AR三兄弟と男性ブランコによる『バーチャル身体の祭典』 浦井が落語家を演じ、平井が舞い踊る

2022.3.22

スッと出てきた立川談志の着物

川田 それと、作品の中で浦井くんが着ている着物ね。ワクサカくん、ちょっと解説してもらえますか。

ワクサカ 今回、浦井さんが落語家を演じるということで、落語家の立川談吉さんに現場に来ていただいて、落語の技術監修もしてもらいつつ、衣装の着物もお借りしたんです。で、その談吉さんっていうのは、立川談志師匠の最後のお弟子さんなんですよ。

川田 うんうん。

ワクサカ 最後の弟子として、談志師匠を看取っている方でもあって。その方がスッと着物を出してくれて、「これ談志の形見です」と。つまり、作品の中で浦井さんが着ている着物は、立川談志師匠の着物なんです。

浦井 もう本当に光栄過ぎますというか、信じられないことです。

ワクサカ 談吉さんに声をかけたのは自分なのに、あれはさすがにびっくりしました。

浦井 本当にスッと出してくれたんですよね。

ワクサカ 僕ら最初なかなか触れなかったですから、その事実を聞いてしまったあとは。

浦井 そんなスッと出されても、簡単に着ていいわけないだろうと思いましたよ。

ワクサカ でも談吉さんは「どうぞ着てください」って。

川田 しかも、この話には前段があって、もともとワクサカくんと一緒に台本を作り始めたときに、参考にしたのが立川談志の『鮫講釈』という落語の演目なんですよね。

ワクサカ そう、そうなんですよ。だからこそ、恐れ多さも倍増して。たまたま僕は談吉さんと交流があって、声をかけやすかったので来ていただいたんですけど、何か符合するものがあって、つながってしまったんですね。偶然だとしても、あれはうれしかった。

川田 符合するもの、確かにあったね。

世界に向けた平井の自由演技ダンス

ワクサカ AR三兄弟と浦井さんの落語といえば、以前に『テクノコント』というプロジェクトで、『テクノ落語』というのをやりましたよね。

浦井 はい。『死神』というネタをやらせていただきました。

川田 2018年の『テクノコントvol.1 メロー・イエロー・マジック・オーケストラ mellow Yellow Magic Orchestra』という公演でね。

浦井のりひろ
2018年の公演『テクノコントvol.1 mellow Yellow Magic Orchestra』で披露された『テクノ落語』の実演風景
浦井のりひろ
浦井の演じる落語家が蕎麦をすすると、その様子がARアプリで可視化され、スクリーンに映し出される
浦井のりひろ
古典落語の名作『死神』を拡張した『テクノ落語』

ワクサカ 浦井さん演じる落語家が蕎麦をすすると、それが可視化されるという。

川田 死神も出てくるし。落語の拡張です。

ワクサカ そのときは浦井さんだけでしたが、今回は平井さんも拡張してもらって。

川田 そう、平井くんが踊りをね。踊っている動作を3Dキャプチャーして、それを作品にも反映しました。

平井 いきなり「3分間のフリー演技をしてくれ」と言われました。

平井まさあき
『バーチャル身体の祭典 VIRTUAL NIPPON COLOSSEUM』

川田 まさか自由演技で、この動きになるとはね。

浦井 これはやばい。

ワクサカ 見事でした。

平井 何を言ってるんですか。見事じゃないでしょう。

ワクサカ これはあれですか、イソギンチャク的な原生生物が、やがて陸へ上がる、みたいな。

平井 別に生物の進化の過程を表現してないですよ。何も考えてないです。

ワクサカ 浦井さんの落語のときも、現場のスタッフみんなで盛り上がりましたけど、平井さんの踊りは、スタッフみんな泣いてましたもんね。

平井 どこがやねん。泣いてるか。

浦井 これよく観ると、平井のうしろで見守っているAR三兄弟の次男・高木(伸二)さんも、感涙にむせいでますね。

平井 ボーっとしてるやん。次男さん、観てないやろ、俺のこと。

川田 ともかく、平井くんの踊りは、作品の中でしっかり観られますので、気になる方はぜひ観てください。

平井 僕の踊りよりも、アオイヤマダさんの素晴らしいダンスを観てください。世界に向けて発信しようって言っているのに、僕のフリー演技のダンス観せてどうするんですか。

浦井 ちゃんと世界にも伝わるから大丈夫よ。

平井 伝わるか!

平井まさあき

無意味を浮かせて、世界をひっくり返す

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