周りを信じる力が身につき、踏ん張ることをやめたんです
──さきほど、今はたまたまボールが転がってきているにすぎないと言われていましたが、今のアルピーさんはどういう状態なんだと思いますか? なにかの道程の途中にいるのか、あるいはすでにひとつの完成形になっているのか。
平子 完成か……たぶん、もう完成してますね。自分たちが気づいてなくて「もっと完成させなきゃ」ってあがいてただけで、何年も前から実は完成はしてるんだと思う。下手したら12、13年前にしてたんじゃないですか。それをどの角度で見てもらうかって問題だったんだと思います。
僕らの場合、そこで周りの存在が大きいですね。周りが「この角度のほうが映えるよ」って勝手に動かして、いい角度を見せてくれてる。自分らではどの角度がいいかなんてまったくわかんないんですよ。酒井もたぶんわかってない。周りのスタッフさんや先輩、後輩、事務所の人、リスナーやファンの人たちが、俺らが訳わからず直立不動で立ってるところをステージごとぐるっと回してくれてる感じですね。
──そこで「違う、俺たちはこう見せたいんだ」って踏ん張ることが尖りなんですかね。
平子 そう、その救いの手は昔からあったのに、踏ん張っちゃってた。それをやめたんですよ。そこから少しずつ、ちゃんと光が当たる角度に回してもらえるようになった。本当に俺らはそれだけですね。
──なぜ踏ん張らなくなったんでしょう?
平子 なんでだろう。それこそ年齢なのかなぁ。でも、周りを信じる力が身についたんでしょうね。周りの人が言ってくれることを信じて委ねられるようになって、踏ん張らなくなった。それはそれで才能が必要だと思うんですよ。回してもらえる才能は僕らすごいあると思います。下手したらそれだけですね。
芸人って、ある程度の年齢がきたら感度や感覚は落ちていく一方で、そこからは面白くなっていくんじゃなくてごまかし方がうまくなっていくんだと思うんですよ。経験値がついて、その場をどうにか取り繕う力が身についていくだけで。だから僕らが年々面白くなってきたとかじゃない。ただ回してもらえる才能はあった、ってことなんでしょうね。
──そう考えると、歳を取るのもいいことだなって感じがします。
平子 そうでしょうね。というか、踏ん張れなくなるんですよ。「踏ん張らなくなった」って、いい感じで言いましたけど。
──踏ん張るのも体力いりますからね。
平子 そう。「よし、こいつら力衰えてきたな、今なら回せるぞ」って周りがなって、「あ! 光当たってる! もっと早く回してもらえばよかったんだな」って、老いた体で今思ってるだけかもしんないすね。
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