大宮セブンでバランスを崩し、大宮セブンに救われた
───初期から大宮を見ていて、大宮の変化はどう捉えていますか?
安部 最初のころのお客さんの層と、今のお客さんの層が全然違いますね。発足した当初はいわゆるファミリー層がほとんど。今は大宮セブンを観にお笑いのお客さんが来ている。
───おふたりは2019年4月からの8カ月間だけ、コンビ名を「つき」と改名されましたよね。その後またタモンズに戻されましたが、そのあたりの迷走の原因のひとつには、ファミリー層主体の寄席に出つづけていたこともあったのでしょうか?
安部 まあ、ちょっとフォームは崩しましたね。
大波 でも、今思ったら当時は実力がなかったんやと思います。無限大ホールでやっていたネタが一切通用しなかったのは、単純に力不足やった。
───「福井トーク企画『つき改名騒動』」で語られていますが、2018年の『M-1』でうまくいかず、解散の話も出るほど、2019年ころのおふたりは行き詰まっていたと。
大波 はい。投げやりに改名したものの当然うまくいかず、2019年末、もうひとり入れてトリオになってやり直そうということになって。トリオで一番尊敬しているのがGAGさんなので、大宮の楽屋で福井さんに相談したんです。そのまま、福井さんに加えて海野(裕二、ジェラードン)、村氏が大宮からの帰り道で相談に乗ってくれて。電車が新宿に着いても話が終わらず、新宿の片隅のアスファルトの上で飲みながら、ずっと僕の話を聞いてくれたんですよね。
───トリオになることも、入れるメンバーも決まっていたけれど、大波さんは迷っていた?
大波 まあ、そうですね。で、3人からいろんな意見をもらって。その直後、僕の知らないところで福井さんが根建(太一、囲碁将棋)さんに連絡してくれたんです。「トリオに入れる予定の芸人のことを詳しく知らない自分では、ふたりにちゃんとアドバイスができない。根建さん、タモンズの話を聞いてやってくれませんか」と。その次の日に、安部が根建さんと話すんですよ。
安部 まさに今しゃべってるこの楽屋です。その日僕が早めに楽屋に入ったら、根建さんがひとりでここに座ってたんですよ。いつも通りたわいもない話の中で、根建さんがふと「トリオ名もう決まった?」と聞いてきて。僕が「いやー、まだ決まってないです」と答えたあと、本当になんとなく、ぽろっと「ほんまはふたりで売れたかったんですけどね」とこぼしちゃったんです。そしたら根建さんが急に目の色変えて「今からでも遅くねえって!」と言い出して。
───その会話がなかったら、この2年間は全く違った形になっていた。
大波 本当に全く違ったでしょうね。福井さんが根建さんに連絡をしてくれてなかったら、根建さんもその話を持ち出さなかったでしょうし。
安部 そこからタモンズというコンビを見つめ直す青春ドラマのようなやりとりがあって、今があるので。
───すゑひろがりずのブレイク、マヂカルラブリーの『M-1』優勝など、人生が激変した大宮セブンメンバーがいるなかで、タモンズは確実に大宮セブンにいたから人生が変わったコンビですね。
安部 そうですね。大宮セブンでバランスを崩して、大宮セブンに救ってもらった。
大波 大宮セブンじゃなかったらもう芸人を辞めていたかもしれないです。福井さんや根建さんはもちろん、他のみんなも声をかけてくれたりしたので。それがなかったら……ね?
安部 タモンズもなかったでしょうし、僕らみたいなもんがバイトしてないでやっていけてるいまの状況にもなっていなかったでしょうし。
大波 全部、大宮セブンのみんなのおかげなんですよ。
『M-1』ラストイヤーを終えて
───紆余曲折の末、やはりタモンズとしてふたりでやっていこうと決めてからは『M-1』に向けて全力で漫才を磨き、安部さんは大ファンであるオリックス・バファローズについて語るYouTubeチャンネル『オリの晩酌』を始めて。気持ちや姿勢も大きく変わった感じがしますね。
安部 元々僕らは、大波が引っ張って僕がついていく関係性でずっとやってきてたんですよ。でも2018年の『M-1』後、解散の話が出たときに「嫌や、解散したくない」と止めたのが僕やったもんで、そこから自分にも責任が生まれたというか。だから姿勢は変わった気がします。
大波 ……こんなに僕らの話して大丈夫ですか? 大宮セブンの取材ですよね?
───大丈夫です。大宮セブンを象徴するコンビとして、おふたりにお話を聞いているので。
大波 全然、象徴とかじゃないです、ほんまに脇役なんで。タモンズがなくなるのを止めてもらった恩を返そうと『M-1』を頑張ってきましたけど結局ダメで、ラストイヤーが終わってしまったんですから。「優勝するつもりで取り組んでこんなとこで終わるのか、才能ないやん」と単純に思います。
安部 そんな暗い話してどうするんよ、このインタビュー。
大波 僕らのこと、載せないほうがいいと思います。
安部 暗いってー!
大波 じゃあ安部が明るく言えよ、タモンズのおもろいとこを。
安部 我々タモンズのおもろいとこですか? えーっと……。
大波 ないんか(笑)!
安部 ……まあ相方は落ち込んでますけど、僕は楽観主義者なので。寄席の漫才と賞レースの漫才って、やっぱりちょっと違うと思うんです。いわゆる競技漫才というものが僕らは苦手なんじゃないかとうっすら思っていて。その中で2年間頑張ったのは確実に財産なので、これからも前向きにやろうと思っています。
(囲碁将棋・根建、楽屋に入ってくる)
根建 おはようございます! お、タモンズ、とりあえず『M-1』おつかれ! おつかれさまの意味込めて飯行こうぜ。
大波 いま取材受けてるんですよ。
根建 予約したから後で行こう。15年分のおつかれさまを込めて俺おごるからさ、家系。
大波 15年分がなんでラーメンやねん(笑)!
(根建、去る)
───根建さん、今日も早く入られたんですね(笑)。おふたりは『オリの晩酌』を通じて、オリックスファンにもかなり認知されているとか。
安部 コロナで席の間隔が空いていた時期にやった単独ライブで、空いている席にオリックスの横断幕が広げられてたことがあって。お客さんもオリックスのユニフォーム着て。これなんのライブやったっけ? という光景もありましたね。
大波 球場に行けば、安部の周りにワーッとオリックスファンのおじさんたちが集まってきてくれますし。
安部 ただ、お笑いのお客さんとそこまで交わらないですね。オリックスファンで僕らのことを知ってくれて、そこからさっき言ったように単独ライブにも来てくれるような人が何人かはいるんですが、思ってたよりは少なくて。
大波 さすがに『M-1』予選までは来てくれませんでしたね。朝10時に起きて、チケット争奪戦を勝ち抜いてまでは……。
安部 そらそうやろ、みんなCS(クライマックスシリーズ)のチケットとらなあかんのやから。
大波 3回戦のよしもと有楽町シアターを僕らのファンで埋め尽くせてたら、『M-1』の結果も違ったかもしれない。
安部 「どうもー」と出ていったらお客さんが全員オリックスのユニフォーム着てるくらいがよかったんですけど。
大波 理想はね。
安部 いや、そんなんなるかあ(笑)! 残念ながら、3回戦の会場を「(トロイ・)ニール、D・J」とか言ったら大ウケするような環境にはできなかったですね。
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