笑い飯のふたりが目指すのは「中御所」。『座王』チャンピオン西田は「もうだいぶしんどい」

2021.11.21
笑い飯

文=釣木文恵 撮影=いわなびとん 編集=鈴木 梢


結成20周年の2020年に回るはずだった全国ツアーがコロナ禍で延期。21周年となる2021年に改めて「20+1周年」として4年ぶりに各地で単独ライブを開催している。21年目の彼らは今、何を考え、どのように漫才に取り組んでいるのか。笑い飯の西田幸治と哲夫のふたりに、広がりつつある各々の活動、そしてコンビでの今後の展望を聞いた。

【インタビュー前編】笑い飯、最近の『M-1』に感じる傾向は「波が増えてきた」

ネタは逸脱を期待して作る

——おふたりのネタ作りについて、改めて教えていただきたいです。ほかのインタビューでも「ネタ作りは大変」と話されていましたが、4年ぶりの全国ツアーに向けたネタ作りはいかがでしたか?

笑い飯
(左)西田幸治(にしだ・こうじ)1974年5月28日生まれ、奈良県出身。A型、(右)哲夫(てつお)1974年12月25日生まれ、奈良県出身。A型

哲夫 やっぱりずっと大変ですね。だいたい毎年10、11月ごろ単独ライブをやるんで、年イチのしんどい周期がそのあたりやったんですよ。でも今年は7月からツアーがスタートして、昨年の単独から一年待たずにまた新しいネタを作らんとあかん状況になったんで。

——毎年のリズムを崩して、ネタ作りを前倒ししなければならなかったわけですね。

哲夫 やっぱり題材を集める期間が必要なんで。わっと考えを巡らして、「これ行ける」と判断するような。

——ネタは哲夫さんが題材を提案して、西田さんが判断する?

笑い飯

西田 そうですね。やってみて判断することが多いですけど。これちょっとやったことある感じするなとか、伝わるかどうか、おもしろそうかどうか。

——「やってみて」というのは、哲夫さんの持ってきた題材をもとに、おふたりでやりとりをしてみるということですよね。

西田 一回交互にボケてみる。

——そこで「ちょっとネタにはならないな」というものがある?

笑い飯

哲夫 はい。それはなんかね、「どうもおもしろうならへんな」というものですね。

西田 ネタを試すときには逸脱するのを期待してやるんですよ。でも、どこまでいっても逸脱し切れないものはボツになる、みたいな感じですかね。

——漫才の題材は、芸歴を重ねての変化はありますか?

哲夫 基本何も変わってないですね。でも結局ちょっと斬新やなという題材はだいぶ潰してきてるんで。「これは誰もやってない題材かつ誰もがわかるテーマやな」というのと「ちょっと斬新系やな」というのとふたつあって、その両方共もうかなりやってきていて。なんとかまだ残ってるところを探る作業がなかなか、年々大変にはなっていきますね。

——これまでたくさんのネタを生み出してきたからこその悩みですね。

笑い飯

哲夫 そうですね。まあもちろん過去の形を踏襲するというか、『鳥人』があって、まだこの形でできるんちゃうかと『サンタウロス』を作ったりとか、『宇宙戦争』みたいなんがあって『ロボット』作ったりとか、そういうこともありますけど。でも意欲としては、常になるべく何か新しいのを、というのはあるんですよね。

「恥ずい」からできないこと

——笑い飯の漫才はずっと唯一無二のものだと思うのですが、題材を探るときに「自分たちらしさ」はどの程度意識するものですか?

笑い飯

哲夫 まあそのへんは特に意識することなく自由ですけど、ふたり共が苦手としているからということで外すテーマは多々ありますね。たとえばコンパを題材にして、若い女の子役をせなあかんとかね。

——若い女の子はできない。

哲夫 演じられない。なんなんでしょう、おばあちゃんとかおばちゃんはできてもキャーキャー的なのは難しい。要は恥ずいんでしょうね。

西田 恥ずいなあ。

哲夫 自分でもわかるんですよ。恥ずいと思ってもタガを外したら慣れてできるんやろうなと。でもねえ……。

——それは昔からですか。

笑い飯

哲夫 そうですね。シラフで上手に歌うの、めっちゃ恥ずいんですよ。テレビでいっぺん「歌うま」みたいのんやらされて、それもめっちゃ恥ずかった。チャゲアス(CHAGE and ASKA)歌わされて。

——(笑)。

哲夫 あれも何回か番組出たら慣れてくるんやろうな、とわかるんですけど、でも恥ずいんですよ。ネタでもそんな部分がまだあるんですよねえ。

『座王』チャンピオンの苦悩

この記事の画像(全13枚)


関連記事

この記事が掲載されているカテゴリ

関連記事

コロコロチキチキペッパーズ

「ナダルの認知度は武器にもなるけど邪魔でもある」コロコロチキチキペッパーズが『M-1グランプリ』王者になるための課題

「俺たちが一番おもしろい」M-1グランプリ煽りVTRの歴史

ミルクボーイインタビュー

M-1王者ミルクボーイ独占インタビュー【前編】M-1がなくなり道を失った

ツートライブ×アイロンヘッド

ツートライブ×アイロンヘッド「全力でぶつかりたいと思われる先輩に」変わらないファイトスタイルと先輩としての覚悟【よしもと漫才劇場10周年企画】

例えば炎×金魚番長

なにかとオーバーしがちな例えば炎×金魚番長が語る、尊敬とナメてる部分【よしもと漫才劇場10周年企画】

ミキ

ミキが見つけた一生かけて挑める芸「漫才だったら千鳥やかまいたちにも勝てる」【よしもと漫才劇場10周年企画】

よしもと芸人総勢50組が万博記念公園に集結!4時間半の『マンゲキ夏祭り2025』をレポート【よしもと漫才劇場10周年企画】

九条ジョー舞台『SIZUKO!QUEEN OF BOOGIE』稽古場日記

九条ジョー舞台『SIZUKO!QUEEN OF BOOGIE』稽古場日記「猛暑日のウルトラライトダウン」【前編】

九条ジョー舞台『SIZUKO!QUEEN OF BOOGIE』稽古場日記

九条ジョー舞台『SIZUKO! QUEEN OF BOOGIE』稽古場日記「小さい傘の喩えがなくなるまで」【後編】

「“瞳の中のセンター”でありたい」SKE48西井美桜が明かす“私の切り札”【『SKE48の大富豪はおわらない!』特別企画】

「悔しい気持ちはガソリン」「特徴的すぎるからこそ、個性」SKE48熊崎晴香&坂本真凛が語る“私の切り札”【『SKE48の大富豪はおわらない!』特別企画】

「優しい姫」と「童顔だけど中身は大人」のふたり。SKE48野村実代&原 優寧の“私の切り札”【『SKE48の大富豪はおわらない!』特別企画】

話題沸騰のにじさんじ発バーチャル・バンド「2時だとか」表紙解禁!『Quick Japan』60ページ徹底特集

TBSアナウンサー・田村真子の1stフォトエッセイ発売決定!「20代までの私の人生の記録」