麒麟・川島&かまいたちの躍進、「バラバラ大作戦」&TVerがもたらしたもの、“トーク”の変化【2021年バラエティ番組振り返り(1)】

2021.12.30

女性芸人たちの台頭

ヒラギノ 今こうして観たい関西の番組のほとんどを観られているのは、ひとえにTVer様様ですね。関西以外に在住のバラエティフリークには、かねて在阪局のバラエティを観たくてしょうがない人がたくさんいたと思いますが、TVerの登場によって夢が実現となった。楽しくてしょうがないです。

特に好きなのが『千原ジュニアの座王』『やすとものいたって真剣です』の2本。『座王』では常連勢のさすがの大喜利力に感服すると共に、たまに訪れるぼる塾きりやはるか、エルフ荒川などのダークホースがおもしろい。

テレビバラエティやお笑い業界における「おもしろい」って脈々と男性芸人たちが構築してきたものであるわけですが、市井の「おもしろい」って実はもっと多様だ、というのは長年思ってきたことです。クラスのひょうきん者の女子、頭の切れる女子のユーモアは、バラエティやお笑いの世界ではこう……死ぬというか、受け入れ体制がなさ過ぎて機能しない、という思いが個人的にずっとあって、お笑い・バラエティ好きとしてはジレンマだったんですが、きりやはるかさんや荒川さんはそのへんを打破してくれる存在として注目しています。男性芸人が作った「おもしろい」の尺度でいえば「スベってる」んだけど、その尺度を意にも介していないから「どうやらこれはただ単にスベっているわけではなさそうだ」と思わせる力がある。

『いたって真剣です』に関していえば、今年はまじめに語るタイプの番組が目立ったと思っていて、その中でもやすとも(海原やすよ ともこ)さんだからこそ踏み込める大阪よしもとの込み入った話が聞ける番組でした。

スキマ 『座王』や『いたって真剣です』は僕も大好きです。関西に限らず『ジンギス談!』や『サクマ&ピース』なども含めてローカル番組がほとんどタイムラグなく観られるようになったのはホントいい時代になったなと思います。『ジンギス談!』も回によっては「まじめにしゃべるトーク番組」の中に入る番組だとは思いますが。

あと今年のトピックスとしてあるのが、やはり女性芸人たちの台頭。阿佐ヶ谷姉妹やぼる塾はヒラギノさんのおっしゃる“男性芸人が作った「おもしろい」の尺度”から逸脱した存在だと思います。

西森 気になるテーマ出しをするときに「まじめにしゃべるトーク番組とその模倣」と書いたんですけど、こうやってしゃべってると、模倣かどうかは難しいなと思いました。たぶん『いたって真剣です』は、やすよともこのふたりが、人の話を聞くっていうスタイルが、そういうかたちであったということだと思うので、模倣じゃないのかなと。

もちろん、数年前に比べて、アンケートで書いてもらったエピソードトークを順番にテンポよく引っ張り出していくと見えるものは減って、じっくり聞くってものは増えましたね。『日曜日の初耳学』の「インタビュアー林修」とかもそうですし。

それでいうと『ぼる塾のいいじゃないキッチン』の「田辺の熱血ポテトプレゼン×オズワルド伊藤」の回なんて、田辺さんのポテトの話だけで、ぶち抜きでやるとか最高で、しかもおもしろい。ヒラギノさんの言ってたのとは同じようでまた違うかもしれないけれど、田辺さんとポテトのおもしろさって、企画書では伝わらないかもしれないし、分析できないものかもしれない。でも、本当にゲラゲラ笑って観れたし、ずーっと観ていたいって感じでしたね。

こういう「ずーっと観ていたい」というものって、ドラマに多かったんですけど、『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』も、「ずーっと観ていたい」系のものでした。ふたりの平場の雰囲気のおもしろさやよさも、企画書では伝わりにくいし、分析もしにくいかもしれない。でもやっぱりおもしろくて、今ってそういう存在が、少しずつテレビでもうまいかたちでフィーチャーされるようになったのでよかったなと。

この間、佐久間宣行さんのYouTubeの『NOBROCK TV』に森三中の黒沢かずこさんが出ていて、そこで架空の「ラジオテーブル」を発表してたんですが、黒沢さんが考えるお昼の帯が、清水ミチコさん、大久保佳代子さん、やすよともこさん、光浦靖子さん、白鳥久美子さんってメンバーになっていて、そういう何気ないおしゃべりをずーっと聞いていたいという気持ちはあるなって思いました。

ラジオ愛が大爆発! 森三中黒沢 最強ラジオテーブル発表!

だから、「まじめにしゃべる」と「何気なくしゃべる」の両方のトークが今注目されていて、どっちにしても、テンポよく短く準備してきたエピソードトークをしゃべるというものから、長くじっくりしゃべるにいってる気はしますね。

変わりつつあるバラエティ番組の“トーク”

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