なぜ「ルーズソックス」再ブーム?令和にギャルが再評価される理由
1990年代後半、全国の女子高生の間で一大ブームを巻き起こした「ルーズソックス」。当時の大人たちは「だらしがない」と眉をひそめていた、ある種の時代の徒花だったルーズソックスが、今再び注目を集めているのだ。
ネオンカラー、ラメも人気!?令和版ルーズソックス
ギャル系ファッション雑誌『Cawaii!』の編集長だった長谷川晶一氏の書籍『ギャルと「僕ら」の20年史』(亜紀書房)によると、90年代のルーズソックスブームは、青山学院の生徒たちがラルフローレンやチャンピオンなどの厚手のソックスを足元でクシュクシュとたるませたことから始まったとされている(※1)。このスタイルは、当時のギャル(コギャル)のアイコンになった。
※1:そのほか、ルーズソックスの発祥は仙台の女子高生、茨城の女子高生など、諸説ある
当初は「クシュクシュ」程度だったルーズソックスも、ブーム期にはゴムを抜いて「ダルダル」にするようになり、2mを超える「スーパールーズ」も登場するほどに。
「靴下屋」などで知られるTabioのプレス室によれば、90年代のブーム以降、定番商品ではあるものの大きな動きがなかったルーズソックスに変化が訪れたのは、昨年の秋ごろのこと。
「昨年の9月くらいからですね。そのころは文化祭や体育祭、ハロウィン、あるいは“制服ディズニー”のような特別なイベントでの需要が高まっていたと思います。今はそれが定着したのか、普段のファッションにも取り入れるお客様が増えた印象です」(Tabioプレス室)
『egg』元編集長、現在はエムアールエー代表取締役、渋谷女子インターナショナルスクール校長など多方面でギャルカルチャーを盛り上げている赤荻瞳氏も、やはり昨年の秋ごろがターニングポイントだったと語る。
「この1年で、ドンキやネット通販、靴下屋さんだとか、ルーズソックスを売ってる場所がめちゃめちゃ増えましたね。もともとJK(女子高校生)が、文化祭やテーマパークやイベントに行くときに履いてる感じだったんですけど、去年の半ばくらいから私服に取り入れる子が多くなった印象です。
『egg』のモデルだと、ヒップホップ系のギャルの子が私服に取り入れるのが早かったかも。3〜4年前は“イベントで目立ちたい”って子が多かったけど、今はオシャレとして取り入れてる子も多くて、イベント用と普段使いとで二分化していると思います」(赤荻氏)
もともとは、テーマパークやイベントなどでのコスプレ的な楽しみ方が多かったというルーズソックス。それがブームの広まりによって、日常的に取り入れられるようなったという経緯があるようだ。
90年代のルーズソックスのように、90cm以上のダボダボのものはイベントやコスプレ用で、37cm程度の短いものは普段着に合わせる……的な用途で、白だけでなくネオンカラーなどのバリエーションも増え、ラメの入っているルーズソックスも人気なのだそう。
「母親のファッションをまねする」現代のZ世代
一方でTikTokやインスタグラムでも、ハッシュタグを検索すると、さまざまなかたちでルーズソックスを楽しむ動画や写真がヒットする。
「有名TikTokerさんや、インフルエンサーさんの影響も大きいと感じています。ほかにも“ウチの親の今と現在”を比較する動画(※2)が流行りましたよね。そのときに親が若いころ履いていたルーズソックスの写真を見て興味を持ったという話や、ほかにも近年のY2Kブーム(※3)だったり、平成レトロ、平成ギャルリバイバルも影響が大きいと思います」(Tabioプレス室)
※2:Block Bの「NILLILI MAMBO」に合わせて、両親の卒業アルバム写真などの若いころと今を紹介する動画。「#昔の父がイケメンすぎる」「#昔の母が美人すぎる」のハッシュタグなどで確認できる
※3:Y2Kとは“Year 2000”の略で、2000年ごろに流行したファッションのこと。現在、世界的なブームになっている
筆者は81年生まれ。自分自身はギャルではなかったが、90年代のギャルブーム直撃世代である。当時は「親世代のファッションをまねする」という感覚は一般的ではなかったように記憶している。ところが、現在は当時のギャル世代の母親が子供と一緒にルーズソックスを買う光景も珍しくないのだとか。
