ジャルジャル流、お笑いの「練習」のかたち──『夢路空港』本番中に完成させる面白さ

2022.4.21

文=原 航平 撮影=向後真孝


『M-1グランプリ2018』決勝でジャルジャルが披露した『国名分けっこ』の漫才が、アドリブを含むものだと聞いたときには驚いた。凄まじい練習量のたまものかと思いきや、本番中の観客のウケ具合を見てなにを言うかを決めた、と福徳は語ったのだ。彼らは練習するのか?

『クイック・ジャパン』vol.160(4月26日発売の最新号)では、マンガ、小説、お笑いの世界における「練習」のかたちに注目。

石川県の小松空港を舞台にした生配信コメディ演劇『夢路空港』の稽古に励むジャルジャルを訪れ、彼らにとっての「練習」を聞く。

※この記事は2022年4月26日発売の『クイック・ジャパン』vol.160掲載のインタビューを転載したものです。


「これおもろい」と思ったときの気持ちを忘れんために

──ジャルジャルさんは練習よりもネタ作りに多くの時間を費やすと聞いたことがありますが、ネタ合わせはしますか?

福徳 無駄にはやらないですね。

後藤 ふたりっきりでなんぼやっても意味ない場合はやらないです。

福徳 漫才の場合はやって2、3回です。いわゆる壁に向かってネタ合わせするみたいなやつは。

『クイック・ジャパン』vol.160より

──『M-1』の決勝当日でもそのくらいでしたか?

福徳 ある程度やってますよ。ただ、密着カメラに撮られるのがめっちゃイヤなんで、それだけは避けながらやってました。

──なぜ撮られるのがイヤなんですか?

福徳 いや、なんちゅうか。僕ら2010年の『M-1』のときに、ネタ中に「台本がある」みたいなセリフを入れたんです。それがやっぱり人によってはイヤやったみたいで、でもそのくせカメラは稽古してる裏側とかを映すじゃないですか。その矛盾がすごくて、そこからは密着カメラにはネタ合わせしてるところは撮らせないというモットーでやってるんです。だからコソコソやってました。

後藤 走って隠れて、誰もけえへんように、ドアのノブ押さえて(笑)。

──コソ練ですね(笑)。練習してるところは意地でも見せたくないという思いが。

後藤 お客さん的にも見えへんほうが絶対ええのにって思います。

福徳 冷めるのに。それを事前VTRでバンバン見せるから、絶対そんなんしたらあかんやんって。

──たしかに、裏側を見たい気持ちもありつつ、ネタ中はそういうことを考えたくないかもしれないです。

福徳 笑い飯さんイズムかもしれないですね。見せへんほうがカッコいいみたいな。その劇場で育っちゃったんで。

──ふたりきりでやっても意味がない、というのはなぜでしょう。

後藤 基本はお客さんの反応を見てできあがっていくもんなんで。お客さんの前でやるとここは間延びしてるな、みたいなのが一発でわかるんですよ。

福徳 そういう意味ではやっぱり練習は少ないほうで、ふたりではほとんどしないです。

『クイック・ジャパン』vol.160 未公開カットより

──ネタの「鮮度」みたいなものも考えたりされますか。

福徳 それはあります。

後藤 感情が大事なネタとかって、練習しすぎると当時の感情を忘れちゃうことがあって。「これおもろい」と思ったときの気持ちを忘れんために、あんまやらへんこともあります。

──練習しすぎることで消えてしまう感情もある。

後藤 消えて、さらにその先にまた発酵して、違う旨味が出てきたりすることもあるんですけどね。ネタによってはそうです。

本番でやりながら完成させたい


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原 航平

(はら・こうへい)ライター/編集者。1995年生まれ、兵庫県出身。映画好き。『リアルサウンド』『クイック・ジャパン』『キネマ旬報』『芸人雑誌』『メンズノンノ』などで、映画やドラマ、お笑いの記事を執筆。 縞馬は青い