自分の容姿が嫌いな人、自信がない人へ。須田亜香里が「ブス」と言われて気づいたこと

取材・編集=森 ユースケ 文=むらたえりか 撮影=飯田エリカ 


2022年11月1日にSKE48を卒業する須田亜香里。バラエティ番組などで「ブス」と呼ばれることも多く、“容姿イジリ”と長年向き合ってきた彼女。

女性アイドルと容姿について、そして自分の居場所を作るための変遷を振り返ってもらうロングインタビューの後編。

連載「アイドルとシスターフッド」
見る人の数だけ存在する「アイドル」のイメージに翻弄され、時にエイジズム、ルッキズムの呪縛にかかりながらも、その言葉の枠に留まらない女性たちの心の内を聞く。

須田亜香里(すだ・あかり)
1991年生まれ、愛知県名古屋市出身。2009年、SKE48の3期生としてデビュー。現在、チームEメンバーでリーダーを務める。31歳の誕生日である2022年10月31日の翌日、11月1日にSKE48を卒業予定。同年9月24日に卒業コンサート『君だけが瞳の中のセンター』を開催した。連載コラムをまとめた最新書籍『てくてく歩いてく ─わたし流 幸せのみつけ方─』(中日新聞社)が発売中


前編はこちら

見た目もメンタルもコントロールできるようになった

須田亜香里「ブスといわれて」インタビュー後編
須田亜香里

──前編では、バラエティ番組で「ブス」と言われるようになった経緯などについて詳しく聞いていきました。「ブスキャラ」を受け入れつつあった須田さんですが、須田さんの著書『てくてく歩いてく』の中には「『かわいくなりたい』願望があった」(P78)という言葉がありますよね。

はい。でも現実では、松村(香織)や谷(真理佳)と一緒に「私たち、ブスだから」と、ブスポジションとして自虐していました。なんで私はかわいいポジションになれないんだって、心に闇はありました。

──「なんでなれないんだ」の答えはありましたか。

ないですね。昔はテレビに映るのが夢だったのに、歌番組の収録で自分の顔がアップになったのを見て「ブスだ!」と思って泣いちゃったりして。いざテレビに映してもらったら、こんなブスな顔しか映らない自分ってなんて無力なんだろう。なんで映りたいなんて思ったんだって、ネガティブになっていた時期がありました。

でも、あるときから、もし「ブスだ」と思ったとしてもこれが私の顔だし、そう思って落ち込むということは、自己イメージの中の私はもっとかわいいと思っているってことだ、と気づきました。そうしたら、自分をブスだと思って泣いていることが、急に恥ずかしくなったんです。

私は、自分を過大評価し過ぎていたんじゃないか?と、ハッとして。それをやめて、鏡を見ても「今日の自分の顔はこれなんだ」と受け止めようと思うようになりました。

──それは、自分を卑下するようになったというよりは、自分をフラットに見られるようになったということですか。

はい。自分が「悲劇のヒロイン」になっちゃってるな、って気づいて。それで恥ずかしくなって、泣くのはやめました。自分を否定しつづけると、何を考えるにも自分が主役になってしまうんです。

──自分が主役だと、「環境やまわりのみんなが悪い」という思考になってきてしまいますよね。

うんうん! 「みんな、なんでそんなにひどいこと言うの!」とか、自分以外の誰かのせいにしたり、環境のせいにしたり。自分が真ん中にいるとその思考の癖に気づけないけど、自分をかわいがり過ぎていたことを受け止めたら楽になりました。

──自分そのものを受け止めれば、たとえば状況や反響に合わせてメイクを変えるとか、工夫もしていけますもんね。

そうなんです。自分を客観視できるようになったら、物事を筋道立てて考えられるようになりました。たとえば、スタジオのライティングで肌荒れが映りやすいと気づいたら、いつものメイクではなくカバー力のあるメイクにしようとか、光が強くて目が小さく見える環境だったらアイラインを強めに引こうとか。その場に合わせた自分を作っていけるようになったと思います。見た目もメンタルも、臨機応変にコントロールできるようになっていきました。


狭い世界に捉われないことで可能性が見える

須田亜香里「ブスといわれて」インタビュー後編
須田亜香里

──自分の見た目やメンタルを、その場に合わせてコントロールできるようになっていった。すごくポジティブな変化ですよね。

自分で自分を否定しなくなったことで、私生活でのメンタルもそれまでより明るくなりました。一晩中泣くこともなくなったし。

基本的には「終わったことは終わったこと」。失敗しちゃったとか、あそこはもうちょっとうまくできただろうなということも、それはその日の自分のベストがそれだったと受け止めたほうがいいと、考え方が変わりました。そう思えるようになったのは、気持ちの余裕ができたことが大きいのかなと思います。