「弊社が展開する『靴下屋』はショッピングモールにテナントが入っている店舗が多いこともあって、親子で来店して“懐かしい!”と娘さんに買ってあげるというお客様の話もよく聞きます。とはいえ、当時のままのルーズソックスというよりは、普段着に取り入れやすいカラーだったり、ボリュームの少ないアイテムを選んでいるようですね」(Tabioプレス室)
赤荻氏によると、1990〜2000年代のギャルブームの洗礼を受けた世代が親になり、「親子2世代でギャルマインドを持っている」のも、令和ギャルの特徴のひとつだといいます。
「今はJS(女子小学生)、JC(女子中学生)のギャルが増えていて、そのお母さんとお話しすると、“昔ギャルだったのかな”、“今でもギャルマインドを持っているんだな”と感じる方が多くて。自分はギャルファッションを卒業しても、子供にはいろいろなオシャレを楽しんでほしいと思っている“ギャルママ”がたくさんいるんだと思います」(赤荻氏)
渋谷から消えたギャルはどこへ行ったのか?
2018年に赤荻さんが『egg』を復刊させる以前、特に『egg』の休刊が発表された2010年代半ばごろは、街で派手なギャルを見かけることが少なくなり、世間では「ギャルが消えた」という風潮もあった。
その一方で、昔憧れたギャルになりたいというギャルマインドを持っている人、あるいは自分の好きなファッションを追求した結果ギャルに行き着いた人らが、SNS上で自分自身を発信するようになり、令和のギャルリバイバルにつながったのではないかと赤荻氏は分析する。
「私が高校生のころ、2014年に雑誌『egg』は休刊したんですけど、街からギャルが消えたといわれる一方で、SNS上で自分のファションを発信する人は水面下にずっと存在していて、ギャルは絶滅していなかったんです。ギャルにも“白ギャル”、“黒ギャル”、“LA系ギャル”、“韓国系ギャル”など、いろいろな種類があります。それぞれがSNSで“ギャル”というタグのもとに集まれたのが大きいと感じています」(赤荻氏)
そして近年、一見ギャルファッションではないけれど「ギャルマインド」を持っているインフルエンサー、あるいはマンガやアニメなどに出てくる「オタクに優しいギャル」のような存在もあってか、「ギャル」という概念そのものが、過去のギャルブームに比べてポジティブなイメージに変化しているようにも感じる。
「めちゃめちゃポジティブになったと思います。2018年に『egg』を復刊させたんですけど、当時は“もうギャルは古くない?”とか“ギャルは汚い”みたいなイメージもありましたね。
でも、今って小さなことで炎上したり批判されたりする世の中じゃないですか。そんな時代だからこそ、他人の目を気にせずに好きなファッションやメイクを楽しむギャルの子たちが憧れの存在になっているのかもしれません。
それに、最近のギャルの子たちは自己ブランディングに長けているというか、いい意味でまわりのことを考えて発言する子も多いので、今の若いギャル世代がギャルのイメージをいいものに変えてくれたんじゃないかなと思うんです」(赤荻氏)
都心から地方へ。ルーズソックスブームの今後
親子2世代、ギャルリバイバルなど、さまざまな背景がある令和のルーズソックスブーム。今後はどうなっていくのだろうか。
「まだ渋谷や原宿などの都心中心の人気なので、これから全国的に広がっていくと思います。以前のものと比べてカラーバリエーションも豊富ですし、私服にも合わせやすいこともあって、さまざまな楽しみ方をする人が増えると予想しています」(Tabioプレス室)
「もう少し広がっていくと思います。全国的にはイベント用のものが主流だと思うので、私服に取り入れる子がもっと増えていくんじゃないかな。冬になったら、もっとモコモコのものがまた流行るかもしれないし」(赤荻氏)
四半世紀の時を経て盛り上がる令和のルーズソックスブーム。今後、予想もしないスタイルが生まれてくるかもしれない。
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