらええし、しんどいのも言ったらええしね。美化したようなこと以外は言ったらええねんっていう感じにはできてきましたけどね。

Aマッソが誌面を飛び出す⁉『クイック・ジャパン』最新号、笑いの実験を繰り返すコンビの60ページ大特集!!!
Aマッソが表紙の『クイック・ジャパン』vol.164

Aマッソ特集の『クイック・ジャパン』vol.164(2022年12月27日から順次発売)表紙・巻頭写真は、3Dメガネを使用すれば立体に見える特別仕様。Aマッソの2人のソロロングインタビューはもちろんのこと、TV、ラジオ、YouTubeの現場取材、スタッフによるAマッソの分析など充実の誌面となった。

また、60ページ特集を記念したAマッソスペシャルトーク音声つき限定版の発売も決定! 小中学生時代の哀しいお笑い体験やルームシェア時代の衝撃エピソード、さらには今後のコンビを揺るがす大問題⁉についてまで、ここでしか聴けないトークが45分収録されている。


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西澤千央

(にしざわ・ちひろ)1976年生まれ。神奈川県出身。実家の飲み屋手伝い→ライター。『クイック・ジャパン』(太田出版)や『文春オンライン』、『GINZA』(マガジンハウス)などで執筆。ベイスターズとねこと酒が好き。

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