──気持ちは変えられても、外見はなかなか大きくは変えられないのが難しいところじゃないですか。

うーん、そうですね。容姿について受け入れられるようになったのは、バラエティ番組の影響もありますけど、2015年にAKB総選挙で18位になったことも大きかった。「自分が素直に発言したことであれば、ファンの方は受け止めてくれるんだ」と気づいたのがそのころでした。

「みんな、こういう須田亜香里が好きなんでしょ」という想像上の自分を、無理に演じなくてもいいのかもしれないと思えるようになって。それと、ちょうど今の事務所に入ったタイミングが合っていたので、遠回りはしながらも、いろんなことに気づけたいいタイミングだったと思います。

遠回りはしてきたけど、遠回りしなければ出会えなかったご縁ばかりなので、私ってすごくラッキーな人間だなと思って。私の人生、悪いこととか悲しいこととか、それこそ受け止め切れないほど「ブス」って言われたりとか、いっぱいあったけど、全部あってよかったなと思う。そういうことがあっての今だからこそ、「私に必要ないことは起きない」って。なんだか自信がついちゃって、それは今も変わらず思っていますね。

SKEの中で経験したことって、どれも私の世界が狭かったぶん、一つひとつが重かったから。そのときの重みを実感しても耐えられたというか、乗り越えられたってことが自信になっています。人って、自分の世界が狭ければ狭いほど悩んでしまうじゃないですか。

──自分の世界が狭いと、逃げ場がないですもんね。

そうそう。私は「アイドルの世界」しか自分の生きる道はないと思い込んでいたけど、その狭さと重さの中で生きてこられたんだから、世界が広ければ可能性や選択肢はもっとたくさんある。だから、これからも大丈夫な気がしました。

──たとえるなら、学校って狭い世界じゃないですか。そこに居場所がなかったり人間関係でつらい思いをしたりしても、学校の外に出たらもっと可能性や選択肢があるみたいな話ですよね。

そうですね。今いる世界に捉われているのって、実は自分だけだったりするから。「あ、捉われる必要ってないんだ」と思えるようになりました。

48グループだからこそ知れた「待ち時間」の楽しさ

須田亜香里「ブスといわれて」インタビュー後編
須田亜香里

──須田さんは、テレビ収録などでのテレビに映らない「待ち時間」も好きだと聞きました。

私はスタッフさんとの関わり合いが好きで、現場で元気が出る瞬間も、スタッフさんのがんばる姿を見たときなんです。それはバラエティ番組に限らず、アイドルとしてMVの撮影の仕事のときもそう。作り手がこんなにワクワクしていたり、汗を流したりしているんだから、私たち演者がやらないとダメじゃん!とパワーをもらえます。

──もともと待ち時間を楽しめるタイプだったんですか。

スタッフさんの働きに目を向けられるようになったのは、親友の木﨑ゆりあが私のダメな部分を気づかせてくれたから。ドラマ『豆腐プロレス』(2017年/テレビ朝日)の仕事をしていたころです。

私は「プロレス技ができる」というだけで呼ばれ、セリフもほぼなし。第1話の撮影では、ひとつだけあった私のセリフが、当日現場に入ったら別の子のセリフに変わっていたりして。SKEの劇場公演もすべてお休みして1日中撮影現場にいるのに、私は立っているだけ、出番を待っているだけという日が毎日つづいて、「私はなんでこの時間、ここにいるんだろう……」と、正直憂鬱でした。

それをゆりあに話したら「スタッフさんを見ているとすごくがんばれるから、そういうところに目を向けると考え方が変わるかもよ」と言ってくれて。それ以来、ドラマの撮影現場でカメラマンさんの名前を覚えたり、スタッフさんとの時間も楽しんだりするようになって、関係性を育てていけるようになりました。その場にいる自分と現場の「チーム感」や、自分の役目について考えるようになって、それは大きな気づきでした。

──スタッフも、意味なく待たせているわけじゃなく、準備をしているんですもんね。

そうそう。48グループは、やりたい仕事だけじゃなく、巡り合わせでいろんな仕事に挑戦できる組織。だからこそ、その現場ごとの自分の立ち位置を「正解に変える」努力の仕方が身についたなと思います。置かれた環境をポジティブに受け入れるというか。次の日に現場に行く自分を「嫌だな」と憂鬱にさせない力が身につきました。

自分に合う表現、合わない表現を見つける


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森 ユースケ

(もり・ゆーすけ)1987年生まれ。東京都出身。毎日ウルトラ怪獣のTシャツを着ているライター/編集。インドネシアの新聞社勤務、国会議員秘書、週刊誌記者を経て現職。近年は企業のオウンドメディア編集も担当。オリックス・バファローズファン。

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