水溜りボンドの「負け顔」。トミーとカンタの「何者でもない」からこその使命感

2022.4.2


「水溜りボンドは何者でもない」からこそ、今までがんばってきた

コンビでこうやってお互いを認め合って褒め合えるって、いいですね。大人になったらほんとに誰にも褒めてもらえない……。

褒められるように努力するようにもなります。それはめっちゃいい関係なのかもしれないですね。いいとこがなければ褒めてはもらえないので。それは関係性をつづけるために必要な努力ではありますよね。

「何者でもない自分」という話がトミーさんの章に出てきて、すごくそこに共感して。でも「何者でもない自分」であることがわかる、それ自体がすごいんじゃないかなと。

行動を起こさなければ負けることもありませんが、「何者でもない」ことに苛まれるというのは、日々挑戦してるってことの証なんじゃないかって。

そうですね。「これ俺じゃなくてもできるな」とか「私じゃなくても大丈夫だし」みたいな感覚、みんなあると思うんです。何ができるわけでもないけど、なんかここにいるなっていう感覚。今もまわりのクリエイターを見ると、そりゃ売れるわなってやつばかりで。ここで僕が輝く何かがってあるかなって冷静になったときに、別にない。

ただ、個人でそうやって戦いつづけることは果たして人として幸せなのかとも思います。劣等感とかそういうものの中で生きていかなきゃいけないじゃないですか。だから僕は、コンビでやってるときが楽しいし絶対的な自信があるっていう状態で、コンビのときのトミーが「富永くん」を引っ張ってるって感覚に近いです。

いろんなスペックを持った人たちの中になぜか筋トレだけで食らいついてるやつがいるみたいな状態だと思って、がんばらなきゃなと思ってますね。

コンビの半分を形成してるのは間違いなく自分だけど、「個人」として考えるとそう感じてしまう……。

コンビがすご過ぎるから(自分が小さく見える)というのもあると思います。だけど相方も含めYouTubeの仲間も含め、道ですれ違う見知らぬ人にも僕は思いますけどね。

たぶんその人に話聞いたら「めっちゃすごいですね」って思うと思う。みんな僕の知らないことを知っていて、できないことをやってる。みんながんばってる。

何者でもないからこそ、今までがんばってきたと思います。僕も自信はないけど「水溜りボンドを何者かにする」という使命感はやっぱ強いのかなと。いろんなYouTuberに会ってきましたけど、みんなそういう人たちなんですよ。もともとは大学生で、フォロワーも100人とかだったけど、2年後に100万人超えてたりする。

その人がもともとすごい才能があったかって言ったら、才能あっても売れない人も当然いるし、逆に才能ほとんどなくても売れる人はやっぱりいるんで。そこはそんなに気にはしてないですね。何かの芸にめっちゃ秀でてるというよりは、隣の家のお兄ちゃんがこういう人だったらうれしいなとか、クラスにこいついたらいいなとか、そういう人がYouTubeには集まってると思うんです。

なんか楽しいから、そこにはいたいなと思います。

たい焼きを喜んでくれたふたりを見て、私もそんな気持ちでした。

よかったー。危なかった。あの日昼飯にたい焼き食ってなくてよかった……。

日によっては「ああ、大丈夫です」って言ってたかもしれないです(笑)。


『水溜りボンドのANN0』が残したもの。完璧主義なふたりの美しい“負け様”

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西澤千央

(にしざわ・ちひろ)1976年生まれ。神奈川県出身。実家の飲み屋手伝い→ライター。『クイック・ジャパン』(太田出版)や『文春オンライン』、『GINZA』(マガジンハウス)などで執筆。ベイスターズとねこと酒が好き。

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